人事異動の時期は、異動に先立つ新たな店舗や営業所、作業現場などの設置や分割が集中する時期でもあります。逆に、既存の店舗や営業所、作業現場などの休廃止や統合もまた、比較的発生しやすい時期でもあります。
そこで、これら事業所の新設または廃止について、必要な雇用保険の手続きを理解することで、異動の発令に多忙を極めてしまいうっかり従業員の保険加入が滞ることのないようにしましょう。
目次
雇用保険の強制適用事業と暫定任意適用事業とでは、事業所の新設や廃止にともなう手続きが異なります。
雇用保険の「強制適用事業」とは労働者が雇用される事業をいい、原則労働者を一人でも雇用していれば、業種や規模に関わらず雇用保険に加入しなければなりません。
適用事業の事業主は、その事業が開始された日に、その事業につき雇用保険に係る保険関係が成立し、事業が廃止されもしくは終了したときは、その事業についての保険関係はその翌日に消滅することになります。
雇用保険の「暫定任意適用事業」とは、農林水産業のうち
をさし、常時5人未満を雇用する個人事業のことをいいます。この場合は任意加入の申請をし、厚生労働大臣の認可があった日にその事業につき雇用保険に係る保険関係が成立します。認可があった日より、前の日に遡って保険関係が成立することはありません。
また事業が廃止もしくは終了したなどの場合、事業主が当該暫定任意適用事業に係る保険関係の消滅の申請をし、厚生労働大臣の認可があった日の翌日に、雇用保険に係る保険関係が消滅します。
以下の場合には、事業主は事業所の所在地を管轄する公共職業安定所長に「雇用保険適用事業所設置届」を、設置日の翌日から起算して10日以内に提出する必要があります。
同時に「保険関係成立届」の提出と、
が確認できる書類を添付しなければなりません。
事業主が有する事業所を廃止したときは、廃止日の翌日から起算して10日以内に、「雇用保険適用事業所廃止届」を提出しなければなりません。廃止届の提出には、事業所の廃止の事実を証明することができる書類の添付も必要です。
また、上記の書類では廃止の事実が確認できない場合で、当該廃止に係る事業所が個人事業等のときには、必要に応じて被保険者の解雇通知書、税務署への事業の廃止届を添付します。
当該廃止に係る事業所の廃止理由が、会社の合併や事業の譲渡に伴う場合には、
などがわかる証明書のいずれか必要なものを添付する必要があります。
暫定任意適用事業は、事業主が任意加入の申請をし、厚生労働大臣から認可を受けた日に、その事業につき雇用保険に係る保険関係が成立することになります。
認可の申請には、事業所所在地を管轄する都道府県労働局長に「任意加入申請書」を提出しなければなりません。
暫定任意適用事業における保険料は、適用事業と同じく労働者も一部負担することから、その事業に使用される労働者の2分の1以上の同意を得ないと任意加入の申請を行うことができません。
また、事業主が偽りの申立てをしたことが明らかになった場合には、認可の取消をすることができるとされており、撤回権を留保している場合や、留保はしていないが、従来どおりの任意加入の認可を存続させておくと公益に反することとなる場合については、事業主や雇用する被保険者の同意がなくても、都道府県労働局長の職権で認可の撤回をすることができるとされています。
適用事業と暫定任意適用事業では、事業所の新設や廃止の手続きが異なってきます。他にも、任意適用の許可や取消、撤回などの手続きに関しても同じことが言えます。
人事異動や年度代わりの忙しい時期にこそ、該当者にはすみやかに雇用保険の手続きができるよう、常日頃から新しい法改正などの情報を取り入れて管理し、すぐに手続きができる環境にしておきましょう。
社会保険労務士事務所 そやま保育経営パートナー 代表社会保険労務士:
楚山 和司(そやま かずし) 千葉県出身
株式会社日本保育サービス 入社・転籍
株式会社JPホールディングス<東証一部上場> 退職
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