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ニュースM&Aが企業の成長戦略として一般化する中、近年は「法務DD(法務デューデリジェンス)」が対象企業の法務リスクを洗い出すプロセスとして、M&Aの成否を左右する重要な業務の一つとなっています。
そんな法務DDの課題と言えば、膨大な時間と専門知識を要するため、担当者にとって大きな負担となっていること。
そこで2025年7月1日、企業法務アウトソース・サービスALSP(代替法務サービス事業者)の国内パイオニアである「a23s株式会社」が、バーチャル法律事務所『クラウドリーガル』の標準サービスとして、法務DDに対応した新たなサービスの提供を開始しました。
目次
M&Aと聞くと、かつては一部の大企業による大型買収をイメージする方が多かったかもしれません。しかし現在、その様相は大きく変化しています。
少子高齢化による後継者不足を背景とした事業承継型M&Aや、業界内での生き残りをかけた事業再編、スタートアップによる事業譲渡など、M&Aは中小企業にとっても身近な経営戦略となりました。また、グローバル化の進展により、国境を越えたクロスボーダーM&Aも増加の一途をたどっています。
これにより、M&Aは単なる形式的な手続きではなく「企業の成長性や投資効果を左右する重要な経営判断のプロセス」として認識されるようになりました。失敗すれば、投じた資金を失うだけでなく、企業の存続そのものを脅かしかねません。
M&Aの重要性が高まると同時に、法務DD(法務デューデリジェンス)で調査すべきリスクの範囲も、かつてないほど広がっています。従来は契約書に潜む不利な条項のチェックが中心でしたが、現代では下記のような多岐にわたる領域の精査が不可欠です。
法務DDで調査すべき内容 | |
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契約関係 | 取引基本契約、ライセンス契約、リース契約などに含まれるチェンジ・オブ・コントロール(COC)条項(経営権の移動により契約解除が可能になる条項)の有無、重要な取引先との契約内容の妥当性など |
知的財産 | 特許や商標の有効性、他社の権利を侵害していないか、職務発明規定は適切に整備されているかなど |
人事・労務 | 未払い残業代のリスク、各種労働法規への準拠状況、ハラスメント問題の有無、労働条件の適正性など |
IT・情報セキュリティ | 個人情報保護法への対応、プライバシーポリシーの整備状況、システム開発契約の内容など |
経営・ガバナンス | 株主総会や取締役会の議事録の不備、許認可の取得・更新状況、反社会的勢力との関係など |
これらに加え、近年では人権DDや環境コンプライアンスといったESGの観点からのリスク調査も求められるようになり、法務DDはますます深く、広く、そして専門的になっています。
つまり、バックオフィス担当者に対しては、膨大な資料の収集・整理と高度な専門知識が求められている状況となっています。限られた人員と時間の中でこれらすべてに対応することは、極めて困難と言えるでしょう。
専門性が高く、責任も重い法務DDは、弁護士事務所に依頼するのが一般的です。しかし、そのような人手に頼った手法には「膨大にかかる時間」「高額なコスト」「見落としリスク」という3つの大きな課題があります。
まず時間の問題です。法務DDでは、対象企業が保管する契約書、議事録、社内規程、許認可書類など膨大な関連書類を一つひとつ精査する必要があります。たとえば、数百、数千の契約書から特定の重要条項を漏れなく探し出すだけでも、計り知れない労力がかかることが想像できるでしょう。
このレビュー作業の遅れがDD全体の遅延につながり、結果として競合に買収案件を奪われたり、市場環境の変化でM&Aの好機を逃してしまったりする機会損失のリスクに繋がります。
専門家である弁護士に依頼するコストも大きな課題です。多くの法律事務所では、作業時間に応じて費用が発生する「タイムチャージ制」を採用しており、レビュー対象の書類が多ければ多いほど費用は膨れ上がります。
その結果「予算の都合でDDの調査範囲を限定せざるを得なかった」「DD費用が高額になりすぎて、M&Aの実行自体を断念した」といった事態も決して珍しくありません。
さらに、見落としリスクの問題もあります。どれほど優秀な専門家であっても、人間である以上、ミスを100%防ぐことは困難でしょう。特に、長時間にわたる単調なレビュー作業では、疲労による集中力の低下から重大なリスクを見落としてしまう可能性が常に付きまといます。また、担当者によって判断にばらつきが生じることもあります。
しかし、この見落としは、M&A実行後に予期せぬ損害賠償請求や事業継続の障害として表面化し、企業に深刻なダメージを与える可能性があるのです。
このように人手だけでおこなう法務DDは、時間・コスト・品質のすべてにおいて限界を抱えており、M&Aを推進する企業にとって大きな足枷となっていると言えます。
このような三重苦を打ち破るべく登場したのが、a23s株式会社のバーチャル法律事務所『クラウドリーガル』の新しい法務DD対応です。
クラウドリーガルの法務DD対応の最大の特徴は「生成AIによる高速・網羅的な一次レビュー」と「弁護士(専門家)による高度な最終レビュー」を組み合わせていることです。
AIを活用することで、レビュー・チェックにかかる工数・期間を従来の半分以下にまで削減。また、AIと弁護士による二重のチェック体制を敷くことで、見落としリスクを極限まで低減し、レビュー品質の飛躍的な向上を実現します。
まず、専門分野の弁護士が監修・設計した精度の高い生成AIが、アップロードされた膨大な契約書や関連書類をスピーディーにスキャンし、分析します。AIは、あらかじめ定義されたリスク項目(COC条項、不利な補償条項など)を自動で抽出し、リスクの可能性がある箇所にフラグを立てます。
次に、AIが洗い出した論点やフラグが立った箇所を中心に、経験豊富な弁護士や各分野の専門家が、最終的な確認と評価をおこないます。ここでは、AIの機械的な分析だけでは捉えきれない、個別のM&A案件の背景やビジネス上の文脈、当事者の意図といった定性的な要素を考慮した、より深く、精緻なレビューが実施されます。
加えて、高精度のOCR(光学的文字認識)技術により、スキャンされたPDFや画像ファイルといった、テキストデータではないさまざまな形式の書類にも対応しています。
この革新的なクラウドリーガルの法務DD対応は、バックオフィス担当者および組織にとって、さまざまなメリットがあります。
これまでバックオフィス担当者を悩ませてきた、膨大な資料との格闘から解放されます。資料をプラットフォームにアップロードすれば、後のレビュー作業はAIと弁護士(専門家)チームが担ってくれるため、担当者はプロジェクト全体の管理やステークホルダーとの調整といった、より付加価値の高いコア業務に集中できます。
AIの活用で専門家の作業工数が大幅に削減されるため、従来型の法務DDに比べてコストを抑えることが期待できます。料金体系も明確化されやすく、予算管理が容易になるというメリットもあります。
法務DD期間が劇的に短縮されることで、経営陣はより迅速にM&A実行の意思決定を下すことができます。これにより、変化の速いビジネス環境において、貴重なM&Aのチャンスを逃すリスクを低減できます。
近年では、改正下請法やフリーランス新法、労働基準法の改正など、企業法務を取り巻く法改正が相次いでいます。クラウドリーガルは、こうした最新の法規制にもAIと弁護士(専門家)チームが随時対応してくれるため、常にアップデートされた視点でのリスク分析が可能となります。
クラウドリーガルの法務DD対応は、既存の体制を置き換えるだけではありません。自社の法務部や顧問弁護士と連携・併用したり、法務DDプロセスの中でも特に負担の大きい契約書レビューの部分だけをスポットで依頼したりといった、柔軟な使い方が可能です。
また、ALSP(代替法務サービス事業者)ならではの拡張性により、急な大型案件や、複数の案件が重なる業務のピーク時でも、リソース不足を心配することなく大量のレビュー処理を依頼できるのも大きな魅力です。
このような新たなサービスの登場は、単なる業務効率化ツールにとどまらず、バックオフィス部門の役割そのものを変革する可能性を秘めています。
これまで法務DDは、M&Aを安全に進めるための「コスト」や「守りのプロセス」と見なされがちでした。しかし、AIと専門知を融合させた新しいアプローチにより、法務DDを迅速かつ高精度に完了させることができれば、それはM&Aの成功確率を高め、企業価値を創造するための「攻めの起点」となり得ます。
これからのバックオフィス担当者には、日々の定型業務をこなすだけでなく、こうしたリーガルテックやALSPといった新しいテクノロジーの動向を常に注視し、自社の課題解決のためにどのサービスが最適かを選定し、導入を推進していく「戦略的パートナー」としての役割がますます求められるようになるでしょう。
テクノロジーを賢く活用し、業務を効率化・高度化することで、バックオフィス部門はコストセンターから、企業の成長を牽引するプロフィットセンターへと進化することができるのです。
今回、a23s株式会社が発表した『クラウドリーガル』における法務DD対応は、生成AIと弁護士・専門家の力を融合させることで、従来型法務DDが抱えていた「時間・コスト・見落としリスク」という根深い課題を解決する、画期的なソリューションです。
このサービスの登場は、M&Aの最前線で奮闘するバックオフィス担当者の負担を劇的に軽減するだけでなく、M&Aの意思決定を迅速化し、その成功確率を高めることで、日本企業全体の競争力強化にも貢献する可能性を秘めています。
M&Aの重要性がますます高まる現代において、バックオフィス部門は、もはや後方支援部隊ではありません。このような最先端のテクノロジーを積極的に活用し、自社の成長戦略に主体的に貢献していくことが、いま強く求められています。この新しい潮流を、ぜひ自社の業務改革のきっかけとしてみてはいかがでしょうか。
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