ESGを考慮するにあたっての課題とは?企業・投資家・定義の観点からそれぞれ解説

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ESGとは環境・社会・ガバナンスの英語の頭文字をとった言葉です。ESGには課題がありますが、課題の内容はESGを捉える「主体」によって内容が異なります。具体的には企業・投資家・定義の観点で内容が異なるため、それぞれ解説します。

監修者
労務 SEARCH

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ESGを理解するにあたって企業が抱える5つの課題

ESGを理解するにあたって企業が抱える5つの課題

企業や団体はESGの意味を理解しておく必要がありますが、理解するにあたり課題について説明します。

定義があいまいである

ESGとは以下のキーワードの頭文字をとった言葉です。

それぞれの意味は皆さんもご存じだと思いますが、具体的になにをすればいいかイメージできない人も多いかと思います。このようにESGは定義が大雑把で、あいまいなことが理解にあたっての課題です。

ただ、この課題を裏返してみると、「それぞれが取り組み内容を検討できる」と考えられます。やるべきことが示されていない点はESGの課題ですが、「自分達に適した取り組みを選択できる」点は魅力のひとつです。

取り組みへの指標が少ない

具体的なESGの取り組みが定められていないために、取り組みにあたっての指標が少ない状況です。
参考にできる指標がなければ、企業などは達成目標やKPIなどを設定しにくくなってしまいます。
ESGの考え方を推進する世界持続可能投資連合(GSIA)の資料を参照しても、具体的な指標は案内されていません。

取り組み内容と目標は自分たちで検討しなければならず、取り組みに向けた準備に課題があります。具体的な指標がないことを課題と捉え、現実的な目標を定めなければなりません。
なお、金融庁の公開している「2.『ESG」に関する開示例-金融庁」では、いくつかの企業の取り組み内容や目標値が紹介されています。目標設定の課題を解決するために、こちらを参考にしてもいいでしょう。

結果が短期間では評価しにくい

中長期的な取り組みが必要となるため、結果がすぐに出にくいことは企業にとって課題です。近年、投資家はESGの実現に向けた取り組みを重要視しているため、目に見える結果があるかどうかは、投資家からの評価を左右します。

短期的な評価をしにくい点は課題ですが、ESGに取り組んでいることは評価されるはずです。また、積極的な取り組みで成果を上げれば、中長期的に企業価値を高められます。

社内からも投資家からも短期間では評価しにくいため、ここは課題と認識しておきましょう。

全社的な展開が難しい

ESGは全社的におこなうべき取り組みです。しかし、すべての従業員に取り組み内容を教育し行動してもらうことは難しく、ここも企業の課題といえます。規模が大きくなればなるほど、全社的な展開が課題となるでしょう。

悩みの種となりかねない部分ですが、ESGは全社を挙げて対応すべき取り組みです。役員や一部の従業員だけで実現できるわけではありません。社内の教育制度を整えるなど、解決に向けた取り組みが必要です。

クライアント・カスタマーの理解を得にくい

全社的にESGの取り組みをおこなうにあたっては、クライアントやカスタマーの理解も得なければなりません。しかし、実際にはこれらの人々からは理解を得にくいという課題があります。
理解を得にくい理由はいくつも考えられますが、たとえば「カスタマーに直接的な影響がない」という点が挙げられます。
カスタマーとしては製品・サービスを提供してくれさえすればいいため、ESGの取り組みによってなにかしら影響を受けるならば容易に許容してくれず課題となるかもしれません。

投資家が企業へ投資する際に抱える3つの課題

投資家が企業へ投資する際に抱える3つの課題

投資家が企業に対してESG投資する場合においても課題を抱えます。それぞれの課題について解説します。

情報開示が限定的である

投資家が企業に対してESG投資をおこなうためには、企業からESGの結果を開示してもらわなければなりません。
一般的な投資に必要な「財務情報」だけではなく「非財務情報」が必要です。ただ、ESGに関する情報などが含まれる非財務情報は、公表していない企業もあり投資家の課題となっています。
コンサルティングなどを業務としているPwCの調査によると、ESGなどに関わる情報を開示している企業は60%から90%程度です。
すべての企業が情報を開示しているわけではなく、投資家としては投資先の選定に必要な情報収集が課題となっています。

レポーティング基準が完全に統一されていない

ESGに関するレポーティングは、グローバル・レポーティング・イニシアティブ(Global Reporting Initiative, GRI)と呼ばれる機関でスタンダードルールが制定されています。
GRIスタンダードと呼ばれるもので、世界的にこちらのフレームワークを利用してレポーティングすることが望ましい状況です。
しかし、GRIスタンダードでのレポーティングが望ましいとされるだけで、法律などで手法が統一されているわけではありません。

つまり、GRIスタンダードを採用するかどうかは、レポーティングする企業に委ねられています。
結果、独自のフォーマットでレポーティングする企業が存在し、「レポーティング項目の不足」や「フォーマットの違いによる比較のしにくさ」などの課題が生じるかもしれません。

中長期的なリターンが不透明である

投資家はなにかしらのリターンを期待してESG投資をおこないますが、リターンが不透明であるという課題があります。ESGは中長期的な取り組みであるため、将来的にどの程度のリターンが得られるかは明確ではありません。
とはいえ、ESG投資は「ESGへの取り組みによって将来的に企業価値が上がることに期待する」という投資です。どの程度、企業価値が上昇するかは予想できない点は課題ですが、それを踏まえた投資をしなければなりません。

ESGで企業が解決すべき具体的な課題例

ESGで企業が解決すべき具体的な課題例

ESGは社会的な課題を解決するものであるため、それぞれの課題について説明します。
課題にはいくつもの考え方がありますが、今回は年金積立金管理運用独立行政法人の資料をもとに、説明します。

Environment(環境)

環境に関する課題としては以下が示されています。

気候変動など日本でも感じられる課題から、水資源など日本ではあまり問題視されない課題まで含まれています。
ESGの課題例を認識していなければ見落とす可能性があるため、あらためて内容を確認しておきましょう。
また、世界規模の課題も多く、日本のみならず世界的な課題解決に向けた取り組みが求められます。

Social(社会)

社会に関する課題としては以下が示されています。

これらの課題については日本でも日頃から重要視されているため、課題として認識できている人が多いかもしれません。
企業は自社の発展だけではなく社会貢献を意識する必要があります。
意識しなければならない事項が、ESGの課題とも一致していると考えておきましょう。

Governance(管理体制)

管理体制に関する課題としては以下が示されています。

多くの企業で重要視されている管理体制に関する課題がESGでも課題と考えられています。
ただ、これらの課題は役員などの経営層が意識する課題であり、従業員に認知されている課題ではありません。
ESGは全社的な取り組みが必要となるため、管理体制に関する課題も従業員への周知が必要です。

まとめ

ESGにはいくつかの課題があり、企業・投資家・定義などESGを捉える主体によって内容が異なります。それぞれが異なった課題を持っているため、課題についてどの視点から捉えるのか常に意識しましょう。
課題は自分たちで解決できるものもあれば、相手や第三者を巻き込まなければならないもの、そもそも解決が難しいものもあります。すべての課題を解決しようとせず、課題を認識し、それを踏まえた行動を取ることが重要です。