この記事でわかること・結論
- 2026年7月施行の新規化学物質届出・申請の電子申請義務化の内容と対象
- 2026年10月施行の個人ばく露測定義務化と従来の作業環境測定との違い
- 化学物質を直接扱わない企業の人事担当者が確認すべき間接的な影響と対応策

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ニュースこの記事でわかること・結論
2026年7月・10月を中心に、化学物質に関する労働安全衛生規制が相次いで施行されます。10月施行分(個人ばく露測定の義務化など)は2025年5月14日公布の『労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)』に基づくものです。
一方、7月施行の新規化学物質に関する電子申請の義務化は、これとは別に改正された労働安全衛生規則(省令)に基づき、令和8年(2026年)7月1日から施行されます。
直接の対象は化学物質の製造・取扱事業者ですが、外注先・委託先を持つ人事担当者や、派遣先が化学物質を取り扱う企業にも間接的な影響が及ぶ可能性があります。
本記事では、7月施行の電子申請義務化と10月施行の個人ばく露測定義務化を中心に、人事担当者が押さえておくべき改正内容と実務対応のポイントをわかりやすく解説します。
目次

まず、今回の改正が何を目的としているのか、そしてどのようなスケジュールで施行されるのかを整理します。全体像を把握することで、自社への影響範囲が見えてきます。
労働安全衛生法は、職場における労働者の安全と健康を確保し、快適な作業環境の形成を促進するための法律です。今回の改正法(令和7年法律第33号)は2025年5月14日に公布され、2026年1月から段階的に施行が始まっています。少子高齢化による多様な人材の活躍推進を背景に、個人事業者を含む幅広い就業者の安全確保を目的とした大規模な改正です。
| 施行時期 | 改正内容 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 2026年1月 | フォークリフト技能講習の不正修了証禁止 | 全事業者 |
| 2026年4月 | 個人事業者への安全衛生対策義務化・化学物質の代替化学名通知解禁 | 建設業・製造業等 |
| ★2026年7月 | 新規化学物質の届出・申請の 電子申請義務化 |
化学物質製造・輸入事業者 |
| ★2026年10月 | 個人ばく露測定の義務化 作業環境測定の範囲拡大 |
有害化学物質取扱事業者 |
| 2028年5月まで | 50人未満の事業場へのストレスチェック義務化 | 全事業者 |
出典:厚生労働省『労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)について』および『労働安全衛生法に基づく新規化学物質の電子申請について(労働安全衛生規則の改正)』をもとに編集部作成
本記事では★のついた2026年7月・10月施行の化学物質規制を重点解説します。

2026年7月1日から、化学物質に関する行政手続きの電子申請が原則義務化されます。行政のDX推進の流れの中での改正として位置づけられており、対象企業は早めの準備が必要です。
これまで紙・郵送で対応していた新規化学物質の各種届出・申請が、2026年7月1日以降はe-Govを通じた電子申請に原則一本化されます。行政手続きのデジタル化を推進する国の方針の一環として、化学物質管理に関する手続きも電子化の対象となりました。対象となる事業者は速やかにe-Govのアカウント取得と電子証明書の準備を進める必要があります。
| 手続き | 概要 |
|---|---|
| 新規化学物質の名称・有害性の調査結果の届出 | 新規物質を製造・輸入する際の事前届出 |
| 新規化学物質にさらされるおそれがない旨の確認申請 | ばく露なしの確認申請 |
| 新規化学物質にさらされるおそれがない旨の確認申請に係る変更届 | 上記の「ばく露なし確認申請」の内容を変更する際の届出 |
| 新規化学物質の有害性がない旨の確認申請 | 有害性なしの確認申請 |
| 少量新規化学物質の製造・輸入に係る確認申請 | 少量製造・輸入時の申請 |
e-Govのアカウント取得・電子証明書の準備は申請前に完了しておく必要があり、手続きには一定の準備期間が必要です。7月の施行直前ではなく、余裕をもって事前準備を進めることをおすすめします。
不正アクセスや機器故障等により電子情報処理組織による提出が著しく困難な場合は、例外的に書面提出も認められています。ただしこれはあくまでもシステム障害などの緊急時に限った措置であり、通常業務においては電子申請が必須です。「紙でも対応できる」という誤解をもとに準備を怠らないよう注意が必要です。
新規化学物質の製造・輸入をおこなわない企業は今回の電子申請義務化の直接の対象ではありません。ただし、仕入先・委託先が届出事業者である場合、電子申請への移行に伴う手続きの変更が取引スケジュールや納期に影響を及ぼす可能性があります。元方事業者や発注者の立場からも、取引先の対応状況を把握しておくことがサプライチェーン管理の観点から重要です。
2026年10月施行の改正の中で最も注目すべきが、個人ばく露測定の義務化です。従来の作業環境測定とは大きく異なるアプローチであるため、まず仕組みの違いを理解しておきましょう。
個人ばく露測定とは、作業者の口や鼻の近く(呼吸域)に小型の採取装置「個人サンプラー」を装着し、一人ひとりが実際に吸い込んでいる化学物質の濃度を直接測定する方法です。
たとえばシンナーなどの溶剤を使う作業では、容器の近くと部屋の隅とでは蒸気の濃度が異なり、風向きや作業者の動きによっても変わります。従来の固定点での測定では把握しにくかった「その人が実際にどれだけ吸い込んでいるか」を正確に捉えられる点が、この測定方法の最大の特長です。
| 項目 | 従来の作業環境測定 | 個人ばく露測定(新) |
|---|---|---|
| 測定対象 | 作業場全体の空気 | 労働者一人ひとりの呼吸域 |
| 測定方法 | 固定点での採取 (A測定・B測定) |
個人サンプラーを装着して測定 |
| 把握できること | 作業場全体の濃度水準 | 個人の実際のばく露量 |
| 施行 | 既存 | 2026年10月1日〜 |
個人ばく露測定は、有機則(有機溶剤中毒予防規則)・鉛則(鉛中毒予防規則)・特化則(特定化学物質障害予防規則)・粉じん則(粉じん障害防止規則)等が対象とする有害化学物質を取り扱う作業場などで実施が求められます。ただし、実際にどの作業場でどの方法による測定が必要となるかは、取り扱う物質や作業の態様、リスクアセスメントの結果(濃度基準値を超えるおそれの有無)、作業環境測定の管理区分などに応じて省令・告示で定められます。自社の取扱物質・作業ごとに要件を確認することが必要です。
・作業環境測定の未実施:6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(労働安全衛生法第119条・第65条)
・行政指導・是正勧告の対象となる可能性があります
・万が一労働災害が発生した場合、安全配慮義務違反として民事上の損害賠償責任を問われるリスクがあります

個人ばく露測定の義務化と同じ2026年10月1日に施行されるもう一つの重要な改正が、作業環境測定の実施義務範囲の拡大です。これにより、これまで義務の対象外だった事業者も新たに測定義務が生じる可能性があります。
従来は政令で定める有害な業務をおこなう作業場のみが作業環境測定の実施義務対象でした。2026年10月からは「健康障害の防止のための措置等を講ずる場合で厚生労働省令が定めるとき」も義務対象に追加されます。これにより、従来は義務がなかった一部の事業者も新たに対象となる可能性があるため、自社の業務内容を改めて確認することが必要です。
2024年から施行されている化学物質の自律的管理との関係も整理しておきましょう。今回の10月改正はその延長線上で、測定の精度をさらに高める内容です。
「うちは製造業でも建設業でもないから関係ない」と感じる人事担当者も多いかもしれませんが、必ずしもそうとは言い切れません。関係するケースと、今すぐ確認すべき事項を整理します。
自社が化学物質を直接取り扱わない場合でも、以下のような状況では今回の改正が間接的に関わってきます。製造業・建設業の企業に業務委託や外注をおこなっているケースでは、委託先が電子申請の準備や個人ばく露測定への対応を進める過程で、作業スケジュールや納期に影響が出る可能性があります。
また、製造業等に労働者を派遣している場合、派遣先の化学物質管理体制が不備であれば、派遣元としての安全配慮義務が問われる可能性もあります。元方事業者や発注者の立場にある企業は、関係請負人の安全管理についても責任を負う場合があるため、知識として把握しておくことが重要です。
2026年7月・10月の施行に向けて、人事担当者が今すぐ確認すべき事項を4点に絞りました。直接対象でない企業も、取引先や派遣先の対応状況が自社に影響する可能性があるため、以下の項目を社内関係部署と連携しながら確認することをおすすめします。
まず①で自社が直接対象かどうかを確認したうえで、対象外であっても②の外注・委託先への確認は怠らないようにしましょう。③は安全衛生担当部署だけでなく、調達・購買・法務部門との連携が必要なケースもあります。④については、作業環境測定士の確保は時間がかかるため、10月の施行を待たずに外部委託先の選定を進めることが重要です。
化学物質に関する規制強化は今後も続くことが見込まれます。自社の対象可否を確認したうえで、関連部署や委託先と連携しながら計画的に対応を進めましょう。

大学在学中に社労士試験に合格。業界歴約30年のベテランで、ビジネスケアラー対策の第一人者として企業の人材確保・定着支援を得意とする。
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