労務SEARCH(サーチ)

労務の課題を解決するオフィスステーションのメディア
powerde by オフィスステーション

Facebook twitter

メールマガジン無料登録

 

おすすめ記事やお役立ち資料をお届けします。

2020年4月「同一労働同一賃金」が導入|働き方改革で格差是正へ

働き方改革による残業の是正や休暇の取得など、企業側はさまざまな対応に迫られていることと思います。そのなかでも、正規雇用者と非正規雇用者の待遇差をなくす「同一労働同一賃金」が注目されています。
順次施行される「働き方改革関連法」には「同一労働同一賃金」の原則が盛り込まれてはいるものの、多くの企業は方針を決めかねています。

企業側にはどのような対応が必要でしょうか。また、企業側にとってどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。「同一労働同一賃金」の内容をまとめてみました。

同一労働同一賃金とはどんな制度なのか?

「同一労働同一賃金」とは、正規雇用労働者か、非正規雇用労働者であるかを問わず、同じ職務についていれば、同一賃金を支給するといった制度です。

さて、「同一労働同一賃金」の概要を聞いたことがあるかもしれませんが、実際にどのような内容なのか、企業に勤める実務者でさえも理解できていないケースが多々あります。
実際どのような内容なのか見ていきましょう。

同一労働同一賃金の背景と目的

先日トヨタ自動車の豊田章男社長が「終身雇用は難しい」と発言したように、非正規雇用者を雇う企業も、非正規雇用となる労働者も増えている現状にあります。特に非正規雇用となる労働者には、「若者」「女性」「高齢者」が多いといわれています。

女性の場合は、介護や育児などとの兼ね合いから、ワークライフバランスを考え非正規雇用を選択する傾向にあります。また高齢者は年金の受給年齢の引き上げから非正規雇用を選択する方や企業の人材不足から再雇用されるケースもあり、非正規雇用を選択する場合もあります。また若者は、景気がよく非正規雇用を選択する方は減少傾向にあるもの、一方で正規雇用を希望したのになれず非正規雇用を選択せざるを得ない「不本意非正規」が増加しています。(厚生労働省 「非正規雇用」の現状と課題より)

さまざまな働き方があるなかで、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の不合理な待遇差を解消することが、働き方改革で叫ばれているのです。

問題視されている待遇格差

同じ仕事をしても給与の格差があるという点が問題視されています。
平成29年分民間給与実態統計調査結果について」では、正規・非正規についてみると、正規494万円、非正規175万円と、正規の給与は非正規の2.8倍と差が開いています。労働時間の差もあるため単純な比較はできませんが、多くの企業は住宅手当や特別な職務に従事する手当等に差を設けており、それが格差を開く一つの要因となっているようです。

また、非正規雇用者はキャリア形成が困難であるといわれています。非正規雇用であれば長期的な勤務の保証がありません。そのため教育訓練制度も整っておらず、従業員自身が次のステップへの挑戦をしにくい環境にあります。

同一労働同一賃金に関連した法律の改正内容

では、具体的にどのような状況で「同一労働同一賃金」が適用されるのでしょうか。
今回、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(新名称:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)」「労働契約法」が改正されました。
どのような内容か見ていきましょう。

大企業は2020年4月、中小企業は2021年4月より適用

この「同一労働同一賃金」は、大企業か中小企業かによって、それぞれ適用開始時期が違います。大企業は2020年4月から、中小企業は1年遅く2021年4月から適用されます。

中小企業とは、業種ごとに資本金または出資金の総額、もしくは労働者数が下記の要件に該当する企業を指します。

  • 小売業の場合   5000万円以下もしくは、労働者数が50人以下
  • サービス業の場合 5000万円以下もしくは、労働者数が100人以下
  • 卸売業の場合   1億円以下もしくは、労働者数が100人以下
  • その他の場合   3億円以下もしくは、労働者数が300人以下

なお、個人事業主や医療法人など資本金や出資金の概念がない場合は、労働者数のみで判断することになります。

大企業に関しては、適用まで残り1年を切っていますが、対応を決めかねている企業が多いように感じます。考えられる原因の一つは、非正規雇用といっても、種類はたくさんあり、対応のために就業規則の見直しをしなければならない場合があるからです。

今回の「同一労働同一賃金」の適用対象となる非正規雇用の種類は、

  • 有期雇用労働者
  • パートタイム労働者
  • 派遣労働者

です。まずはそれぞれの定義を確認します。

有期雇用労働者

有期雇用労働者とは、労働期間を定めて労働契約を結ぶ労働者です。
労働基準法第14条では有期雇用契約期間は原則3年が上限と定められています。

パートタイム労働者

「パートタイム労働者」とは、「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」とされています。(パートタイム労働法2条)。
たとえば、「パートタイマー」「アルバイト」「嘱託」「契約社員」「臨時社員」「準社員」など、呼び方は異なっても、この条件に当てはまる労働者であれば、「パートタイム労働者」となります。

派遣労働者

派遣労働者とは、労働契約を結んだ派遣元の指示によって派遣先で職務を遂行し、派遣先の指揮命令を受けて働く労働者です。

これらの非正規雇用の方々には、職務内容や責任が異なっており説明がつくのであれば、基本給、賞与、役職手当などに関して正規雇用と非正規雇用の待遇差を設けても問題はありません。ガイドラインには、「一定の違いがある場合においては、その相違に応じた支給をしなければならない。」と明記されており、【待遇差を設けてもよい項目】というのは以下の場合です。(同一労働同一賃金ガイドラインより)

  1. 基本給について、労働者の現在の職務に関連性のある職業経験・能力に応じて支給しようとする場合
  2. 基本給について、労働者それぞれの雇用状況に応じた業績・成果に応じて支給しようとする場合
  3. 基本給について、労働者の勤続年数に応じて支給しようとする場合
  4. 昇給について、勤続による職業能力の向上に応じて行おうとする場合
  5. 賞与について、会社の業績等への貢献に応じて支給しようとする場合
  6. 役職手当について、役職の内容、責任の範囲・程度に対して支給しようとする場合

逆に、【待遇差を設けるべきではない項目】は以下になります。
ただしなかには、問題にならない事例という例外のものもあるため、以下は原則として捉えてください。

  1. 業務の危険度または作業環境に応じて支給される特殊作業手当
  2. 交替制勤務など勤務形態に応じて支給される特殊勤務手当
  3. 精皆勤手当
  4. 時間外労働手当
  5. 深夜・休日労働手当
  6. 通勤手当・出張旅費
  7. 勤務時間内に食事時間が挟まれている労働者に対する食費の負担補助 として支給する食事手当
  8. 単身赴任手当
  9. 特定の地域で働く労働者に対する補償として支給する地域手当
  10. 福利厚生施設(食堂、休憩室、更衣室)
  11. 転勤者用社宅
  12. 慶弔休暇、健康診断に伴う勤務免除・有給保障
  13. 病気休職
  14. 法定外年休・休暇(慶弔休暇を除く)について、勤続期間に応じて認めている場合
  15. 教育訓練について、現在の職務に必要な技能・知識を習得するために実施しようとする場合
  16. 安全管理に関する措置・給付

では企業側にとって、今回の「同一労働同一賃金」のメリット・デメリットはどのようなものがあるのでしょうか。

法改正後の同一労働同一賃金のメリット

多様な社員を受け入れることが可能

非正規雇用を選択する方は先も述べたように多様化しています。「若者」「女性」「高齢者」にとどまらず、外国人も含まれてきます。
待遇を平等にすることで、非正規雇用を選択する優秀な人材を確保することができる可能性が出てきます。

非正規雇用者からも企業の一翼を担う社員を発掘できる

非正規雇用はこれまで、正規雇用とキャリアアップや昇進の流れが分断されている部分が多かったのですが、「同一労働同一賃金」の流れから正規雇用者と同等のチャンスを与えることができます。そのため、非正規雇用者のなかで、今までスポットは当たらなかったが有能であるといった社員を発掘できる可能性があるのです。

非正規社員の能力アップ

非正規社員も同様に、職業訓練を受ける機会が増えるため能力アップが期待されます。また、同一賃金から非正規社員のモチベーションもアップされ、企業への貢献が期待できます。

法改正後の同一労働同一賃金のデメリット

人件費の高騰

先述したとおり、非正規雇用者の給与は正規雇用者の給与に比べて低い水準でした。
現在の正規雇用者の待遇を維持しながら、非正規雇用を同等の待遇にするとなると、トータルの人件費が高騰することが予測されます。それにより、新規投資ができなくなったり、リストラを行う必要も出てくる可能性があります。

人材の流出

人件費の高騰により、正規雇用者の賃金の見直しを行わざるを得ない状況が発生するおそれがあります。正規雇用者にも、正規雇用に限らず他の企業で働くことを選択できる機会が増えるため、転職する志向が高まってくるでしょう。

合理的な説明が問われる

今後、将来的な役割が違うからといったような理由で、非正規雇用者と正規雇用者間の待遇差を出すことは許されません。正規雇用・非正規雇用の待遇格差について合理的な理由を説明する責任が問われます。
合理的な理由を説明するためにも、人事制度、就業規則の見直し、また、人事評価においても客観的な説明ができる基準を作成する必要が出てきます。

派遣社員の待遇

非正規といっても、企業側が直接契約を結ぶ非正規雇用と、派遣会社から派遣社員を受け入れる非正規雇用があります。この場合派遣会社に対して正規雇用の待遇を伝え、待遇を近づける必要も出てきます。

法改正後の企業側の注意点

賃金格差に合理的な理由を設けることは非常に難しいといわれています。
同一労働同一賃金ガイドライン」によると、学歴や年数によりマネジメント能力によって差がある場合や、責任範囲や転勤の有無などから差を認められる場合もあります。

罰則規定はありませんが、過去に裁判になった事例もあります。非常に難しい判断が伴うため、専門家に依頼することをお勧めします。

まとめ

いかがでしょうか。働き方改革が適用される期日は目前に迫っています。「同一労働同一賃金」の目的は「正規社員・非正規社員の格差」の是正です。

実現には、人事制度や就業規則の見直しが必要になることでしょう。なぜならば、賃金や待遇に対して説明できる環境が必要になるからです。そのためには根拠を示せる人事評価制度を整えるべきでしょう。

確かに制度整備には多大な時間と労力が伴いますが、長期的に見れば、制度設計がしっかりしている企業は従業員にとって働きやすい環境になり、人材の流出を防ぐことにもなります。人事部のみなさんは、来るべき関連法改正に合わせて、この記事を参考に今一度内容を見直してみることをお勧めします。

ソビア社会保険労務士事務所 代表社労士/ホワイト財団 代表理事|五味田 匡功

働き方改革を本気で成し遂げるために!

労務SEARCHを運営するオフィスステーションより、働き方改革の無料e-bookをお届けします。働き方改革の実現に必要な3つのポイントとして、ITツール導入・テレワーク・社員の時間確保をご提案します。「働き方改革を本気で成し遂げるオフィスステーション」では、わかりやすく解説し、導入事例も掲載しております。

今なら30日間お試し無料!電子化で労務が一変
各種簡単ガイド一覧はこちら