この記事でわかること
- 労災保険のメリット制の概要
- 継続事業、一括有期事業、単独有期事業それぞれのメリット制
- 特定メリット制の概要と手続き
この記事でわかること
労災保険とは業務上の怪我や病気、もしくは通勤途上の怪我や病気になったときに適用される保険です。
人事労務担当者は自社の事業の種類に応じて、労災保険料の算出に必要な労災保険率を算出しなければなりません。
今回は労災保険率を決定するための労災保険のメリット制を解説します。
労災保険のメリット制とは、労災保険料を算出する際に必要な労災保険率を決定するための仕組みです。労災保険の割合となる労災保険率は、事業の種類ごとに個別に定められており、その業種によって異なる災害リスク(事情)を労災保険料の決定に反映させるために採用されています。
▼事業毎の調整率
事業の種類 | 第1種調整率 | 第2種調整率 |
---|---|---|
一般の事業 | 0.67 | – |
林業の事業 | 0.51 | 0.43 |
建設の事業 | 0.63 | 0.50 |
港湾貨物取扱事業及び港湾荷役業の事業 | 0.63 | – |
また、事業の種類が同じであったとしても、その作業工程、機械設備、作業環境、そして事業主の災害防止にかける努力の違いによって、現場での災害率が異なります。
メリット制の計算式の詳細は、厚生労働省の労災保険のメリット制について(概要)をご確認ください。
事業主の保険料の負担の公平性を保つこと、そして各々がより災害防止に努力していくことを促すメリット制は、一定の範囲内で労災保険率あるいは労災保険料額を増減させる制度として存在します。
労災保険のメリット制は、事業ごとに災害リスクが考慮されます。取り扱いの事業は大きく分けて、継続事業、一括有期事業、単独有期事業の3つとなります。
継続事業とは、事業期間が設定されていない事業です。ほとんどの企業は継続事業に該当します。
継続事業の要件
雇用人数は3年間の平均人数
継続事業のメリット制では、それぞれの業種に適応されている労災保険率から算出されるメリット料率によって労災保険率が決定します。
メリット料率は、5を引いた率を±40%の範囲で増減
非業務災害率とは、設定されている労災保険率の通勤災害、二次健康診断など、給付として充てる分の保険料率です。平成21年4月からは業種を問わず、 1000 分の 0.6
一括有期事業とは、建設や立木の伐採などの事業で、2件以上の小規模な建設工事、伐採事業を年間で一括してその全体を1つの事業とするものです。
一括有期事業の要件
メリット増減率はその額に応じて異なる増減表が定められており、100 万円以上と40万円以上100万円未満とで異なります。
単独有期事業とは、事業の開始と終了が予定されている大規模な工事等の事業です。事業単独で労災保険が適用されます。
単独有期事業の要件
単独有期事業でのメリット制では、事業終了後に確定精算した労災保険料の額が増減します。
通常、事業開始から事業終了の3カ月後に計算します。
それまでに保険給付の労災者がいる場合は事業開始から事業終了後の9カ月後
特例メリット制は、中小企業の労働災害の防止活動や努力を促す目的で設置されたメリット制で、所定の安全衛生措置を講じた企業を対象としています。通常、最大±40%のメリット増減率が、最大±45%まで優遇されるメリット制です。
特例メリット制の要件
建設の事業および立木の伐採の事業を除く
特定メリットの手続きを進めるためには、機械設置等の計画届の免除の認定を受けた事業主が講ずる措置(労働安全衛生マネジメントシステムの実施)を講じて、都道府県労働局長の確認を受けなければなりません。また、条件の期間中に労働局に申請書を提出します。
労働保険のメリット制は、継続事業、一括有期事業、単独有期事業の3つの事業それぞれの災害リスクを考慮しています。自社の事業特性に合わせた、算出が必要です。
大学卒業後、日本通運株式会社にて30年間勤続後、社会保険労務士として独立。えがお社労士オフィスおよび合同会社油原コンサルティングの代表。
詳しいプロフィールはこちら