この記事でわかること・結論
- コンピテンシー評価は、仕事をする上での行動特性を基準にした人事評価制度
- 効率的な人材育成や納得度の高い人事評価が可能で、企業の業績向上に貢献
- 導入・運用には手間がかかるが、社員理解と定期的な更新を重視することで成功させられる
投稿日:
人材・組織この記事でわかること・結論
リモートワークの定着など、働き方が大きく変化している現代社会において、人事評価に課題をもっている企業も少なくありません。
人事評価の課題を解決すべく、さまざまな企業が注目している評価手法が「コンピテンシー評価」です。コンピテンシー評価を導入すれば、リモートワークでも公平に人事評価を下せます。
本記事では、コンピテンシー評価のメリットや導入方法、成功させるポイントなどを紹介します。
自社でコンピテンシー評価の導入を検討したい人は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
コンピテンシー評価とは、仕事ができる人の行動特性を基準に人事評価をおこなう制度のことです。
企業が求める人材レベルが明確となり、評価対象の足りない能力を一瞬で見極められます。また、社員に納得できる評価を下せて、モチベーション維持も期待できます。
一般的な人事評価と違い、コンピテンシー評価は対人交渉能力やタイムマネジメントといった「性格」「動機」などを重視するため、可視化しにくい点が特長的です。
従来の人事評価は、年功序列に陥って公平な評価を下しにくい傾向にありました。
しかし、コンピテンシー評価であれば、多角的な視点から経験を問わず、成績の高い社員を評価することが可能です。また、社員に「なにを意識すれば評価されるのか」を明確に伝えられます。
その結果、社員のモチベーションが高まり、さらなる向上心や定着率アップにつながります。従来の人事評価で課題だった「人件費がかさむ問題」も、コンピテンシー評価の導入で改善を見込めるでしょう。
現代社会で業績を伸ばすために、コンピテンシー評価は重要視されています。
コンピテンシー評価を導入するメリットは、主に以下の4つが挙げられます。
各メリットについて、順に見ていきましょう。
コンピテンシー評価は自社が求める人材を指標として人事評価するため、長所・短所を具体的にフィードバックしやすくなり、効率的な人材育成を目指せます。
具体性のある人事評価だからこそ、社員の課題が明確化され、キャリアアップに向けてモチベーションが高まります。
成績に伸び悩んでいた社員が、コンピテンシー評価の導入後に急成長を遂げたケースもよくある話です。
納得度の高い人事評価ができるところも、コンピテンシー評価のメリットです。
従来の評価制度だと、評価者の主観が混ざって公平に評価されない問題がありました。
しかし、行動を評価するコンピテンシー評価は明確な基準があるため、社員が納得できる人事評価を下せます。
評価基準が定められていることで、評価者側が評価しやすくなるメリットもあります。
コンピテンシー評価で評価基準とする人材は、企業で高い成績を誇る社員です。
全社員がコンピテンシー評価の評価基準を目指すため、結果的に企業の業績・生産性アップにつながります。
企業の業績や生産性が向上すれば、報酬として社員に還元できるようになり、さらなる企業の成長も見込めるでしょう。
コンピテンシー評価で人材を評価すれば、社員の動きや性格などを把握できます。
そのため、適切な人材配置や育成プログラムの作成など、人材マネジメントへの活用が可能です。
また、コンピテンシー評価で集めた社員データを採用に利用すると、ミスマッチの未然防止にも期待できます。
コンピテンシー評価はさまざまなメリットがある反面、以下のようなデメリットもあります。
コンピテンシー評価は、高い成績を誇る人材を選定し、行動特性や性格などを収集・分析して初めて評価基準を設定できます。
テンプレートが用意されているわけでもなく、自社独自のコンピテンシー評価を作成する必要があるため、導入して運用するまでに手間がかかります。
具体的には「導入まで1年以上かかる」とされており、コンピテンシー評価を導入するハードルが高いです。
一度作成したコンピテンシー評価が、自社の業績を高められる正しい評価基準になっているとは限りません。
自社にとって有用なコンピテンシー評価を作るためには、行動評価を何度も検討し、実施・改善を繰り返すことが必要です。
コンピテンシー評価は、導入するまでに年単位の時間が必要です。
その間に評価モデルや時代背景が変化すれば、一からコンピテンシー評価を見直さなければならず、環境変化における対応力に欠けています。
コンピテンシー評価を頻繁に見直すと、コストや時間がかかるだけでなく、社員の信頼関係を低下させる原因になるでしょう。
コンピテンシー評価を導入する際は、以下の手順で進めると効率的です。
まずは、社員の中からコンピテンシー評価のモデルとなる優秀な人材を選抜・ヒアリングをおこない、行動特性を分析します。
ヒアリング時は、「なぜそのような行動を起こしたのか」「普段仕事中で意識していることはなにか」など、より効果的なコンピテンシー評価を作成できるよう、さまざまな角度から質問しましょう。
この作業を、部門ごとにおこないます。
次に、分析内容をもとにコンピテンシー項目を洗い出します。
ヒアリングで明らかとなったハイパフォーマーの共通する特性や思考をまとめましょう。
コンピテンシー項目を洗い出す際は、企業が目指す方向性と合っているか検討し、なるべく具体的に成否を決められるようにしてみてください。
また、あくまでも候補段階なため、自社に適していると判定したものはすべて記載しておくといいでしょう。
次に、選定したコンピテンシーを合わせもつ理想の人物像「コンピテンシーモデル」を作成します。
コンピテンシーモデルは、大きく「実在型モデル」「理想型モデル」「ハイブリッド型モデル」に分類できます。各モデルの特長は以下のとおりです。
特長 | |
実在型モデル社内にいるハイパフォーマーを参考にした人材モデル | |
---|---|
理想型モデル | 企業が求める理想的な人材モデル |
ハイブリッド型モデル | 実在型モデルに理想型モデルの要素を加えた人材モデル |
モデルの策定に正解はありませんが、一般的には理想とするハイパフォーマーが社内にいれば「実在型モデル」「ハイブリッド型モデル」を、いなければ「理想型モデル」を参考にするといいでしょう。
次に、設定したコンピテンシーと企業戦略・目標をすり合わせて、自社に適しているのかを確認します。
事前に洗い出したコンピテンシーを精査するイメージで、企業にとって必要かどうかを判断・厳選し、コンピテンシー評価を形成しましょう。
次に、形成したコンピテンシー評価にレベルを設定します。
レベルで分けることで、社員側は評価基準がわかりやすく、評価者側は社員の評価を下しやすくなります。
評価レベルは3~5段階が一般的で、レベルに応じた習熟度を明確にしておくと、より公正な評価をつけられるでしょう。
最後に、コンピテンシー評価を実際に社内で活用し、経過を観察します。
業績が平行、またはダウンしたときは、コンピテンシー評価に不適切な内容が記載されている可能性が高いです。
コンピテンシー評価をブラッシュアップし、再度練り直して、より良いコンピテンシー評価を作成しましょう。
コンピテンシー評価を成功させるためには、以下のポイントを押さえることが大切です。
コンピテンシー評価の目的は、あくまでも「人材戦略を活用した自社の業績アップ」です。
単純な人材マネジメントのフレームワークとして捉えると、導入しても期待した成果は得られません。
導入する際は、コンピテンシー評価本来の目的を見失わないようにして、自社にとって最適なコンピテンシーを模索しましょう。
コンピテンシー評価をすべて満たす完璧な人材は、どの企業にも基本的にいません。
社員にコンピテンシー評価を押し付けると、モチベーションの低下につながり、かえって逆効果です。
コンピテンシー評価は、「完璧な人材を作ること」が目的ではありません。
あくまでも目安として、理想とするモデルへ近づけられるように人材マネジメントをしましょう。
コンピテンシー評価は社員の行動特性を評価する指標ですが、事業成績の評価もおこないます。
そもそも、コンピテンシー評価の目的は「業績を伸ばすこと」です。コンピテンシー評価に固執せず、事業成績も評価することを忘れないようにしましょう。
時代の流れや社会情勢の変化によって、業績を伸ばす方法が変わります。その結果、コンピテンシーモデルも変化します。
そのため、コンピテンシー評価項目も定期的な更新が必要です。
コンピテンシー評価は、一度作成したら終わりではありません。常に最適なコンピテンシー項目を維持できるよう、アップデートを繰り返しましょう。
コンピテンシー評価を失敗させないためには、現場社員に理解してもらうことが不可欠です。
社員の協力があってこそ、コンピテンシー評価は成り立ちます。
どれだけ自社にメリットがあったとしても、社員が納得せず不満が生じれば、逆効果となります。
社員に理解してもらうよう説明の場を設けることはもちろん、一部の部署から徐々に浸透させていくと失敗しにくくなるでしょう。
今回は、コンピテンシー評価のメリットや導入方法、成功させるポイントなどについて紹介しました。
コンピテンシー評価は、ハイパフォーマーの行動特性をもとに評価基準を作成する制度のことです。効率的に人材育成ができたり、人事評価の精度が高くなったりなど、さまざまなメリットがあります。
導入する難易度は高いものの、コンピテンシー評価が機能すれば、企業の業績アップが期待できます。
まずはハイパフォーマーへのヒアリングから始めて、この機会にコンピテンシー評価の導入を進めてみてはいかがでしょうか。
労務・人事・総務管理者の課題を解決するメディア「労務SEARCH(サーチ)」の編集部です。労働保険(労災保険/雇用保険)、社会保険、人事労務管理、マイナンバーなど皆様へ価値ある情報を発信続けてまいります。
詳しいプロフィールはこちら