この記事でわかること・結論
- CSR(企業の社会的責任)とは企業が果たすべき社会的責任のこと
- 持続可能な社会を達成するために、各企業がCSRについての基本事項や活動を理解する必要がある
- 実際にCSR活動をする際は、本業および経営とのバランスをとって進めることがポイント
投稿日:
人材・組織この記事でわかること・結論
CSR(企業の社会的責任)とは、組織の活動によって与える社会への影響に責任をもち行動すること、および利害関係者(ステークホルダー)に適切な配慮することなどを指します。
それぞれの企業がCSRを果たすことは、よりよい社会を作ることや自社の社会的信用にも繋がります。CSRの国際規格である「ISO26000」には、企業が守るべき7つの原則などが記載されているため覚えておきたいポイントです。
本記事ではCSRについて、背景や活動事例そして企業が理解しておきたい「ISO26000」の内容と注意点について解説します。
目次
CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)とは、企業がその経済活動をおこなう上で、環境保護や社会貢献、倫理的な行動など社会全体の利益に配慮しながら事業を運営すること、およびアカウンタビリティ(説明責任)を果たすことを指します。
企業はCSR活動を積極的にしていくことで、持続可能な発展や社会からの信頼獲得を達成し、長期的な競争力を高められます。CSRは経済的な目標ではなく、持続可能な社会形成を目標として、各企業が社会的公器の認識を深めていくことが大切だとされます。
世界でさまざまな社会問題が発生しているなかで、企業をはじめとする組織の活動の影響は次第に大きくなっている傾向にあります。「CSR」という言葉は、社会的に責任のある行動を取っていくべきだという考え方が普及したことで誕生しました。企業は社会的信頼を獲得するためにも、CSRを考慮した活動をおこなうことが一般的になっています。
現代の企業経営においてCSRへの意識はもはや必要不可欠な要素となっており、多くの企業が積極的にCSR活動を展開しています。また、近年は企業だけではなく、あらゆる組織において社会的責任が求められることから「SR(社会的責任)」という言葉で話題に挙がることも多いです。
CSRを果たすための活動事例としては、以下のようなものが挙げられます。
主に地球環境や文化そして我々の人権保護のための活動が、CSRを果たす活動として該当します。生活習慣病や雇用の公平性、ワーク・ライフ・バランスなど社会問題となっている課題に対して取り組むことも当てはまります。
企業におけるCSRが意識されるようになった背景にはさまざまな社会問題や要因がありますが、主に「社会問題」と「企業への信頼低下」の関連性が高いと言えます。
特に世界中で起こっている社会問題の話題に付随して「企業など組織の活動が社会に与える影響は大きいもの」という認識が広まりました。そのため社会を形成している組織の活動について、社会的責任をもつことが求められるようになりました。
また、日本では1970年代から2000年代にかけて、中小企業への批判的な雰囲気があったことからCSRが広まっています。
当時は、不景気のなか利益最優先で不祥事を起こす企業や、粉飾決算などの汚職事件を起こす企業が散見されていました。その影響により、一般消費者における中小企業への評価はどんどん低下していったことも大きな要因の一つです。
そうした全体的な信頼低下によって、企業に対して社会的に責任のある行動をとることが求められるようになり、CSR(企業の社会的責任)という言葉が普及していきました。
CSRは以下のような言葉と一緒に話題に挙がることがあり、かつ混同されがちです。それぞれの意味や違いについて解説します。
SDGs(Suntainable Development Goals)とは、2015年に国連総会で採択された地球環境保全のための「持続可能な開発目標」です。SDGsは17の国際目標・169の達成基準・232の指標が定められています。
SDGsは地球環境という目線での国際目標ですが、企業がCSRを果たすために大切な内容も多く含まれます。SDGsとCSRは、言葉の意味から「責任と目標」という違いがあります。
コンプライアンスとは(法令順守)とは、企業をはじめとした組織および個人が関連する法令など遵守することを意味します。また、法令以外にも倫理感や社会規範に基づくことも含まれます。CSRの観点からもコンプライアンスを守ることは前提条件であるため、一緒に覚えておきましょう。
世界的にCSRの重要性が注目されるなか、国際的な垣根を越えて国際的な統一基準を定めるために、国際標準化機構(ISO)は2010年にCSRに関する国際規格である「ISO26000」を発行しました。
ISO26000は認証規格のように要求事項はなく、あらゆる組織が自主的に適用できる手引きとして発行されています。CSRを果たすために必要な事項について、世界的な共通認識をもたらせてくれる役割があります。
そのなかでCSRを果たすための7つの原則および7つの中核主題を提示しています。企業はこれらを主軸に、CSRを果たすための行動をすることが理想とされています。
CSRの基本事項として、まずはこの7つの原則を念頭においておきましょう。
CSRを果たすための7つの原則
説明責任とは、企業は自らの決定と活動が社会や環境に与える影響について責任をもつべきとされる考え方です。これには、良い影響を与えるための積極的な取り組みと、悪影響を最小限に抑えるための努力が含まれます。
企業の活動や決定内容およびその影響を公開することで、利害関係者(ステークホルダー)とのコミュニケーションを透明におこなうことが求められます。これにより、信頼性の向上と説明責任の実現が目指されます。
企業は「公正・正直・尊敬」を基本とした、公平性かつ倫理的な行動を実践することが必要です。倫理的な行動をもってCSR活動をおこなうことで、企業の信頼性と評判が保たれます。
企業は自らの活動が影響を与える利害関係者(ステークホルダー)の利益を尊重し、その声に耳を傾けるべきとされるものです。利害関係者との対話を通じて、より良い意思決定が促されます。
企業は、関連するすべての国と地域の法律や規制を遵守することが求められます。これはCSR活動を実践するための基本的な前提条件です。
企業には、法令のみならず国際社会で広く認められている行動規範や人権を把握および尊重し、その精神に沿った活動をおこなうことが要求されます。
企業は人権を尊重し、人権侵害に加担することなく自らの影響範囲内で人権を守ることが重要です。これは、企業のCSR活動が社会全体に与える影響を考慮する上で中心的な原則です。
続いては7つの中核主題について説明します。7つの原則がCSR活動の基本事項だとすれば、7つの中核主題はCSR活動の実践における具体的な内容を指します。
CSR活動における7つの中核主題
組織統治は企業が社会的責任を果たすための基礎となり、効果的な組織統治は信頼の構築と長期的な成功に不可欠とも言えます。
基本事項である透明性や説明責任(アカウンタビリティ)、倫理的な行動などを核として、組織運営のあらゆる側面で実践されるべきとされています。
企業は自らの活動が人権におよぼす影響を常に認識して、人権を尊重することが求められます。差別の撤廃や強制労働の禁止、そして子供の権利の保護などが含まれます。
労働慣行に関する取り組みは、安全で健全な労働環境の確保や公正な雇用と待遇、および労働者の権利の尊重を目指します。これにより、従業員満足度の向上と生産性の向上が期待できます。
環境保護はCSRの中心的な課題の一つです。企業は、資源の持続可能な利用や気候変動への対応、廃棄物の削減といった環境問題に積極的に取り組むことが要求されます。
また、環境への影響について不明瞭である場合「わからないから取り組まない」ではなく「わからなくても環境問題に取り組む」という予防的アプローチをとることが理想とされます。
公正な事業慣行は、市場での競争を健全に保ち、消費者の信頼を獲得するために重要です。この公正な事業慣行には腐敗や賄賂の防止、および消費者の権利の尊重などが含まれます。
消費者課題への配慮は、製品とサービスの安全性と品質の保証や消費者の情報へのアクセス、消費者の声への応答を意味します。企業は消費者の権利を守ることで、その満足度を高めることが必要とされます。
企業は、地域社会の持続可能な発展に貢献することが求められます。地域経済への貢献や社会的問題への取り組み、地域社会との対話の促進が含まれます。
次に、企業がCSR活動をおこなう上でのメリット・デメリットを解説します。
CSR活動は社会的な信頼獲得に付随して、以下のようなメリットが得られる可能性があります。
CSR活動は社会的信頼を得られるのはもちろん、それによって企業名の評価が上がることや安定した人材確保まで可能にします。また、消費者や利害関係者(ステークホルダー)との良好な関係を築くことにも貢献します。
さらにCSR活動をおこなうことは、自然と法令遵守に対して注意するようになるため企業としての総合的なリスクが低減します。融資先などからの評判も良くなれば、事業拡大の機会も訪れるでしょう。
CSR活動は良い効果ばかりの印象がありますが、デメリットも存在します。
CSR活動をするには人件費などのコストがかかるため予算を多く見積もっておく必要があります。また、CSR活動は企業の業績とは関係ないことがほとんどであるため、本業にかかるリソースやコストとの配分にも注意しなければなりません。
CSR活動にあてるコストに集中し過ぎてしまうと、肝心な業績についておろそかになってしまい経営不振に陥る可能性もあります。
CSR活動をおこなう際は、以下の注意点を考慮しながら進めていきましょう。
デメリットのところでも触れたとおり、CSR活動にかかるコスト管理は入念にやりましょう。CSR活動は、利益獲得を目的とせず、支出ばかりがかさんでしまう傾向にあります。そのため、経営が続かなくなるほどにまで追い込まれないように注意が必要です。
また、実際にCSR活動をおこなうメンバーやチームをきちんと決めておくことも大切です。よくある失敗例として、兼任させることで担当者が手一杯となってしまうケースが挙げられます。
CSR活動をする際に、コスト管理が曖昧になっていたり、活動を主軸で進める担当者に余裕がなかったりなどで実態がない上辺だけの「グリーンウォッシュ」となってしまうケースもあります。その場合は、かえって社会的信頼を失うことになるでしょう。
CSR活動をおこなう場合は、予算と担当者および担当部署などを決定し、本業と無理なく並行しておこなえるようにする必要があります。
CSR(企業の社会的責任)とは、企業が果たすべきとされる社会的責任のことを指します。世界的な社会問題や企業および組織のありかたについて問題視されたところから、CSRが求められるようになりました。
CSR活動は国際的な統一基準として国際標準化機構(ISO)が発行したISO26000、およびそこに提示されるCSRの7つの原則・7つの中核主題についてよく理解して進めることが理想とされています。
ですが企業にとってCSR活動はメリット・デメリットの双方が存在しており、活動そのものが社会的信用を失うきっかけとなることや、経営が続けられなくなる要因となる可能性もあるため丁寧に進めることが大切です。
労務・人事・総務管理者の課題を解決するメディア「労務SEARCH(サーチ)」の編集部です。労働保険(労災保険/雇用保険)、社会保険、人事労務管理、マイナンバーなど皆様へ価値ある情報を発信続けてまいります。
詳しいプロフィールはこちら