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特定求職者雇用開発助成金の申請方法・注意点を解説

特定求職者雇用開発助成金とは?申請方法・注意点を解説

監修者:蓑田 真吾 みのだ社会保険労務士事務所
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この記事でわかること・結論

  • 特定求職者雇用開発助成金とは雇用支援給付金
  • 対象は高齢者や障害者等の就職困難者
  • 助成金申請にはハローワーク等の紹介が必要

ハローワーク等の紹介により、継続雇用労働者として従業員を雇い入れた事業主が受給できる給付金があります。

生産人口が減る日本において、高齢者や女性の社会進出に加え、通常の雇用が困難となる対象者を積極的に雇用することは大切です。

今回は、通常な雇用が困難な対象者を雇用した場合に支給される、特定求職者雇用開発助成金について解説します。

特定求職者雇用開発助成金とは

特定求職者雇用開発助成金とは、高年齢者や発達障害者・難治性疾患患者など通常の雇用が難しいといわれている方を雇用した事業主に対して、支給される給付金です。

2024年1月現在、特定求職者雇用開発助成金は5つのコースで構成されており、各コースは対象者や期間によって助成される金額も異なります。

特定求職者雇用開発助成金のコース

  • 特定就職困難者コース
  • 発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース
  • 就職氷河期世代安定雇用実現コース
  • 生活保護受給者等雇用開発コース
  • 成長分野等人材確保・育成コース

特定求職者雇用開発助成金が適用される事業主は、雇用保険の適用事業主でなければなりません。

支給審査に必要な書類、労働者名簿、賃金台帳、出勤簿など(雇用保険対象の労働者の出勤状況・賃金支払い状況が分かるもの)を整備・保管しており、管轄労働局等の実施調査が求められます。

対象となる事業主 雇用保険の適用事業主
必要書類 審査に必要な書類、労働者名簿賃金台帳出勤簿
その他 管轄労働局等の実施調査が可能

また、特定求職者雇用開発助成金の給付金を受けるためには原則、

  • 公共職業安定所(ハローワーク)
  • 地方運輸局
  • 有料・無料職業紹介事業者

など国の認可を受けている機関からの紹介で採用しなければなりません。

ここからは、各コースについて解説します。
助成金額や助成対象期間は中小企業を対象とした場合です。

特定就職困難者コース

特定就職困難者コースとは、高年齢者や障害者等の就職困難者をハローワーク等の紹介により、継続して雇用する労働者(雇用保険の一般被保険者)として雇い入れる事業主に対して助成されるコースです。主な対象労働者は以下のとおりです。

特定求職者雇用開発助成金の対象労働者

初期費用高年齢者(60歳以上65歳未満)、母子家庭の母等(短時間労働者以外)の場合、1人あたり60万円(助成対象期間は1年)が支給されます。重度障害者等(重度の身体・知的障害者、45歳以上の身体・知的障害者および精神障害者)の場合、1人あたり 240万円(助成対象期間は3年)が支給されます。
対象者 助成金額 助成対象期間
初期費用高年齢者 60万円 1年
母子家庭の母等
重度障害者等 240万円 3年

対象労働者ごとの助成金の詳細は特定就職困難者コースをご確認ください。
短時間労働者とは、一週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者です。

発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース

発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コースとは、発達障害者や難治性疾患患者をハローワーク等の紹介により、継続して雇用する労働者(一般被保険者)として雇い入れる事業主に対して助成されるコースです。

このコースでは、雇入れから約6カ月後にハローワーク職員等により職場訪問がおこなわれます。

短時間労働者の場合、1人あたり80万円が支給されます。短時間労働者以外の場合、1人あたり120万円が支給されます。
いずれも助成対象期間は2年間

就職氷河期世代安定雇用実現コース

就職氷河期世代安定雇用実現コースとは、いわゆる就職氷河期に正規雇用の機会を逃したこと等により、十分なキャリア形成がなされず、正規雇用に就くことが困難な場合にハローワーク等の紹介により、正規雇用労働者として雇い入れる事業主に対して助成されるコースです。

4つの要件を満たし、ハローワークまたは民間の職業紹介事業者などの紹介により正規雇用労働者として雇用した場合、1人あたり60万円が支給されます。
支給対象期間は1年
対象者の4つの要件
  • 雇入れ日時点の満年齢が35歳以上55歳未満
  • 雇入れ日の前日から起算して過去5年間に正規雇用労働者として雇用された期間を通算した期間が1年以下であり、雇入れ日の前日から起算して過去1年間に正規雇用労働者として雇用されたことがない方
  • ハローワークなどの紹介の時点で失業しているまたは非正規雇用労働者であるかつ、ハローワークなどにおいて、個別支援等の就労に向けた支援を受けている方
  • 正規雇用労働者として雇用されることを希望している方

生活保護受給者等雇用開発コース

生活保護受給者等雇用開発コースとは、ハローワークまたは地方公共団体において、通算して3カ月を超えて支援を受けている生活保護受給者や生活困窮者を、ハローワーク等の紹介により、継続して雇用する労働者(雇用保険の一般被保険者)として雇い入れる事業主に対して助成されるコースです。

短時間労働者の場合、1人あたり40万円が支給されます。短時間労働者以外の場合、1人あたり60万円が支給されます。
いずれも助成対象期間は1年間

支給されるためには、ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等からの紹介であり、雇用保険一般被保険者、また継続して雇用することが確実であると認められることが必要です。

成長分野等人材確保・育成コース

成長分野等人材確保・育成コースでは、成長分野と人材育成の2つの助成メニューがあります。

成長分野では、障害者や高年齢者等の就職困難者をハローワーク等の紹介により雇い、成長分野の業務に従事させる場合に助成金が支給されます。成長分野の業務とは、ソフトウェア開発技術者や研究者、プログラマーなどです。

人材育成では、未経験の就職困難者をハローワーク等の紹介により雇い、人材開発支援助成金による人材育成をおこなったのちに賃上げを行った場合、助成金が支給されます。

廃止された特定求職者雇用開発助成金のコース

特定求職者雇用開発助成金のなかには、すでに廃止されたコースもあります。助成金の概要の変更には注意をしましょう。

生涯現役コース

生涯現役コースとは、雇入れ日の満年齢が65歳以上の離職者をハローワーク等の紹介により、一年以上継続して雇用することが確実な労働者(雇用保険の高年齢被保険者)として雇い入れる事業主に対して助成されるコースでした。

短時間労働者の場合は1人あたり50万円、短時間労働者以外の場合は1人あたり70万円が支給されていました。いずれも助成対象期間は1年間でした。

そんな生涯現役コースは、2022年度末に廃止。2023年から対象となっていた65歳以上の労働者の方は「特定就職困難者コース」の対象となります。

被災者雇用開発コース

被災者雇用開発コースとは、2011年5月2日以降、東日本大震災による被災離職者や被災地求職者をハローワーク等の紹介により、1週間の所定労働時間が20時間以上の労働者として雇い入れる事業主(1年以上継続して雇用することが確実な場合に限る)に対して助成されていました。
対象者を10人以上雇い入れ、1年以上継続して雇用した場合には助成金の上乗せ

短時間労働者の場合は1人あたり40万円、短時間労働者以外の場合は1人あたり60万円が支給されていました。いずれも助成対象期間は1年間でした。

被災者雇用開発コースも2022年度末をもって廃止となりました。

特定求職者雇用開発助成金の申請から支給までの流れ

特定求職者雇用開発助成金の申請は、各コースの支給要件(対象者の要件を含む)を満たし、以下の手続きをおこないます。

特定求職者雇用開発助成金の申請から支給までの流れ

各コースともに申請手続きから支給までの流れは同じです。コースによって、立ち入り調査がある場合があります。詳細は厚生労働省で公開されている事業主の方のための雇用関係助成金をご確認ください。

特定求職者雇用開発助成金の注意点と助成金併用について

特定求職者雇用開発助成金の注意点と助成金併用について

特定求職者雇用開発助成金は、6カ月間の支給対象期間を経過した翌日からの申請となります。
また、申請期間は2カ月間となっており、1日でも過ぎると申請ができません。

助成金支給までの間、人件費の確保が必要です。

特定求職者雇用開発助成金のコースによっては、トライアル雇用助成金との併用が可能です。
併用の要件や助成金額の変更は、事業主の方のための雇用関係助成金の各コースをご確認ください。

まとめ

特定求職者雇用開発助成金は、中小企業への助成金額が多く設定されています。
大企業に比べて、人材が不足しがちな中小企業にとって、人材の確保の機会にもなる助成金のひとつです。

また、特定の求職者を積極的に採用することで、社会的意義を果たし、企業価値の向上にもつながりますので、積極的に活用しましょう。

なお、助成金の要件等については毎年変更がおこなわれることが多く、必ず最新の要件を確認したうえで申請するように注意しましょう。

みのだ社会保険労務士事務所 監修者蓑田 真吾

1984年生まれ。社会保険労務士。
都内医療機関において、約13年間人事労務部門において労働問題の相談(病院側・労働者側双方)や社会保険に関する相談を担ってきた。対応した医療従事者の数は1,000名以上。独立後は年金・医療保険に関する問題や労働法・働き方改革に関する実務相談を多く取り扱い、書籍や雑誌への寄稿を通して、多方面で講演・執筆活動中。
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