労働安全衛生法は、かつて労働基準法の一部に組み込まれていましたが、急速な産業の発展や技術の進歩などに対して素早く、的確に対応できるようにするため、独立した法律となりました。
本稿では、この労働安全衛生法がどのようなものなのか、会社や労働者とどういった形で関係してくる法律なのかを詳しく解説していきます。
目次
労働安全衛生法(労安衛法)は、職場での労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境の形作を促進することを目的としている法律です。
労働災害を防止するための労働者を危険から守るための安全衛生管理体制についても決まりが設けられており、機械や危険物、有害物に関する規制、労働者に対する安全衛生教育などについて定められています。
また、職場におけるその責任の所在についても明らかにすべく、委員会の設置や責任者の選任についても義務付けています。
2024年の法改正で、労働安全衛生規則の一部改正が実施されました。
具体的には2024年の2月1日より改正内容が施行され、テールゲートリフターの操作について特別教育が義務化されます。
配送業の方やトラックに関わる業界の方は「労働安全衛生規則の一部改正|厚生労働省」で詳細を確認しておきましょう。
労働安全衛生規則は4編に分かれており、その内の「通則」では担当者・責任者等の人の役割と組織体制について規定されています。
ただし建設業や造船業など、業種によっては労働安全衛生法で定める別途の責任者が必要である場合があります。目的達成のためにどのような組織、責任者が必要かを確認しましょう。
労働安全衛生法では労働者に対する「安全基準」についても規定されています。
安全衛生教育は新たに労働者を雇い入れ、または労働者の作業内容を変更した際に、職場で使用する機械や原料等の危険性、有害性、またこれらの取扱い方法に関する説明等を遅滞なく行う必要があります。
他にも事業者は安全基準の一環として安全装置、有害物抑制装置、保護具の性能や取扱い方法、作業手順、点検についても詳細に指導する必要があります。
また、業務を行うことで起こり得る疾病に関することや事故時の退避方法、整理整頓、清潔の保持など、労働者が職務に従事することで起こり得るリスクの回避を目的とした安全基準を守ることが求められます。
労働安全衛生規則には「衛生基準」と呼ばれるものがあり、労働者が安全に、衛生的に職務に従事できる環境を整えるよう、次のことが定められています。
その他にも気温や湿度の調節、照明設備の定期点検、夜間労働者の睡眠や仮眠設備の設置、労働者の清潔保持義務等が細かく規定されています。
労働安全衛生規則には「衛生基準」の他に「特別規制」という規則も存在します。
ほかにもクレーン等の運転についての合図の統一、事故現場等の標識の統一、有機溶剤等の容器の集積箇所の統一のことについて、詳細に規定されています。
このように様々な規制の下、労働者が安全に、そして衛生的に働ける環境を整えるように法整備されています。
以上、今回ご紹介した労働安全衛生規則は、労働政策研究・研修機構のホームページ「労働安全衛生規則」に詳しく書かれています。通則や各基準、規制の確認とあわせてご参考ください。
事業者が労働者の安全を守るための法律である労働安全衛生法ですが、その条文が長く、理解が難しいことや、現場の裁量で法令順守を見送っているケースもあります。
しかし、それを見送ってしまうということは法律に違反するだけでなく、大事な従業員の安全を脅かす行為となる危険性も十分にあります。労働安全衛生法で定められたルールを守り、労働者が働くうえでのリスクを軽減させ、安心して働いてもらえるように職場環境を整備しましょう。
日本大学卒業後、医療用医薬品メーカーにて営業(MR)を担当。その後人事・労務コンサルタント会社を経て、食品メーカーにて労務担当者として勤務。詳しいプロフィールはこちら