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最新「毎月勤労統計調査」結果を解説!賃金は上昇、労働時間は減少傾向

最新「毎月勤労統計調査」結果を解説!賃金は上昇、労働時間は減少傾向

監修者:労務SEARCH 編集部
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2024年11月22日、厚生労働省が2024年9月分の「毎月勤労統計調査」の結果を公表しました。この記事では、調査結果のポイントと結果をもとに企業の人事・労務担当者がやるべきことをわかりやすく解説します。

2024年9月分の「毎月勤労統計調査」結果

2024年9月分の「毎月勤労統計調査」の結果は、以下のとおりです。

そもそも「毎月勤労統計調査」って?

毎月勤労統計調査とは、厚生労働省が毎月実施している統計調査です。日本の労働市場の実態を把握するために、全国の事業所における賃金、労働時間、雇用状況の変動などを調査しています。調査対象となるのは、常用労働者5人以上の事業所で、全国・地方・特別の3種類の調査方法で実施されます。調査結果は、経済の動向、社会保障制度の設計、企業の人事戦略など多岐にわたる分野で活用されています。

給与額は全体的に増加

現金給与総額は291,712円(前年同月と比較して2.5%増)となり、一般労働者とパートタイム労働者のどちらにおいても、着実に増加傾向が続いています。なお、パートタイム労働者比率は30.72%で、前年比は+0.23ポイントです。

現金給与総額 前年比(差)
就業形態計 291,712円 +2.5%
一般労働者 373,250円 +2.6%
パートタイム労働者 107,607円 +2.5%

パートタイム労働者の時給が大幅に増加

所定内給与においても、一般労働者およびパートタイム労働者のいずれも前年同月と比較して増加していますが、特に、パートタイム労働者の時間当たり給与は1,350円(前年比+4.7%)と大幅な伸びを見せています。これは人手不足の影響が考えられ、パートタイム労働者に対しても賃上げの動きが広がっていると言えるでしょう。

所定内給与
(時間当たり給与)
前年比(差)
就業形態計 263,729円 +2.5%
一般労働者 334,495円 +2.7%
パートタイム労働者 103,945円
(1,350円)
+2.3%
(+4.7%)

労働時間数は全体的に減少

実労働時間数については、全体的に前年同月と比較して減少しており、就業形態計の所定外労働時間は3.0%も減りました。働き方改革の推進や、生産性向上への意識の高まりが影響していると考えられます。

総実労働時間 前年比(差)
就業形態計 134.7 -2.7%
一般労働者 159.2 -2.7%
パートタイム労働者 79.3 -2.1%

なぜ賃金引き上げが起こっている?考えられる3つの要因

2024年9月分の毎月勤労統計調査によると、すべての就業形態において、前年同月と比較して現金給与総額はプラスとなっていました。この近年の賃金上昇傾向は、さまざまな要因が複雑に絡み合って起こっていると言われています。ここからは、その主な要因について解説します。

要因① 物価上昇への対応

近年、エネルギー価格や食料品価格の上昇などにより、消費者物価指数は上昇傾向にあります。そのため企業は、従業員の生活を守るために、物価上昇分を賃金に反映させる必要に迫られています。

要因② 人手不足の深刻化

少子高齢化による労働力人口の減少や、景気回復に伴う求人の増加により、多くの業界で人手不足が深刻化しています。そこで優秀な人材を確保するため、賃金の引き上げをおこなった企業も少なくないでしょう。

要因③ 政府の賃上げ要請

政府は「新しい資本主義」の実現に向け、企業に対して積極的な賃上げを要請しています。特に、継続的な賃上げを実現するため、労働生産性の向上と賃金上昇の好循環を重視しています。

賃金引き上げに対応すべき?人事・労務担当者がやるべきこと

賃金引き上げは従業員だけでなく、企業にとっても人材確保の促進、従業員満足度や企業イメージの向上などのメリットがあります。人事・労務担当者は、賃金引き上げのメリット・デメリットを理解したうえで、自社の賃金や採用戦略の見直しを検討しましょう。具体的には、以下の流れで見直しをおこないます。

1. 現状分析と課題の明確化

まず、業界の賃金水準と比較してみましょう。同業他社や、類似職種の賃金水準を調査し、自社の位置付けを把握します。次に、自社の賃金制度の現状を離職率や採用状況などをもとに分析し、人材の流動性に関する課題を明確化します。

2. 賃金制度の見直し

現状分析がおこなえたら、その結果を踏まえて賃金調整の有無を決定します。もし調整をおこなう場合は、賃金引き上げのデメリットのひとつである「賃金格差の拡大」に注意しましょう。

評価制度との連動がおすすめ

賃金の引き上げをおこなう際に、従業員間で賃金格差が拡大してしまう可能性があります。そこで公平性と透明性を確保するため、業績や能力を適切に評価できる評価制度を構築し、賃金制度との連動を強化するのがおすすめです。

また、職務内容や責任の度合いに応じて賃金を決定する職務給の導入も検討しましょう。

3. 継続的な見直しと改善

賃金制度の見直しをおこなった場合は、その旨を従業員に伝えて、従業員からの理解を得ることが重要です。従業員から質問があれば丁寧に回答し、疑問や不安を解消してあげましょう。

また賃金制度は、一度見直せば終わりではありません。社会経済状況や労働市場の変化に応じて、継続的に見直しと改善を図る必要があります。少なくとも年に一度は、賃金制度の現状を評価し、必要に応じて見直しを検討しましょう。

まとめ

2024年9月分の毎月勤労統計調査の結果、給与額は全体的に増加して、実労働時間数は全体的に減少している傾向にあることがわかりました。前者は近年の物価高や人材不足の深刻化などが原因として考えられ、後者は働き方改革の推進や、生産性向上への意識の高まりが影響していると考えられます。

また、パートタイム労働者の時間当たり給与が前年同月と比較して4.7%増と大幅な伸びを見せており、人手不足の影響からか、パートタイム労働者に対しても賃金引き上げの動きが広がっていると言えるでしょう。

監修者労務SEARCH 編集部

労務・人事・総務管理者の課題を解決するメディア「労務SEARCH(サーチ)」の編集部です。労働保険(労災保険/雇用保険)、社会保険、人事労務管理、マイナンバーなど皆様へ価値ある情報を発信続けてまいります。
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