マイナポータルとは日本政府が運営しているオンラインサービスであり、別名「情報提供等記録開示システム」と呼ばれています。
今回は、個人と行政が紐づくことで行政の効率化、国民の利便性向上、公平で公正な社会を実現すると言われているマイナポータルについて、解説します。
2017年1月より運用が開始されたマイナポータルは、日本政府が国民に提供するオンラインサービスです。子育てや社会保障などの手続きにおいて添付書類が削減され、お知らせサービスを通じて情報が展開されるなど、国民の利便性向上を目的に導入されています。
公的な個人情報を取り扱うマイナポータルは、マイナンバー(社会保障・税番号制度)と密接に関係しており、民間企業やI T社会における重要な基盤として、今後の更なる活用が見込まれています。
【参考】マイナポータルとは : マイナンバー(社会保障・税番号制度) – 内閣府
マイナポータルにログインすることで、従業員・個人は以下のサービスを受けることができます。
サービス内容 | 詳細 |
---|---|
公金決済サービス | お知らせのページからネットバンキング(ペイジー)や クレジットカードでの公金決済が可能になる |
自己情報表示 (あなたの情報) |
行政機関が保有する自身の個人情報の内容確認ができる |
サービス検索 ・電子申請機能 (ぴったりサービス) |
行政機関が保有するデータを元に、自身に最適な行政サービスを 確認することができ、オンラインでの申請が可能になる |
民間送達サービス との連携 |
民間の送達サービス活用により、行政機関だけでなく、 民間企業などからのお知らせを受信できる |
情報提供等記録表示 (やりとり履歴) |
自分の個人情報が閲覧された履歴やその理由の確認、 行政機関同士でのやりとりの履歴を確認することができる |
もっとつながる (外部サイト) |
外部サイトを登録すると、マイナポータル経由での ログインが可能になる |
【参考】マイナポータルとは : マイナンバー(社会保障・税番号制度) – 内閣府
現時点では個人利用の傾向が強いマイナポータルですが、将来的には人事総務部といった労務管理をしている部署に大きな影響を及ぼすと考えられています。
近い将来に展開されるサービスにおいて、「健康保険証・医療情報との連携」と「年末調整申告書との連携」が挙げられます。
法人設立ワンストップサービスや(市町村の子育てや介護をはじめとする)ぴったりサービスは既に利用が可能です。
健康保険組合から発行される健康保険証は、2021年3月からマイナンバーカードを健康保険証として利用できます。この連携により、顔写真入りの健康保険証として本人確認の精度が高まります。
また、オンラインで保険資格の変更が確認できるため、転職や退職で健康保険の手続きが発生した場合でも、継続して医療機関での診察が可能となり、利便性が高まります。
本人の同意があれば、服薬履歴や特定検診情報を含む情報を、医療機関をまたいで閲覧できるようになり、診療の品質向上も期待されています。
医療費控除の確定申告を行う際に、マイナポータル上において金額などの情報の整理と申請ができるようになる日も近いと言われています。
労務管理担当部署に関わる点としては、従業員の健康診断の受診状況など、企業側での確認が必要な情報を取得しやすくなります。また、入社手続きをマイナポータルで実施する可能性が高いとも言われています。
紙面によるって保険料控除などの証明書を提出していた年末調整は、今後、マイナポータルにログインし、WEB上での一括受取、申告書の作成、会社への提出がワンストップで可能となります。
年末調整手続きの電子申請化は、従業員にとって、証明書紛失による再発行の手間が省け、利便性が高まります。企業は従業員が提出した年末調整申告書のデータをシステムに取り込み、控除額と年税額の計算を自動化・効率化できます。加えて、添付書類を確認するための人員削減が可能となり、年末調整申告書や控除証明書を紙で保管するために必要としていた経費も削減できます。
【参考】年末調整手続の電子化に向けた取組について(令和2年分以降)-国税庁
【参考】2020年4⽉から特定の法人について 電子申請が義務化されます-厚生労働省
マイナポータルの利用者数はまだまだ少なく、今後の普及が課題と言われています。セキュリティを確保し、個人情報の搾取を防止するために、個人番号カードのI Cチップを用いてログインする方法が採用される予定です。
また、行政手続きを原則電子申請に統一するデジタルファースト法案が2019年5月に可決されています。この法案により、行政サービスのオンライン手続きが義務化となる見込みです。2020年4月から特定の法人においては事業年から一部の手続きの電子申請が義務化されます。
事業主が行うべき健康保険、厚生年金保険、労働保険、雇用保険の手続きについて電子申請が必須となるため、企業によっては労務管理の早急な見直しが必要です。
社会保険労務士の中でも、10%に満たないと言われる助成金を専門に手掛ける特定社会保険労務士/ワークスタイルコーディネーター。なんば社会保険労務士事務所の所長。
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