この記事でわかること・結論
- ESG投資とは社会に貢献しながら利益を目指す投資方法
- ESGは環境、社会、ガバナンスの観点から企業を評価する基準
- 投資先選定には7つの手法があり、社会貢献と市場拡大が期待できる
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人材・組織この記事でわかること・結論
近年ではESG投資が盛んにおこなわれています。一般的に投資は財務状況などを踏まえて「利益を得られるか」に注目しますが、ESG投資は「ESGの観点から社会に貢献しているか」を踏まえた投資です。新しい投資として注目されているものの、具体的に理解できていない方のために、ESG投資の基本知識について解説します。
目次
ESG投資といわれても、具体的にどのような投資であるのかイメージできない人は多いかもしれません。そもそも、ESGがどのような考え方であるのか理解できない人もいるでしょう。まずは、ESGとはどのような概念であるのかについて解説します。
ESG投資の理解に必要不可欠な「ESG」とは以下の頭文字を取った言葉です。
これから企業が持続可能な成長を続けるために、自社だけではなく、ESGの観点への配慮も必要だという考え方です。世界には温暖化・水不足・人種差別などさまざまな課題が存在しています。企業はこれらの課題を無視した成長を目指すのではなく、課題を解決できるような成長を求められています。
なお、ESGと似たキーワードのSDGsは「持続可能な開発目標」を指します。17のゴールと169のターゲットで構成されたもので、ESGはSDGs達成に向けた手段のひとつです。
投資に際して財務情報だけではなく、ESGの視点も取り入れた判断を下すことがESG投資です。一般的な投資では売上高・利益・資金調達の状況・余剰資金・配当など財務諸表のみを踏まえますが、ESG投資では非財務情報も考慮します。
近年は財務諸表だけではなく、ESGに関する取り組み結果が企業の公式サイトなどで公開されています。また、東洋経済新報社やゴメス・コンサルティングなどの企業・Webサイトでも取り組み内容やランキングを確認可能です。
ESG投資が世界的に広がっている背景には、2006年に国連で導入された「責任投資原則」の存在があります。これは金融セクターや機関投資家に対してESGの観点を踏まえて投資することを促したものです。それまでは自分たちの利益を中心に投資していましたが、責任投資原則が導入されてからは状況が変化しています。
日本でも2015年に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が責任投資原則に署名しました。これにより、日本国内でのESG投資が加速され、今のような広がりを見せています。
ESG投資の手法はGlobal Sustainable Investment Allianceが7つ定義しているため、これらについて解説します。
特定の業界、あるいは企業、そしてESG基準に基づくファンドなどを投資の対象から除外する考え方です。具体的に、武器の製造・タバコの販売・ギャンブルの運営などが投資対象から除外されます。
これらは合法的に事業を営んでいる限り、社会的な問題を抱えることはありません。需要と供給があるため、ビジネスとして成り立っていると考えられます。ただ、これらに投資することはESGの考え方に反してしまうため、投資対象からは除外します。
投資するかどうか判断を下すにあたって、今まで利用されていた「財務情報」だけではなく、ESGに関する取り組みを考慮するものです。これらの取り組みは「非財務情報」と呼ばれ、財務情報と組み合わせて総合的に投資するかどうかを判断します。
近年はESGが広がっているため「ESGへ積極的な取り組みをしている企業は、将来的な価値が高まる可能性がある」と考えられています。投資は目先の価値だけではなく、将来的な価値も考慮する必要があるため、ESGインテグレーションは重要な考え方です。
エンゲージメントとは、投資家が投資先に対して建設的な対話を実施することです。企業へ継続的な投資を実施するにあたって、経営層が企業としてESGへの取り組みを続けていくかどうかを確認します。ESGへの取り組みに興味を示さないならば、投資の中断や役員の変更起案を検討しなければなりません。
投資家は保有している株式数などに応じて議決権を保有しています。対話の内容を踏まえてESGの取り組みを決議して、対話が決裂した際は否定的なアプローチをおこなう必要があります。
国連やOECD(経済協力開発機構)は商習慣に関する最低限の基準を定めています。ESG投資ではこのような最低限の基準を満たせていない企業を対象にすべきではありません。そのため、国際規範を満たしているかどうかは、ESG投資にあたって重要な観点です。
もちろん、国際規範は最低限の基準であるため、これを満たしている企業のすべてがESG投資の対象となるとは限りません。国際規範は満たしていても、ESGへの関心がまったくない企業も存在します。あくまでも最低限のスクリーニング条件だと認識してください。
すでにESGへの取り組みをしている企業のなかでも、パフォーマンスに優れた投資先を選択する手法です。一般的には同業種のなかでパフォーマンスを評価して、特にパフォーマンスが秀でている企業に投資します。
多くの企業がESGに取り組んでいると「ESGに積極的かどうか」との観点だけでは投資先を絞り込みできません。投資家としては、より大きなリターンを期待したいため、ESGのパフォーマンスが高く価値の上昇が期待できる投資先を選択します。
サステナビリティに関係する分野へ積極的に投資する手法です。たとえば、水不足の解消・気候変動・食糧難の解決・自然エネルギーなどがサステナブル・テーマ投資に該当します。
多くの企業ではESGに関連する事業を営んでおらず、社会貢献の一環としてESGを考慮している状況です。しかし、世の中には事業内容そのものがESGへの取り組みに該当する場合があります。そのような投資先を積極的に選択する方法です。
社会的な問題解決や発展途上地域の開拓などに絞って投資先を選定する方法です。問題が起きないような取り組みに対しての投資ではなく、問題解決に向けた具体的な行動に対して投資します。
ESG投資は「現時点での問題を解決する活動」か「未来に起こり得る問題を減らす活動」のふたつに大別できます。インパクト/コミュニティ型投資は前者を選択する方法です。
一般的な投資と比較してESG投資にはどのようなメリットがあるのか、3つの観点から説明します。
ESGは持続可能な社会を実現する方法のひとつです。ESG投資はこのような社会の実現に向けて投資することを意味するため、投資を通じた社会貢献ができます。一般的な投資では得にくい効果を生み出せる点でメリットがあります。
ただ、ESGの取り組みは短期間で明確な成果が出るものではなく、中長期的に継続しなければなりません。投資によって社会貢献したい場合も同様で、中長期的な投資が重要となります。
上場企業を中心に多くの企業でESGへ投資する傾向にあり、これが続くとESGの市場全体が拡大すると期待できます。多くの資金が集まることで企業はESGへさらに投資して、最終的には投資家に還元される仕組みです。
また、市場拡大が期待できる理由には、企業が投資する分野が多岐にわたることも挙げられます。ESGはSDGsにも関係が深いため、SDGsの目標へと投資するものだと考えると、達成目標は17種類でターゲットは169個です。すべての目標を達成することは容易ではなく、常に市場拡大が期待できます。
ESG投資は企業などが中長期的に取り組む活動に対して投資する、中長期的な資産形成です。ESGへの取り組みは短期的な結果を出すことが難しく、中長期的に取り組み、徐々に結果を出していきます。投資家もこれを理解し、中長期的に安定した資産形成を目指します。
また、ESGを積極的に意識している企業は、功績が認められ中長期的に企業価値が高まるでしょう。長期的な資産形成では「将来的な企業価値」が重要となりますが、ESG投資の投資先ならば価値の向上が期待できます。
ESG投資とはESGに積極的に取り組む企業などに対して投資する考え方を指します。世界的にESGが重要視され、ESGに取り組む企業などが増えているため、投資家も積極的に投資して支援している状況です。
投資にあたっては7つの方法があり、投資先の選定に利用されます。近年は多くの企業などがESGの取り組みに力を入れているため、ESG投資のメリットなども踏まえて、投資するかどうか考えるといいでしょう。
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