この記事でわかること・結論
- 雇い入れ時健康診断とは
- 雇い入れ時健康診断の対象者
- 雇い入れ時健康診断の診断項目
労働者を雇い入れている事業者は、労働安全衛生法などにより「雇い入れ時健康診断」「定期健康診断」「特定業務従事者健康診断」「海外派遣労働者健康診断」「給食従事者の検便」「有害業務従事者等特殊健康診断」を実施することが義務付けられています。
https://romsearch.officestation.jp/jinjiroumu/mentalhealth/1667
これらの健康診断は実施頻度、対象者、診断項目、事後措置などが異なっています。
今回は労働者の雇用前後に実施する「雇い入れ時健康診断」について説明します。
この記事でわかること・結論
萩原労務管理事務所
目次
新しく雇い入れる従業員については、雇い入れの直前、または直後に「雇い入れ時健康診断」を実施する必要があります。
この健康診断はあくまでも採用後の適正な配置や健康管理のために行うものであり、採用選考を目的として行うものではありません。
しかし、医師による健康診断を受けてから3カ月以内の人を雇い入れる場合はその限りではありません。法令で定められた検査項目について、健康診断の結果を証明する書面の提出があれば、「雇い入れ時健康診断」を省略できます。検査項目については後ほど詳しく説明します。
一方、一人でも労働者を雇っている事業主は、一年以内ごとに一度、医師による定期健康診断を実施する法的義務があります。中でも、常時50人以上の従業員がいる事業者は、所轄の労働基準監督署長に「定期健康診断結果報告書」を提出しなければなりません。
以上のとおり、従業員に対して行う健康診断には、主に年一度の定期健康診断と、新しく雇い入れる人に対して行う「雇い入れ時健康診断」があります。事業者は両者を混同しないよう気をつけましょう。
「雇い入れ時健康診断」の対象となる人は、「常時使用する労働者」と定められています。常時労働者とは、次の1と2の要件のいずれも満たす者を指します。
※1、2 深夜業などの特定業務に常時従事する「特定業務従事者」は6カ月以上
また、上記2の要件に満たない短時間労働者であっても、上記1の要件に該当し、1週間の所定労働時間が通常の労働者の約2分の1以上の場合は「常時使用する労働者」とみなし、「雇い入れ時健康診断」を行うことが望ましいとされています。
次は、「雇い入れ時の健康診断」の検査項目について説明します。
「雇い入れ時健康診断」では、以下の検査項目をすべて受ける必要があります。
一方、定期健康診断は上記に加えて「喀痰検査」を行います。しかし、労働者の年齢等により、医師の判断で省略できる項目があります。
以上のとおり、省略可能な検査があるか否かが、「雇い入れ時健康診断」と定期健康診断の大きな違いとなります。
最後に、「雇い入れ時健康診断」を含む、健康診断実施後に事業者が取り組むべきことについて説明します。
「雇い入れ時健康診断」の結果を所轄労働基準監督署長に提出する義務はないため、上記(6)については省略できます。しかし、(1)~(5)については定期の健康診断と同様に行う必要があるため、結果を提出する必要がなくても上記の取り組みをしっかりと行うことが重要となります。
今回は「雇い入れ時健康診断」の概要や対象者、「雇い入れ時健康診断」を省略できるケースなど、事業主が認識しておくべき事項について解説しました。
また、「雇い入れ時定期健診」と混同しやすい定期健康診断ですが、「労働基準監督署長に結果を提出する義務の有無」と「健康診断の検査項目」、「労働者の年齢等により省略できる検査項目の有無」の3点で明確な違いがあります。
その点に留意したうえで、対象者全員もれなく「雇い入れ時健康診断」を行うよう心がけましょう。