この記事でわかること・結論
- 福利厚生費の意味や、法定福利費・法定外福利費・交際費・給与との違い
- 福利厚生費として計上できるもの・できないもの、認められる要件
- 飲食代や個人事業主の福利厚生費の取り扱い、勘定科目・仕訳の考え方

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ニュースこの記事でわかること・結論
福利厚生費を「従業員のために使った費用だから、すべて経費にできる」と考えていませんか。
福利厚生費は従業員の健康維持や生活支援、職場環境の向上などを目的に会社が支出する費用です。ただし、対象者や金額、支給方法によっては、給与や交際費として扱われる可能性があります。また、社会保険料などの法定福利費と、社員旅行・食事補助・慶弔見舞金・健康診断などの法定外福利費があります。特に、飲食代、社員旅行、社宅、現金支給は判断が分かれやすい項目です。
福利厚生費に一律の上限はありませんが、社会通念上妥当な金額であること、全従業員を対象としていることが重要です。また、食事補助は2026年(令和8年)4月1日以後の支給分から、給与として課税されない会社負担額の基準が月額7,500円以下に引き上げられています。
本記事では、福利厚生費の対象となる費用、認められる要件、上限の考え方、飲食代や個人事業主の取り扱いをわかりやすく解説します。
目次

福利厚生費とは、企業が従業員の健康維持、生活支援、職場環境の向上などを目的として支出する費用です。給与や賞与のように労働の対価として直接支払うものではなく、従業員が働きやすい環境を整えるための費用として位置付けられます。
代表的なものには、健康診断、社員旅行、社内イベントでの飲食代、慶弔見舞金、食事補助、社宅などがあります。ただし、福利厚生費として計上できるかどうかは、対象者や金額、支給方法などによって判断が変わるため、後述する要件を確認することが重要です。
福利厚生に関する費用は、大きく「法定福利費」と「法定外福利費」に分けられます。
法定福利費は、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、労災保険料など、法律に基づいて会社が負担する費用です。従業員を雇用する企業にとって、法定福利費は人件費の一部として把握しておく必要があります。
法定外福利費は、企業が任意で設ける福利厚生にかかる費用です。社員旅行、食事補助、慶弔見舞金、社宅、健康診断や人間ドックの補助などが該当します。一般的に「福利厚生費として計上できるか」が問題になりやすいのは、主にこの法定外福利費です。
福利厚生費と混同されやすい費用に、交際費や給与があります。判断のポイントは「誰を対象にした支出か」「何を目的とした支出か」「従業員個人への経済的利益になっていないか」です。
たとえば、社内の全従業員を対象とした通常の懇親会費であれば福利厚生費として処理できる可能性があります。一方、取引先を接待するための飲食代は交際費、特定の従業員だけに支給する現金や商品券は給与として扱われる可能性があります。
| 区分 | 主な内容 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 福利厚生費 | 従業員の慰安・健康・生活支援などのための費用 | 全従業員を対象にし、金額が社会通念上妥当か |
| 法定福利費 | 社会保険料・労働保険料などの会社負担分 | 法律に基づき会社が負担する費用か |
| 交際費 | 取引先などへの接待、供応、慰安、贈答など | 社外の得意先・仕入先などが対象か。なお、法人の場合、取引先等との飲食費のうち1人当たり1万円以下のものは、一定の事項を記載した書類の保存を要件に交際費等の範囲から除外されます(租税特別措置法61条の4) |
| 給与 | 従業員個人への経済的利益や現金支給など | 特定の従業員への支給や換金性の高い支給になっていないか |

福利厚生費として計上できるかどうかは、費用の名称だけでは決まりません。「社員旅行」「食事補助」「健康診断」といった名称であっても、実態によっては給与や交際費と判断されることがあります。ここでは、福利厚生費として認められやすい主な費用と、勘定科目・仕訳の基本を整理します。
福利厚生費として認められる主な費用には、従業員の健康、生活支援、職場の親睦を目的とした支出があります。ただし、いずれも全従業員を対象としていることや、金額が妥当であることが前提です。
| 費用の例 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 社員旅行・レクリエーション | 従業員の慰安や親睦を目的とした旅行・社内イベントなど | 役員だけ、私的旅行、取引先接待を目的とするものは対象外になりやすい |
| 食事補助 | 社員食堂、弁当支給、残業時の食事支給など | 従業員負担額や会社負担額の要件を確認する |
| 健康診断・人間ドック | 従業員の健康管理のために会社が負担する検診費用 | 健康診断の対象者や検査内容に偏りがないか確認する |
| 慶弔見舞金 | 結婚祝、出産祝、香典、病気見舞いなど | 慶弔見舞金規程などに基づき、一定の基準で支給する |
| 社宅・寮 | 従業員向けの住宅支援や借り上げ社宅制度など | 従業員から賃貸料相当額の50%以上を受け取っているか確認する。なお、この基準は従業員向け社宅の取扱いであり、役員社宅は賃貸料相当額の計算方法が異なる(小規模な住宅か否か等により判定。豪華社宅は時価家賃。国税庁タックスアンサーNo.2600参照) |
会計処理では、法定福利費と福利厚生費を分けて処理するのが一般的です。社会保険料や労働保険料の会社負担分は「法定福利費」、社員旅行や食事補助、慶弔見舞金などは「福利厚生費」として処理します。ただし、企業によって勘定科目の運用は異なります。重要なのは、同じ性質の支出を同じ科目で継続的に処理し、領収書や対象者、支給基準を残しておくことです。
| 取引例 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 社員全員を対象にした社内懇親会費55,000円を普通預金から支払った | 福利厚生費 55,000円 | 普通預金 55,000円 |
| 会社負担分の社会保険料200,000円を計上した | 法定福利費 200,000円 | 未払費用 200,000円 |

福利厚生費として認められるためには、支出の目的だけでなく、対象者や金額、支給方法が重要です。主な要件は「全従業員を対象としていること」「社会通念上妥当な金額であること」「原則として現金支給ではないこと」の3つです。
福利厚生費は、従業員全体の福祉向上を目的とする費用です。そのため、特定の役員や一部の従業員だけを対象にした支出は、福利厚生費として認められにくくなります。
ただし、必ず全員が同じタイミングで利用していなければならないわけではありません。たとえば、一定年齢以上の希望者を対象とした人間ドックや、勤務場所・勤務形態に応じた補助など、合理的な基準がある場合は認められる可能性があります。
全従業員、一定年齢以上の従業員、同じ勤務条件の従業員、同じ事業所の従業員など、客観的に説明できる基準で対象者を決めることが重要です。
福利厚生費には一律の上限があるわけではありませんが、金額が社会通念上妥当であることが必要です。高額すぎる旅行、豪華すぎる飲食、業務や福利厚生の目的を超えた支出は、給与や交際費と判断される可能性があります。社員旅行の場合、旅行期間、会社負担額、目的、参加割合などを総合的に見て判断されます。国税庁の事例でも、旅行の内容を総合的に勘案し、社会通念上一般的なレクリエーション旅行と認められるかがポイントとされています。
福利厚生費は、原則として現物やサービスの提供としておこなうことが望ましい費用です。現金を支給すると、従業員が自由に使える経済的利益となるため、給与として扱われる可能性が高くなります。
たとえば、食事そのものを提供する場合と、食事代として現金を支給する場合では取り扱いが異なります。現金で食事代を補助した場合は、原則としてその全額が給与として課税されます。ただし、深夜勤務者に夜食を現物支給できないために支給する金銭は、1食当たり650円以下(消費税等を除く)であれば例外的に課税されません(2026年4月1日以後の支給分。改正前は300円以下)。
また、食事券やプリペイドカードで補助する場合は、使途が食事に限定されているかどうかで「現物支給」か「金銭の支給」かの判定が分かれます。食事以外にも使える汎用的なカード等は、金銭支給として給与課税されるリスクがあるため、用途の限定性を確認しましょう。一方、慶弔見舞金のように、慶弔見舞金規程など一定の基準に基づいて支給される金品は、金銭であっても福利厚生費として認められる場合があります。
食事代や住宅補助などを現金で支給すると、福利厚生費ではなく給与として扱われる可能性があります。支給方法を決める際は、税務上の取り扱いを事前に確認しましょう。

福利厚生費には、すべての費用に共通する一律の上限額はありません。ただし、上限がないからといって、どのような金額でも認められるわけではありません。
社員旅行や社内イベント、食事補助、人間ドック、社宅などは、個別の税務上の要件を満たす必要があります。金額が高額すぎる場合や、役員・一部の従業員だけを対象にしている場合、私的利用に近い場合は、福利厚生費ではなく給与や交際費として扱われる可能性があります。
福利厚生費全体に一律の上限はありませんが、支出内容ごとに給与課税・交際費・私的支出と判断されないよう、金額や対象者を確認する必要があります。

飲食代は、福利厚生費・交際費・給与の判断が分かれやすい費用です。社内の従業員を対象にした飲食であっても、対象者や金額、目的によって処理が変わります。
創立記念日や社内行事の飲食費は、従業員等へおおむね一律に提供される通常の飲食費であれば、福利厚生費として認められます。一律の金額基準はなく、社会通念上通常の範囲かどうかで判断されます。
一方、社員食堂や弁当支給などの食事補助は、①役員や使用人が食事の価額の50%相当額以上を負担していること、②食事の価額から本人負担額を控除した会社負担額が1カ月当たり7,500円以下であること、という2つの要件を満たす場合に、給与として課税されません(2026年4月1日以後に支給する食事から適用)。
7,500円以下かどうかの判定は、消費税および地方消費税の額を除いた金額でおこない、10円未満の端数は切り捨てます。なお、これらの要件を満たさない場合は、7,500円を超えた部分だけでなく、食事の価額から本人負担額を控除した残額の全額が給与として課税される点に注意が必要です。
また、取引先との会食、役員だけの会食、特定の従業員だけを対象とした高額な食事、食事代としての現金支給などは、福利厚生費ではなく交際費や給与として扱われる可能性があります。
食事補助の非課税要件は、2026年4月1日以後の支給分から月額7,500円以下に引き上げられています。社内規程や既存記事を参照する場合も、国税庁などの最新情報で金額を確認しましょう。

個人事業主の場合、福利厚生費を計上できるかどうかは、従業員がいるかどうかで考え方が変わります。法人と同じように「事業のための費用」と考えても、個人事業主自身の健康管理や生活支援のための支出は、原則として福利厚生費にはなりません。
個人事業主自身の健康診断、人間ドック、スポーツジム、食事代、旅行代などは、原則として福利厚生費にはなりません。福利厚生費は、従業員の慰安・医療・衛生・保健などのために支出する費用として考えるため、事業主本人の生活上の支出とは区別する必要があります。また、個人事業主本人が負担する国民健康保険料や国民年金保険料などは、事業の必要経費ではなく、確定申告上の社会保険料控除として扱うのが基本です。
従業員を雇用している場合は、従業員のために支出した健康診断、慶弔見舞金、社員旅行、食事補助などを福利厚生費として計上できる可能性があります。ただし、家族従業員や青色事業専従者だけを対象にした慰安旅行や食事会などは、家族であれば事業と関係なくおこなう支出(家事費)と区別がつかないため、福利厚生費としては原則認められません(所得税法45条1項1号)。
一方、業務の遂行上直接必要であることが記録等で明らかにできる部分(研修目的の旅費など)は、福利厚生費ではなく研修費等として必要経費に算入できる余地があります(所得税法施行令96条)。
個人事業主本人の健康維持や生活支援のための費用は、従業員向けの福利厚生とは異なります。事業に直接必要な費用か、個人的な支出かを分けて判断しましょう。
福利厚生費とは、従業員の健康維持、生活支援、職場環境の向上などを目的として企業が支出する費用です。法定福利費と法定外福利費に分けられ、社会保険料の会社負担分、社員旅行、食事補助、慶弔見舞金、健康診断、社宅などが代表的な例です。
ただし、福利厚生費として認められるには、全従業員を対象としていること、社会通念上妥当な金額であること、現金支給ではなく制度やサービスとして提供されていることなどが重要です。特定の役員や従業員だけを対象にした支出、高額な飲食、取引先接待、私的支出は、給与や交際費と判断される可能性があります。
福利厚生費に一律の上限はありませんが、食事補助や社員旅行、社宅などは個別の要件を確認する必要があります。税務上の判断に迷う場合は、社内規程や証憑を整備したうえで、税理士などの専門家に確認しましょう。

30歳で税理士試験5科目に合格。複数の会計事務所にて勤務の後、2021年に独立。「財務CFOセカンドオピニオン顧問」として中小企業の経営参謀を担う。「経営者、そこに働く従業員など、関わるすべての人の可能性を拡げ続ける」をモットーに、経営者が本当に悩んでいることを傾聴で引き出し、頭の中を可視化・実行支援することを信条としている。
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