女性活躍推進法により、近年働く女性の活躍推進の動きが活発化していますが、自社で働く女性の割合はどのように変わってきているでしょうか。
「子供ができてからもずっと仕事を持ちたい」と考える女性はたくさんいます。人手不足対策として女性が働きやすい魅力のある職場づくりは「働き方改革」への近道となります。
M字カーブ解消に向けた取り組みを正しく理解して、働きやすい職場づくりについて考えていきましょう。
女性活躍推進法では、常時雇用する労働者が301人以上の企業は、行動計画策定等が義務づけられています。この行動計画策定は以下の4つのステップで行われます。
(1)は、自社の女性の活躍に関する状況を把握し、その状況から自社の課題が何なのか、分析を行うというものです。
それに続く(2)は、(1)で明らかになった課題に基づき目標を設定し、その目標を達成するための行動計画を立てていきます。この目標は、1つ以上は数値で設定することになります。また、この行動計画ができたら従業員に対して周知し、外部に対しても公表するようにします。
(3)では、行動計画を策定した旨を都道府県労働局へと届け出る段階です。
そして(4)では、求職者が簡単に閲覧できるように公表した上で、目標を達成することができているかどうか定期的に確認し、行動計画の実施状況を点検・評価を行います。
このように(1)〜(4)を繰り返し行うことで、女性従業員の活躍が推進されているかどうかを確認し、実際に活躍できる場を広げていくのです。
冒頭でも出てきましたが、そもそも「M字カーブ」とは一体何でしょうか。確認していきましょう。
「M字カーブ」とは、日本の女性の就業状況の特徴をあらわしたものであり、日本の女性の労働力率を年齢階層別にグラフ化したときにあらわれる特徴的な曲線をいいます。20代のうちは働き、30代になると出産・子育てにより女性の労働力が減少し、その後40代で再び働き始めるというものです。
ちょうどMの字の一番底の部分が、労働力が減少する30代をあらわしています。また、都道府県によってM字のくぼみの深さに違いがあり、M字の形状からその地域の女性の活躍状況を把握することができます。
ちなみに、先ほどの説明のなかで出てきた労働力率とは、就業者と失業者を合わせた人数(労働力人口)が15歳以上の人口に占める割合のことであり、割合が高いほど、労働力となる人が多いということになります。
なお、就業者と失業者を合わせたものを労働力人口と呼んでいるのに対して、それ以外の人(つまり、通学している人、家事をしている人、高齢者など病気などを理由に仕事を少しもしなかった人や働く意思のない人)のことは非労働力人口と呼びます。
また、これらに関連するワードとして「生産年齢人口」というものがありますが、これは15歳〜64歳の人口のことを意味します。
男女雇用機会均等法が施行されてから、M字カーブのくぼみは少しずつフラット化されていますが、まだまだ出産を機に離職する女性は多く存在します。また、25歳から44歳の非労働力人口が相当数存在しているのも事実です。
一方で、我が国が経済的にこれからも成長していくためには、多くの人たちが労働市場へと参加していくことが欠かせません。特にM字カーブのなかで谷を形成している世代の女性たちの就業を促進し、M字のくぼみを緩やかにしていくことは非常に重要です。
これから先、ますます出生率が低下し高齢社会が進んでいくと、日本の人口はどんどん減少し、それに伴い各企業においても人手不足が深刻化していくことになります。
そういった事態に陥らないためにも、最初に説明したような女性の活躍に向けた行動計画を策定し、離職防止や有能な人材の確保などの「働き方改革」を推進し、女性がより活躍できる組織を作っていかなければいけません。
M字カーブ解消に向けたワーク・ライフ・バランスの推進や多様な働き方の実現、そして従業員の定着率の上昇は、各企業にとって大きな課題となっています。各企業が同様の課題を抱える状況であるからこそ、離職率の低い企業や働きやすい魅力のある企業を作っていくというのは人材確保の面でも重要といえます。
そのための1つの方法が「えるぼし認定企業」になることです。女性の活躍推進に取り組んでいる企業に対して、その取り組みが優良であると判断されると「えるぼし認定企業」としての認定を取得することができるようになります。
この認定は厚生労働大臣が定めるものであり、自社の商品や広告などにも認定マークをつけることができます。認定マークがついていると女性の活躍推進に関する状況が優良な企業であると判断され、イメージもアップしていくことが期待できるため、結果として人材の確保にもつながっていきます。
また、公共調達による優遇措置を受けることもできるなど、企業として享受することができるメリットは決して小さくありません。
今回は女性の活躍推進に関して紹介してきました。女性の活躍は長年叫ばれていることですが、まだまだ不十分である企業も存在しているものと考えられます。
女性の活躍を推進していくことは、長い目で見たときに企業の成長につながっていくものです。その取り組みが評価されて、えるぼし認定企業になると、さまざまなメリットを享受することもできます。
離職率が高い、出産を機に退職する女性が多いといった企業は、ぜひ今一度自社の取り組みを振り返ってみてください。
大学卒業後、地方銀行に勤務。融資及び営業の責任者として不動産融資から住宅ローンの審査、資産運用や年金相談まで幅広く相談業務の経験あり。在籍中に1級ファイナンシャル・プランニング技能士及び特定社会保険労務士を取得し、退職後にかじ社会保険労務士事務所として独立。
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