この記事でわかること・結論
- GW明けに退職者が増える心理的・環境的な背景と構造
- 見逃しやすい退職サインと人事担当者が取るべき具体的な対応策
- GW明け退職を防ぐための日常的な組織づくりのアプローチ

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ニュースこの記事でわかること・結論
ゴールデンウィーク(GW)明けは、毎年のように退職者が増える時期として人事担当者の間で広く知られています。しかしその退職は決して「突然」ではなく、4月の環境変化や長期連休中の内省という積み重ねの末に生まれています。
また、「辞めたい」と言われてからでは遅い場面も多く、GW前にこそ打てる先手アクションや、退職面談を組織改善に活かす視点についても取り上げます。
従業員が「辞めたいと言えない組織」の危うさを理解し、日常的なエンゲージメント施策に落とし込むためのヒントを、人事・労務担当者向けにわかりやすくまとめました。GW明けの離職増加は避けられない宿命ではなく、準備と関係構築によって確実に軽減できます。
本記事では、GW明け退職が起こる心理的・社会的なメカニズムを整理したうえで、退職を決意するまでの典型的な心理の流れや、見逃されがちな事前のサインを具体的に解説します。
目次
毎年ゴールデンウィーク(GW)が明けると、人事部門では退職届の提出や退職相談が増える傾向が見られます。この現象は一部の企業だけに起きるものではなく、業種・規模を問わず繰り返されており、「GW明け退職」として人事・労務の現場では広く認識されています。
なぜこの時期に退職者が集中するのか。その背景には、長期休暇がもつ「内省の機会」としての機能と、4月という環境変化が人にもたらす心理的な蓄積、そして転職市場の活性化という複合的な要因があります。
普段の業務が続く日常では、働き方や職場への不満があっても「今は忙しいから」「落ち着いたら考えよう」と先送りにしがちです。しかしGWのような連続した休暇は、仕事から離れて自分の状況を客観的に見つめ直す時間を自然に生みます。
家族や友人と過ごす時間のなかで「自分はなぜこんなに疲弊しているのか」「このまま続けていいのか」という問いが湧きやすくなります。日常に戻ったときの落差がいっそう強く感じられるため、「もう戻りたくない」という気持ちが意思決定に結びつくことも少なくありません。
マイナビの調査(2025年1-3月・転職を考えている正社員対象)では、GW後にモチベーションが低下する原因として「長期休暇中に仕事で疲れていたことに気がつく」が最多回答(19.4%)となっており、休暇が職場の疲弊を可視化するきっかけになっている実態がうかがえます。
マイナビの同調査によると、GW後に仕事のモチベーションが「下がる・やや下がる」と答えた割合は転職を考えている正社員全体で58.8%、なかでも20代は73.5%と最も高い傾向が見られました。新卒・第二新卒など若手従業員の多い職場では、GW前後のフォローを特に意識的におこなうことが重要です。なお同調査では、下がったモチベーションが「戻る」と回答した割合も20代が最多であり、適切なサポートによって回復しやすい年代でもあると考えられます。
新年度が始まる4月は、人事異動・部署移動・上司の交代・業務内容の変化など、多くの環境変化が重なります。新入社員や異動者にとっても、ベテラン社員にとっても、4月はエネルギーを大きく消耗する月です。
多くの人は「まずは新しい環境に慣れよう」と自らを鼓舞し、不満や疲労感をいったん抑え込みます。しかしGWという区切りを迎えると、そこまでの蓄積が一気に意識の表面に浮かび上がります。「4月を乗り越えた安堵感」と「まだこれが続くのかという現実」が重なったとき、退職という選択肢が現実味を帯びてきます。
従来の「五月病」はGW明けに発症するとされてきましたが、近年は研修期間の長期化に伴い、研修終了後に現場配属が始まる6月頃に不調が表面化する「六月病」も増えているとされています。人事担当者はGW明けだけでなく、6〜7月にかけても継続的なフォローアップ体制を整えておくことが求められます。
5月・6月は採用市場が活況を呈しやすい時期とされています。3月・4月の新卒採用活動が一段落した後に中途採用へ動き出す企業が増える傾向があるとされており、求職者にとっては選択肢が広がりやすい時期といわれています。こうした市場環境が、ぼんやりとした不満を具体的な転職行動に変えるきっかけになることがあります
また、SNSやオンラインコミュニティでGW明けに退職・転職報告が増える現象も見られます。退職代行サービスの普及も相まって「辞める」という行動のハードルが以前より下がっており、他者の決断を目にすることで同調行動につながるケースも考えられます。
退職者に「辞める理由」を聞くと、一般的には「一身上の都合」「キャリアアップのため」といった表現が返ってきます。しかし、そのような建前の裏に隠れた本音の退職理由と向き合わなければ、組織的な改善につなげることはできません。
厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要」によると、転職入職者が前職を辞めた理由として「その他の個人的理由」が大きな割合を占めており、この中には職場の人間関係・評価への不満・労働環境の問題など、多様な本音が含まれていると考えられます。
退職理由として届け出られる内容と、本音のあいだには大きなギャップがあることが多いです。退職者が本音を話せない背景には、「正直に言うと波風が立つ」「どうせ変わらない」「残る人たちへの気遣い」といった心理が働いています。
また、マイナビの同調査では五月病が原因で転職したことがある人の理由として「人間関係」に関する回答が最多を占めており、日常的に言い出しにくい対人ストレスが退職の背景に潜んでいるケースも多いと考えられます。人事担当者は表面上の理由だけでなく、退職面談での関係構築を通じて本音に近い声を引き出す姿勢が求められます。
| 建前(届け出の理由) | 本音(実際の動機) |
|---|---|
| キャリアアップのため | 現職での成長実感がなく、評価されていないと感じている |
| 一身上の都合 | 上司・同僚との人間関係に限界を感じている |
| 健康上の理由 | 過重労働や職場環境によるストレスが限界に達している |
| 家庭の事情 | 残業・休日出勤が多く、生活とのバランスが取れなくなった |
| 他にやりたいことができた | 現職への将来的な展望が描けず、閉塞感を感じている |
退職はある日突然決意されるわけではなく、段階的な心理プロセスをたどるのが一般的です。GW明け退職の場合、おおむね以下のような流れをたどることが多いと考えられます。このプロセスを理解することで、人事担当者は「どの段階で関与できるか」を考えやすくなります。特に段階1〜2の時期、つまりGW前が最も重要な介入ポイントです。
GW明け退職にいたる心理の流れ
退職を考えている従業員は、多くの場合その意思を表に出さないまま日々の業務をこなしています。しかし、よく観察すると行動・業務・コミュニケーションの各面に変化のサインが現れていることがあります。GW前の時期に意識して確認したいポイントを整理します。
業務面での変化は、退職を検討している従業員が最初に見せる兆候のひとつです。特に「これまで熱心だったのに急に変わった」という変化に着目することが重要で、以前との比較が有効なサインの発見につながります。
コミュニケーション面の変化は、業務面のサインと組み合わさって現れることが多いです。特に「将来の話をしなくなった」という変化は、職場への心理的な距離が開いているサインとして注目に値します。複数のサインが重なっている場合は、早めに1on1などの対話の場を設けることが重要です。
上記のサインはあくまで参考指標です。もともと寡黙な従業員、繁忙期に伴う疲労、プライベートの事情など、退職意思と無関係の理由で同様の変化が現れる場合もあります。サインの有無だけで判断するのではなく、1on1面談など対話の機会を定期的に設けることが、正確な状況把握につながります。
GW明けの退職増加を「毎年のことだから仕方ない」と受け流すのではなく、GW前という特定の時期を意識した具体的なアクションを取ることが大切です。ここでは、先手の施策と、退職意思を告げられた後の対応の両面から整理します。
退職を考えはじめる段階(4月の蓄積期)にこそ、人事担当者や管理職が積極的に関与できます。GW明けに退職相談が増えてから動き始めるのでは遅く、GW前の3〜4月に積極的に働きかけることが重要です。
マイナビの調査でも、五月病による退職抑制に取り組んでいる企業の多くが「面談」や「懇親会」など日常的なコミュニケーション施策を実施していると回答しており、特定の時期だけでなく普段からの関係づくりが有効であることが示唆されています。
以下のアクションをGW前に実施しておくことで、退職意思の形成そのものを抑制する効果が期待できます。
4月の環境変化に伴う業務状況・心理的負荷を把握するため、GW前に上司との1on1面談を設ける機会を増やします。業務の進捗確認だけでなく「最近どうですか」という気軽な問いかけが、早期の不満把握につながります。
4月に部署移動や新配属があった従業員は、環境変化への適応に多くのエネルギーを使っています。配属後1カ月のタイミングで個別のフォローアップをおこない、「困っていることはないか」を丁寧に確認することが大切です。
「頑張りが認められていない」という感覚が退職動機の一因になります。4月の業務ぶりに対して適切なポジティブフィードバックをGW前に届けることで、従業員が「この会社にいる意味」を再確認するきっかけになります。
退職の意思を告げられた際、管理職や人事担当者の反応が組織への最後の印象を決定します。引き留めを急ぐあまり逆効果になるケースも多く、対応の仕方によって残る社員への組織的な信頼度が大きく変わります。
退職意思が固まっている従業員を無理に引き留めることは双方にとって消耗を生むため、誠実な対話と適切な退職プロセスの支援を優先することが大切です。
| NG対応 | 正しいアプローチ |
|---|---|
| 感情的に引き留める・責める | まず話を最後まで聞き、気持ちを受け止める |
| 「裏切り者」的な空気を作る | 退職の決断を尊重し、感謝と敬意を示す |
| 即答で給与・待遇改善を提示する | 退職理由を丁寧に聞いたうえで、改善できる点を誠実に伝える |
| 「もう少し考えてほしい」と曖昧に引き留める | 意思が固い場合は円滑な退職手続きをサポートする方向に切り替える |
| 退職の話を本人の同意なく周囲に広める | プライバシーに配慮し、本人の同意を得てから関係者に共有する |
退職面談(エグジットインタビュー)は、在職中には聞きにくかった職場の実態を把握できる貴重な機会です。しかし多くの組織では、退職手続きの一環として形式的に実施されるにとどまっています。
退職面談で得た声を個人情報に配慮したうえで記録・分類し、人事部門として定期的に傾向を分析することで、「上司との関係」「評価への不満」「業務量の偏り」といった組織課題の早期発見につながります。面談内容をもとに制度・環境の改善サイクルを回すことで、退職面談は「終わりの儀式」ではなく「組織を変える起点」になり得ます。
GW明けの離職増加は、対症療法的な引き留めで解決できるものではありません。根本には、従業員が職場に対して感じるエンゲージメント(仕事への意欲・組織への愛着・貢献意欲)の高低が関係しています。GW明けを特別視するよりも、日常的な組織の健全性を高めることが、中長期的な離職抑制につながります。
職場に対して不満や違和感をもっていても、それを言葉にできない環境は一見「安定している」ように見えます。しかし実際には、不満が静かに蓄積し、ある日突然の退職につながりやすい状態です。「退職相談がゼロ」は決して健全のサインではなく、「言っても無駄」「言いにくい雰囲気がある」と感じているために相談が起きていない可能性があります。
従業員が不満を安全に表明できる組織は、問題の早期発見と改善サイクルが機能しやすくなり、心理的安全性の高い職場環境は全体的なエンゲージメント向上にも結びつきやすいと考えられます。
相談がない職場が必ずしも満足度が高いとは限りません。特にGW前後は、定期的な従業員アンケートや1on1の活用で意見が出やすい環境をつくることが重要です。問題が表面化する前に把握する仕組みが、GW明け退職の防止に直結します。
従業員のエンゲージメントを高めるためには、大きな制度変更よりも「日常のコミュニケーションと承認の積み重ね」が効果を発揮することが多いです。マイナビの調査でも、五月病による退職抑制に取り組む企業の多くが「日常的な面談」や「コミュニケーション機会の創出」を対策として挙げており、特定時期だけの対応ではなく継続的な関係構築の重要性が示唆されています。
「GW明けに備えて4月だけ強化する」という発想よりも、「普段から従業員の声が届く組織をつくる」という姿勢こそが離職リスクの中長期的な低減につながります。
GW明けの退職増加は、4月の環境変化の蓄積・長期休暇による内省・転職市場の活性化という複合的な要因が重なった結果です。退職届が出された瞬間から見れば「突然」に見えても、その背景には数週間〜数カ月にわたる心理的プロセスが存在しています。
人事担当者として大切なのは、退職を防ごうとすること以上に、従業員が職場の課題を安全に言える環境を日常的に整えることです。1on1の定着・承認文化の醸成・退職面談の組織的活用といった取り組みの積み重ねが、GW明けを含めた離職リスクの低減につながります。
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