労務SEARCH > 人事労務管理 > 人事労務管理の業務/手続き > フリーランス保護法とは?いつから施行?内容や対象者、やるべきことを解説
フリーランス保護法とは?いつから施行?内容や対象者、やるべきことを解説

フリーランス保護法とは?いつから施行?内容や対象者、やるべきことを解説

監修者:労務SEARCH 編集部
詳しいプロフィールはこちら

この記事でわかること・結論

  • フリーランス保護法とは、フリーランスとの取引上における発注事業者の義務項目などを定めた法律のこと
  • フリーランス保護法の目的は、フリーランスの人たちが安心して働けるようにするため
  • フリーランス保護法は2024年の秋頃までに施行されることが予定されている

フリーランス保護法とは、フリーランス(特定受託事業者)との取引適正化のために定められた法律です。

2024年の秋頃までに施行される予定なため、フリーランスと取引している事業者はフリーランス保護法で決められた義務項目やそれに応じて施行までに対応しておくべきことを理解しておく必要があります。

そこで本記事では、フリーランス保護法の概要と背景および定められた義務項目などについて解説します。

フリーランス保護法とは

フリーランス保護法とは

フリーランス保護法とは、フリーランス(特定受託事業者)との取引を適正化するための法律です。業務委託取引における義務項目などが定められています。

POINT
フリーランスとの取引に関する法律

フリーランス保護法により、フリーランスと取引している事業者は「業務委託をした際の取引条件の明示」「成果物の給付などから原則60日以内での報酬支払い」「ハラスメント対策のための体制整備」など、複数の内容が義務づけられました。

フリーランス保護法の正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」であり、2023年4月28日に可決成立そして同年5月12日に公布されました。

フリーランス保護法はいつから施行?

フリーランス保護法は、公布日である2023年5月12日から起算して1年6カ月を超えない範囲内において政令で定める日に施行される予定です。本記事更新時点(2024年4月時点)では具体的な施行日は未定ですが、2024年の秋頃までには施行されるでしょう。

フリーランス保護法の適用対象

フリーランス保護法は、特定受託事業者に係る取引の適正化および特定受託業務従事者の就業環境の整備を図るものです。同法では業務委託について「事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造、情報成果物の作成またはサービスの提供を委託すること」と定義しています。

そのうえで、フリーランスに相当するものとして「特定受託事業者」と「特定受託業務従事者」を以下のように定義しています。

特定委託事業者

特定受託事業者とは、業務委託の相手方である事業者かつ以下に該当するものを指します。

特定受託事業者
  • 個人事業主であり、従業員を使用しないもの
  • 法人であり、代表者1人以外に他の役員がいないもの、かつ従業員を使用しないもの

フリーランスの印象が強いのは上に該当するパターンですが、従業員を使用しない1人法人も保護対象となるところがポイントです。

特定受託業務従事者

特定受託業務従事者とは、特定受託事業者である個人または法人の代表者を指します。上記「特定受託事業者」と「特定受託業務従事者」については、フリーランス保護法第2条に記載がされています。


フリーランス保護法第2条

1 この法律において「特定受託事業者」とは、業務委託の相手方である事業者であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
一. 個人であって、従業員を使用しないもの
二. 法人であって、一の代表者以外に他の役員(理事、取締役、執行役、業務を執行する社員、監事若しくは監査役又はこれらに準ずる者をいう。第六項第二号において同じ。)がなく、かつ、従業員を使用しないもの。
2 この法律において「特定受託業務従事者」とは、特定受託事業者である前項第一号に掲げる個人及び特定受託事業者である同項第二号に掲げる法人の代表者をいう。


1人でも従業員を雇用している個人事業主などの場合は「特定受託事業者」に該当しないため、フリーランス保護法の適用外となります。

フリーランス保護法に違反した場合

フリーランス保護法に違反していると発覚した場合は、公正取引委員会や中小企業庁長官または厚生労働大臣によって助言、指導、報告徴収や立ち入り検査、勧告、公表、命令などをされることがあります。

そして、命令違反や検査拒否などに対しては50万円以下の罰金が科されます。

フリーランス保護法の背景と目的

フリーランス保護法の背景と目的

次に、フリーランス保護法が制定された背景と目的を解説します。事業者はフリーランス保護法に対応するためにも、制定までの経緯や目的をよく理解することが大切です。

フリーランス保護法の背景

フリーランス保護法制定の背景には、「フリーランスが弱い立場に置かれる」という実態が挙げられます。業務委託契約においては、発注事業者が主導権を握りやすいことからこのような状況が発生します。

そのため、フリーランスと発注事業者の取引を適正化するために最低限の規律を設ける必要があるとされ、フリーランスを保護する法律が検討されてきました。

そして、成長と分配の好循環を実現するために閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」の一環としてフリーランス保護法が国会に提出され、可決成立しました。

フリーランス保護法の目的

フリーランス保護法は、フリーランスの人たちが安心して働ける環境を整備することを目的としています。厚生労働省が公表しているリーフレットでは、以下の2つが目標として記載されています。

フリーランス保護法の目的
  • フリーランスと発注事業者の取引適正化
  • フリーランスの就業環境の整備

上記目的のために、フリーランス保護法ではフリーランスと取引する発注事業者にいくつかの義務項目を設けています。

フリーランス保護法で定められている義務項目

フリーランス保護法で定められている義務項目

フリーランス保護法では、以下7つが義務項目として定められています。

フリーランス保護法の義務項目
  • 取引条件の明示
  • 報酬の支払期日設定と期限内の支払い
  • 禁止事項
  • 募集情報の的確表示
  • 育児介護と業務の両立への配慮
  • ハラスメント対策への整備
  • 途中解除などの事前予告と理由開示

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

取引条件の明示

フリーランスへ業務委託する場合は、書面などによる取引条件の明示が義務づけられました。具体的には「委託業務の内容・報酬額・支払期日」などを明示する必要があります。明示方法はフリーランス保護法第3条に準じて、書面または電磁的方法でおこないます。

報酬の支払期日設定と期限内の支払い

フリーランスへの報酬の支払期日については、成果物の給付などから起算して60日以内を設定しなければなりません。また、期日内に報酬を支払うことも義務づけられています。

禁止事項

フリーランスに対して、継続的業務委託をする場合に以下のような行為をしてはならないとされています。

継続的業務委託における禁止事項
  • フリーランスの責めに帰すべき理由なく受領を拒否、または返品すること
  • フリーランスの責めに帰すべき理由なく報酬を減額すること
  • 著しく低い報酬額を不当に定めること
  • 正当な理由なく発注事業者が指定する物の購入などを強制すること

継続的業務委託とは、一定期間以上おこなう業務委託のことですが具体的な期間については今後政令で定められる予定です。

ですが、2024年1月に公表された公正取引委員会の検討会の報告書では、上記規定の対象となる業務委託の期間は「1カ月とする方向が適当であると考えられる」などと記載がされています。

また、継続的ではなくとも「発注事業者のために金銭など経済上の利益を提供させること」や「フリーランスの責めに帰すべき理由なく業務内容を変更、またはやり直させること」も禁止事項とされています。

募集情報の的確表示

発注事業者はフリーランスの募集広告などについて、虚偽表示や誤解をあたえるような表示をしてはなりません。また、募集内容は正確かつ最新であることを保たなければならないということもフリーランス保護法にて定められています。

育児介護と業務の両立への配慮

発注事業者は、フリーランスからの申し出があれば育児や介護などと両立できるように対応する必要があります。具体的な内容は施行までに、政省令や告知などで定められる予定です。

厚生労働省が公表しているフリーランス保護法の概要では、例として「妊娠検診のために時間を確保させる」や「育児や介護などと両立させるためにオンライン業務を可能にする」などが挙げられています。

ハラスメント対策への整備

発注事業者は、フリーランスへのハラスメント行為が発生しないように必要な対策を講じる必要があります。ハラスメント行為の種類は、以下のようなものがあります。

ハラスメント行為が発生した際にフリーランスが相談できるような窓口を設けることや、発注事業者側の社内でハラスメント行為についての研修をおこなうなど対策が必要です。

途中解除などの事前予告と理由開示

フリーランスへの継続的業務委託を解除する場合や更新しない場合は、原則として30日前までに予告することが義務づけられました。また、フリーランスから求められた場合は上記の理由について開示する必要があります。

フリーランス保護法と下請法の関係性や違い

フリーランス保護法と下請法の関係性や違い

下請法(下請代金支払遅延等防止法)」とは、親事業者と下請事業者の関係性を規定する法律です。下請事業者が不利になるような行為を禁止する内容となっています。

従来フリーランスはこの下請法によって保護されていたため、フリーランス保護法と類似している内容が多いです。そのためフリーランス保護法と下請法は、共通している内容もあれば異なる部分もあるという関係性となっています。

フリーランス保護法と下請法の違い

フリーランス保護法と下請法の違いには、規制対象義務項目など挙げられます。

下請法が規制対象としている事業者は資本金1,000万円を超える事業者ですが、フリーランス保護法には資本金の決まりはなく、フリーランスと取引する事業者であれば規制対象となります。

また、取引条件の明示や報酬支払期日などの義務項目は共通しています。しかし、育児介護と業務の両立への配慮やハラスメント対策への整備などの義務項目は下請法にはないという違いがあります。

フリーランス保護法にて事業者がやるべきこと

フリーランス保護法にて事業者がやるべきこと

フリーランス保護法の内容に応じて、事業者が施行までに対応しておきたいポイントをまとめました。

事業者がやるべきこと
  • 自社での適用対象者を把握しておく
  • 業務委託契約書の見直し
  • 募集広告の見直し
  • ハラスメント対策の見直し

まずは、フリーランス保護法が施行されたときにスムーズに対応できるよう、適用対象の契約とそうではない契約を把握しておく必要があります。また、報酬の支払期日や途中解除の事前予告についてなど遵守できるように、業務委託契約書の該当箇所も見直しておきましょう。

義務事項にならって、募集広告やハラスメント対策についても忘れずにチェックしておくことが大切です。

2024年の法改正も同様にチェックしておく

フリーランス保護法が施行される予定だけではなく、2024年は各種法律の改正が予定されています。改正内容によっては、大幅な見直しや修正作業が生じることもあります。事前に内容を把握しておくことで施行日から問題なく対応できるでしょう。

以下の記事において、2024年の法改正を一覧でまとめているため必ずチェックしておいてください。

フリーランス保護法に関するよくある質問

フリーランス保護法に関するよくある質問

フリーランス保護法とはなんですか?
フリーランス保護法とは、フリーランスと発注事業者の取引を適正化するための法律です。目的としては取引の適正化やフリーランスの就業環境の整備などが挙げられます。
フリーランス保護法に違反するとどうなりますか?
公正取引委員会や厚生労働大臣によって指導や報告徴収などおこなわれることがあります。また、命令違反や検査拒否に対しては50万円以下の罰金が科されます。
フリーランス保護法の施行日までに発注事業者が対応すべきことはなんですか?
フリーランス保護法では、発注事業者への義務項目が定められています。報酬支払日や条件明示などの内容を考慮して、業務委託契約周りの再確認が必要です。また、ハラスメント行為への対策措置についても見直しをしておきましょう。

まとめ

フリーランス保護法とは、フリーランスへの業務委託取引を適正化するための法律です。不利な立場になりやすいフリーランスを保護するという目的のために、発注事業者に対しての規制などが定められています。

2023年に可決や公布がされたフリーランス保護法は、2024年の秋ごろまでに施行することが予定されています。義務項目や施行までに対応しておくべきことをチェックして、スムーズに対応できるようにする必要があります。

また、フリーランス保護法の施行以外にも2024年の法改正はさまざま予定されています。トラブル回避のためにも、各種法律について事前に理解しておきましょう。

監修者労務SEARCH 編集部

労務・人事・総務管理者の課題を解決するメディア「労務SEARCH(サーチ)」の編集部です。労働保険(労災保険/雇用保険)、社会保険、人事労務管理、マイナンバーなど皆様へ価値ある情報を発信続けてまいります。
詳しいプロフィールはこちら

本コンテンツは労務SEARCHが独自に制作しており、公正・正確・有益な情報発信の提供に努めています。 詳しくはコンテンツ制作ポリシーをご覧ください。 もし誤った情報が掲載されている場合は報告フォームよりご連絡ください。

この記事をシェアする

労務SEARCH > 人事労務管理 > 人事労務管理の業務/手続き > フリーランス保護法とは?いつから施行?内容や対象者、やるべきことを解説