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PayPayで給与デジタル払いが開始!導入したい企業がすべき手続きを解説

PayPayで給与デジタル払いが開始!導入したい企業がすべき手続きを解説

監修者:労務SEARCH 編集部
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この記事でわかること・結論

  • 2024年5月より給与のデジタル払いが解禁された
  • 現時点で厚生労働大臣の指定を受けたのはPayPayのみ。PayPayでは、2024年内に全ユーザーを対象に給与デジタル払いサービスを開始予定
  • 楽天ペイやau PAYなどの3社が審査中と言われているため、今後、指定資金移動業者は増える見込み

労働基準法の改正により、2024年5月1日から給与のデジタル払いが解禁されました。しかし現時点で厚生労働大臣の指定を受けたのは「PayPay」のみであり、PayPayでも一般ユーザーへのサービス提供開始はまだされておらず、いまだデジタル払いが浸透しているとは言えない状況です。

では、PayPay以外のサービスで給与のデジタル払いはできないのでしょうか?この記事では、給与デジタル払いのポイントやデジタル払いで使えるサービス、給与をデジタル払いで受け取るメリット、さらに給与デジタル払いを導入したい企業がすべき手続きなどを解説します。
この記事は、2024年8月時点の情報です。

給与のデジタル払いが解禁!

2024年5月1日から、給与のデジタル払い(賃金のデジタル払い)が解禁されました。

給与のデジタル払いとは

厚生労働大臣が指定した資金移動業者(○○Payなど)にデジタルマネーを送金する方法で給与を支払うこと。

給与は現金払いが原則ですが、労働者が同意した場合は銀行口座や証券総合口座への振込が認められていました。しかし近年のキャッシュレス決済の普及や送金手段の多様化のニーズに対応するために労働基準法が改正され、今回新たに「デジタル払い」という給与の支払い・受け取り方法が追加されました。

【最新】給与デジタル払いができるサービス

給与デジタル払い事業ができるのは、厚生労働大臣に認可を受けた資金移動業者のみです。現時点で認可を取得したのは、PayPayのみとなっています。

現金化できないポイントや仮想通貨はNG

ポイントや仮想通貨、Suicaなどの交通系電子マネー、nanacoのような流通系電子マネーは現金化できないため、これらを使っての給与の支払いは認められません。

対して、○○Payなど現金化できるものは、厚生労働大臣の指定を受けることができれば給与デジタル払い事業が可能です。現在「楽天ペイ」と「au PAY」、そしてリクルートMUFGビジネスの「COIN+」が審査中と言われているため、今後資金移動業者の選択肢は広がるでしょう。

主なサービス 給与のデジタル払い
資金移動業者 ・PayPay
・楽天ペイ
・au PAY
・LINE PAY
・ゆうちょPay

厚生労働大臣の認可を取得した場合
交通系
電子マネー
・PASMO
・Suica
・ICOCA
・TOICA
・manaca
・SUGOCA
・nimoca
流通系
電子マネー
・WAON
・nanaco
・QUICPay

【2024年最新】PayPayのみで給与デジタル払いが開始

PayPay給与受取

PayPayは2024年8月、給与をデジタルマネーで支払う事業に関する国の認可を受けました。まずは、ソフトバンクグループ10社の希望した従業員を対象に、2024年9月の給与からデジタル払いが始まります。

一般ユーザーは2024年内に申し込み開始予定

一般ユーザーに関しては、2024年内にすべての利用者が申し込み可能になる予定です。申し込みにあたり、企業がPayPayとのサービス利用契約などをする必要はありません。給与のデジタル払いに対応した企業の従業員は、毎月上限20万円の給与をPayPayアカウントに直接チャージすることができます。

PayPayで給与を受け取るメリット

給与をPayPayで受け取った場合、以下のようなことができるようになります。

PayPay給与受取で主にできること
  • 支払いや送金にそのまま使える
  • 銀行口座や他のPayPayアカウントなどに自動で振り分けられる
  • 自分の銀行口座へ送金も可能。PayPay銀行宛の場合は送金手数料が無料
  • PayPay資産運用にも利用できる

まず最も大きな特徴としては、給与をPayPayマネー(給与)として受け取り、支払いや送金にそのまま使える点です。日頃から現金よりPayPayを利用している方にとっては、銀行口座に入った給与をPayPayアカウントにチャージする手間が削減されるため、利便性が向上するでしょう。

次に、毎月1回指定日にPayPay残高を送れる「おまかせ振分」機能も追加されました。この機能を利用することで、指定した銀行口座や他のPayPayアカウントに自動で振り分けられるため、公共料金や家賃の支払い、家族への仕送りなどを自動化できます。

また、本人名義の銀行口座に送金することも可能です。月に1回までは送金手数料がかからず、2回目以降は1回につき100円の手数料が発生します。ただし、PayPay銀行宛の送金であれば、送金手数料は無料になります。そのほか、受け取った給与はPayPay資産運用などにそのまま利用することも可能です。つみたて設定をしておけば、給与を自分で移動することなくつみたて投資に回すことができます。

PayPay給与受取の注意点

PayPayアカウントで保有できる残高(給与)の上限額は20万円です。上限額を超過した場合は、従業員が事前にPayPayへ登録した本人名義の銀行口座へ、PayPayが自動で送金する仕組みとなっています。そのため、企業が給与の支払い先を振り分ける手間はありません。

給与デジタル払いの3つのポイント

企業は給与デジタル払いを導入する前に、従業員は給与デジタル払いを希望する前に、以下の3つのポイントを押さえておきましょう。

給与デジタル払いのポイント
  • 預金ではなく支払いや送金のため
  • 口座の上限額は100万円以下
  • ATMなどで引き出して現金化できる(月1回まで手数料無料)

預金ではなく支払いや送金のため

給与を指定資金移動業者口座で受け取るのは、預金をするためではなく、支払いや送金に用いるためです。先述したとおり、現在国内で唯一指定資金移動業者として認められているPayPayでは、保有できる給与の上限を20万円としています。

2つの口座で給与を受け取ることも可能

労働者が給与を受け取る際は、給与の一部だけ(支払いなどに使う額だけ)を指定資金移動業者の口座で受け取り、残りの給与は銀行口座で受け取るといった方法も可能です。

口座の上限額は100万円以下

口座の上限額は100万円以下に設定されています。上限額を超過した分は、事前に労働者が指定した銀行口座などに自動出金されます。なお、このときかかる手数料は労働者負担となる可能性があるため、事前によく確認をしましょう。

ATMなどで引き出して現金化できる(月1回まで手数料無料)

デジタル払いされた給与は、ATMや銀行口座などで引き出すことで現金化もできます。このときかかる手数料は、毎月1回まで無料です。

給与デジタル払いを導入したい企業がすべき手続き

給与のデジタル払いに関して、すでに数百の事業者から導入に向けた問い合わせがあるようです。導入したい企業は以下の流れで手続きを進めましょう。

給与のデジタル払いを導入する流れ

  1. 指定資金移動業者の確認
  2. 導入する指定資金移動業者のサービスの決定
  3. 労使協定の締結
  4. 必要に応じて就業規則、給与規程などの改定
  5. 労働者への説明
  6. 個別で労働者の同意取得
  7. 給与支払いの事務処理の確認・実施

導入する指定資金移動業者のサービスの選び方

指定資金移動業者は今後増えていく可能性があります。そのとき、どの業者のサービスを導入するか比較検討する際は、以下のポイントをチェックしましょう。

指定資金移動業者のチェックポイント
  • 口座残高上限の設定金額
  • 1日あたりの払い出し(現金化)上限の設定金額
  • 労働者や雇用主の手数料負担の有無と金額
  • 指定資金移動業者との契約締結の要否

実際にどの業者のサービスを利用するかは、労働者のニーズを踏まえて検討することが大切です。なお、複数の指定資金移動業者を選ぶことも可能です。

労使協定で締結する内容/労働者に説明する内容

給与のデジタル払いを導入する場合、雇用主と労働者間で労使協定の締結が必須です。労使協定には下記の事項を記載します。

労使協定で締結する内容
  • 対象となる労働者の範囲
  • 対象となる賃金の範囲とその金額
  • 取り扱い指定資金移動業者の範囲
  • 実施開始時期

弊サイトでは、上記の記載事項をおさえた労使協定書の無料テンプレートを公開しています。必要な方は下記からダウンロードの上、ご自由にご活用ください。

賃金の支払方法に関する労使協定書

労使協定書テンプレートを無料ダウンロードする>>

労使協定を締結できたら、社内の就業規則や給与規程などの改定が必要かどうかについても確認しましょう。また労使協定を締結した上で企業は以下の事項を従業員に説明し、従業員一人ひとりの同意を得る必要があります。

労働者に説明する内容
  • 口座残高の上限は100万円
  • 1円単位で指定資金移動業者口座に給与を受け取れる
  • 1円単位でATMや銀行口座などで引き出せる(現金化ができる)
  • 少なくとも10年間は口座残高の払い戻しができる
  • 不正取引(心当たりのない出金など)が起きた場合
  • 指定資金移動業者が破綻した場合

給与のデジタル払いを強制することはできない

給与のデジタル払いは、あくまでも給与の支払い・受け取り方法のひとつであり、たとえ導入を開始した企業でも、すべての労働者の給与受け取り方法を指定資金移動業者口座に変更する必要はありません

給与のデジタル払いは労働者が希望した場合のみ

給与のデジタル払いを導入する企業は、労働者が希望する場合は労使協定を締結のうえ、同意を取得する、労働者が希望しない場合は、これまでどおり銀行口座などで給与を支払うようにします。

万が一、企業が給与のデジタル払いを強制した場合や労働者本人の同意を得なかった場合、労働基準法違法となり、罰則の対象となる可能性があります。

なお、同意は書面でなく電磁的記録によることも可能です。また、同意を得る際に、給与のデジタル払いをおこなう口座に賃金を振り込むために必要な情報(受け取り希望額や指定代替口座など)も取得しましょう。

こちらの同意書に関しても、無料テンプレートを公開中です。またこのテンプレートには、従業員に説明しなければならない留意事項も記載していますので、給与のデジタル払いを導入する際に、ぜひご活用ください。

同意書テンプレートを無料ダウンロードする>>

給与支払いの事務処理の確認事項

実際に給与のデジタル払いの実務をおこなう前には、以下のポイントを確認しましょう。

確認すべき内容
  • 支払い方法
  • 所定の給与支払日に向けた雇用主の事務処理の期限

まず支払い方法については、雇用主の資金移動アカウントを作成し、そこから労働者のアカウントに支払うのか、それとも現行の銀行振込と同様の手続き・手順を踏むのかなど、指定資金移動業者によって異なる可能性があります。

例:PayPayでの支払い方法

PayPayでは、PayPayがユーザーへ設定している「給与受取口座への入金用口座番号(銀行口座番号)」を宛先として企業が銀行振込で給与を支払うことで、PayPay給与受取が実現します。

また、所定の給与支払い日に給与を支払っていくために雇用主がおこなうべき事務処理についても、導入する指定資金移動業者によって異なりうるため、各業者のサービス内容をよく確認しておきましょう。

まとめ

給与のデジタル払いは、厚生労働大臣に指定された資金移動業者を通じておこなわれます。労働者は給与をデジタルマネーで受け取り、そのまま支払いや送金に利用することができ、現金化も可能です。

企業が給与のデジタル払いを導入する際は、従業員との労使協定の締結やデジタル払いの説明、そして個別で同意を取得しなければなりません。導入するメリットとしては、働き方が多様化するなかで、給与の支払い方法も従業員のニーズに対応していくことで、企業のイメージ向上につながるでしょう。

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監修者労務SEARCH 編集部

労務・人事・総務管理者の課題を解決するメディア「労務SEARCH(サーチ)」の編集部です。労働保険(労災保険/雇用保険)、社会保険、人事労務管理、マイナンバーなど皆様へ価値ある情報を発信続けてまいります。
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