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ニュース2024年10月18日、「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(以下、「フリーランスガイドライン」)が改定されました。今回の改定では、2024年11月1日からのフリーランス新法の施行に伴い、フリーランス新法における用語の定義や、フリーランスと取引をおこなう企業が遵守すべきことなどが追記されています。
そこでこの記事では、フリーランスガイドラインの改定ポイントをわかりやすく解説し、人事・労務担当者が取るべき対応策を具体的に紹介します。
目次
2024年10月18日、フリーランスと企業間の取引の適正化を目指す「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」が改定されました。このガイドラインは名前のとおり、フリーランスが安心して働ける環境を整えることを目的に2021年に策定されました。
今回の改定では、2024年11月1日に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(以下、「フリーランス新法」)に伴って、構成の整理やフリーランス新法に関する内容の追記などがおこなわれています。
近年、多様な働き方の拡大などにより、フリーランスとして働く人が増加しています。 フリーランスは、企業にとって専門性の高いスキルや柔軟な働き方を活用できるというメリットがある一方、 契約内容の曖昧さや報酬の未払い、ハラスメントなどの問題も発生しています。
このような背景から、フリーランスと企業間で公正な取引を確保し、フリーランスが安心して働ける環境を整備することが重要視されています。そこで、内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁および厚生労働省が策定したのが「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」です。 そして、2024年11月からのフリーランス新法の施行に伴い、本ガイドラインは大幅な改定がおこなわれました。
今回のガイドラインの改定では、主に「フリーランス新法における用語の定義」と「特定受託事業者と取引をおこなう業務委託事業者などが遵守すべきこと」について新たに追記されました。
フリーランス新法では、以下のいずれかに該当するフリーランスを「特定受託事業者」と定義します。
特定受託事業者に業務委託をする事業者は「業務委託事業者」と呼ばれ、以下のいずれかに該当する業務委託事業者は「特定業務委託事業者」となります。
特定受託事業者(フリーランス)と取引をおこなう業務委託事業者(企業)などが遵守すべきことはいくつかあります。
まず、業務委託事業者が遵守しなければならない事項は、下記のとおりです。
これは特定受託事業者に業務委託をする際、直ちに業務内容や報酬額、支払期日などを含む取引条件を書面または電磁的方法(メールなど)により明示しなければならないということです。
また、取引条件を電磁的方法で明示した後に、特定受託事業者から書面での交付も求められた場合、こちらも遅滞なく対応しなければなりません。
次に、特定業務委託事業者が遵守しなければならない事項は、下記のとおりです。
そのほか、一定期間継続する契約を締結している特定受託業務従事者へは下記の7つの行為が禁止とされました。
禁止行為 | 具体的な内容 |
---|---|
受領拒否 | フリーランスに非がないのに、発注した物品などの受領を拒む行為 |
報酬の減額 | フリーランスに非がないのに、発注時に決定した報酬を発注後に減らす行為 |
返品 | フリーランスに非がないのに、発注した物品を受領後に返品する行為 |
買いたたき | 相場より著しく低い報酬を不当に定める行為 |
購入・利用強制 | 正当な理由なく、業務に関連のない製品やサービスの購入、利用を強制する行為 |
不当な経済上の利益の提供要請 | 協賛金の提供や、本来依頼していない業務を無償で依頼する行為など |
不当な給付内容の変更・やり直し | フリーランスに非がないのに、フリーランスが作業に要した費用を負担することなく、業務内容を変更させたり、やり直しをさせたりする行為 |
今回のフリーランスガイドラインの改定に対応するため、企業の人事・労務担当者は、以下の流れで具体的な対策を講じる必要があります。
まず、自社が取引しているフリーランスが「特定受託事業者」に該当するかを確認します。該当する場合、次のステップに進みます。
既存の業務委託契約書の内容を確認し、ガイドラインに記載の内容を遵守しているか確認します。必要があれば契約内容を見直し、修正しましょう。ガイドラインに掲載されている契約書のひな型をもとに作成するとスムーズです。
業務委託を依頼する多くの企業は「特定業務委託事業者」に該当すると考えらます。そのため、特定受託事業者も利用できるハラスメント相談窓口の設置や社内体制の整備も強化しましょう。ハラスメントが発生した場合や相談を受けた場合の対応手順も明確化し、周知をおこないます。
日本の労働法では、労働者を以下のように定義しています。
事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者
しかし、フリーランスのような働き方が増える中で、労働者とフリーランスの境界線が曖昧になり、労働者性を判断するのが難しいケースも出てきています。そこでフリーランスガイドラインでは、労働者かどうかの基本的な判断基準として、以下の項目を挙げています。
取引相手が上記に当てはまる場合、「労働者」に該当する可能性が高いです。労働者であれば、労働基準法で決められた、最低賃金や残業代、休日などの権利が保障されます。また、労働組合法では、労働者は労働組合を作って、会社と労働条件について交渉する権利があると定められているため、企業側は適切な対応が必要となります。
「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」の改定により、企業は新たな対応が必要となりますが、対応することでフリーランス新法を違反するリスクを軽減でき、フリーランスとの良好な関係を築ける機会にもなります。
近年、フリーランスと企業間で発生するトラブルは増加傾向にあるため、 人事・労務担当者は改定後のガイドラインを必ず一度は目を通しておきましょう。
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