昨今、成長産業への労働移動の促進や生産性向上へのインセンティブとして、労働者の教育訓練や能力開発の必要性が叫ばれています。特にここ最近で注目されているのが、「キャリアコンサルタント」によるキャリアコンサルティング等を体系的・定期的に行う「セルフ・キャリアドック」という取り組みです。
この取り組みの概要を明らかにするとともに、制度化にあたり活用できる助成金についてご紹介します。
目次
「セルフ・キャリアドック」とは、企業の人材育成ビジョンに基づいて、社員の主体的なキャリア形成を促進し、支援することを目的とした、定期的かつ体系的なキャリアコンサルティングの実施等からなる総合的な取り組みをいいます。セルフ・キャリアドックの導入によって、以下のようなメリットが挙げられます。
人材開発支援助成金(制度導入助成)は、事業主・事業主団体等が継続して人材育成に取り組むため、所定の人材育成制度を新たに導入し、その制度に基づいて被保険者に実施した場合に一定額が助成されます。
助成額は47.5万円とされており、生産性要件を満たす場合は60万円となります。また、受給するには一定の条件を満たす必要があり、以下のいずれかに該当する事業主・事業主団体等は、助成金の受給はできません。
※詳細および最新の要件は厚生労働省の「人材開発支援助成金(特定訓練コース、一般訓練コース、教育訓練休暇付与コース、特別育成訓練コース)」を確認してください。
セルフ・キャリアドックの制度導入は以下の手順で進めます。
セルフ・キャリアドック制度を規定した就業規則または労働協約の案である、「セルフ・キャリアドック実施計画書」を作成しましょう(この制度はキャリアコンサルタントと共同して作成する必要があります)
セルフ・キャリアドック制度を盛り込んだ制度導入と適用計画届を労働局(一部ハローワーク)へ提出します
管轄労働局長によって、制度導入と適用計画届の認定がなされます
セルフ・キャリアドック制度を規定した就業規則または労働協約の届出と締結後、当該就業規則または労働協約およびセルフ・キャリアドック実施計画書を労働者へ周知させる必要があります
キャリアコンサルタントによる実施計画書に基づいたキャリアコンサルティングの実施が始まります。それに伴い、キャリアコンサルティングに基づき労働者がジョブ・カード作成を開始します
なお、支給申請期間も決められており、最低適用人数を満たす者の制度を実施した翌日から起算します。そして、6ヶ月間経過した日から2ヶ月以内に申請をします。(2017年4月24日時点)
次に、制度適用までの流れは以下のようになります。
キャリアコンサルティングを実施する前に、これまでの職業経験や学習・訓練歴などを振り返って、将来に向けた希望や目標などを考えながらジョブ・カードに必要な事項を記入します
労働者の作成したジョブ・カードを活用しながら行います
キャリアコンサルタントが、ジョブ・カードのキャリア・プランシートに必要なコメント等を記入します。ジョブ・カードの記入が終わり、労働者に返却をしたら最終的に労働者がジョブ・カードを完成させます
このジョブ・カードは労働者本人が管理するものであり、キャリアコンサルタントがコピーを保管する、企業の人事担当者などにジョブ・ カードを渡す、見せることなどはできません。
キャリアコンサルティングの実施は以下のような流れで行い、労働者をサポートします。
労働者の興味、適性、能力などを明確化と職務経験の棚卸しなどをします
職務を遂行するのに必要と思われる職業能力や、キャリア・ルートの情報提供を行います
啓発的体験に必要な情報提供などを行います
労働者に対して、目標設定とキャリア・プランの作成支援などを行います
労働者の仕事および能力開発の進捗状況を把握し、必要な情報提供などをします
そして、コンサルティングを実施する時機としては、以下のように効果的な時機で検討することがすすめられています。
キャリア開発の支援のための新しい取り組み、「セルフ・キャリアドック」について、ご紹介しました。実施することで助成金が支給されるというのも、企業としては見逃せません。
そして、キャリアコンサルティング等を組織内で体系的・定期的に行うことにより、労働者が働きやすくなり、仕事の効率もあがります。労働者のキャリア向上、意欲の向上にもつながっていくことでしょう。
社会保険労務士事務所 そやま保育経営パートナー 代表社会保険労務士:
楚山 和司(そやま かずし) 千葉県出身
株式会社日本保育サービス 入社・転籍
株式会社JPホールディングス<東証一部上場> 退職
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