入社した社員に被扶養者がいる場合や、結婚や出産で家族が増えた場合、健康保険では被扶養者の病気やけが、死亡、出産に対しても保険給付が行われるという大きなメリットがあります。
大切な社員のためにも、それらの手続きがスムーズに行われるようにしたいものです。ここでは、「健康保険被扶養者(異動)届」を提出する際に注意したいポイントや、最近普及しつつある社会保険の電子申請について解説します。
被保険者の扶養者になれるのは、被保険者の3親等内の親族で後期高齢者医療制度の被保険者とならない75歳未満の人ですが、その基準は被保険者との関係により違います。
また、対象となる人は年収130万円(60歳以上と障害者は年収180万円)未満で、次の要件も満たす必要があります。
会社はチェックシートなどを作って社員の扶養親族の正しい情報を管理・把握したうえで、被扶養者の健康保険の手続きや国民年金の第3号被保険者となる扶養配偶者に関する届出を間違いなく行わねばなりません。
また、各種手当や源泉徴収税額の変更、控除額の変更や保険料の随時改定の有無などにも注意しましょう。
被扶養家族が増減した場合、被保険者は事業主経由で健康保険被扶養者(異動)届を提出します。扶養配偶者については「国民年金第3号被保険者取得届」に配偶者本人の署名捺印も必要となります。
また、婚姻などで住所が変わる場合、被保険者住所変更届も提出します。以下は、届出の際に添付すべき書類の一覧です。
※所得税法の規定による控除対象配偶者または扶養親族となっている者の場合は、事業主の証明があれば収入証明書の添付を省略できますが、所得税法の改正情報の確認が必要です。
また、被扶養者の削除は以下の場合に行います。
なお、健康保険組合がある場合は独自の被扶養者認定条件があります。上記の書類や条件を必ず確認してください。
今、時代の流れは電子申請による手続きが主流となりつつあります。一足先に始まり既に広く普及している税務署のe-Tax、法務局の登記ねっとをはじめ、社会保険、雇用保険や労働基準監督署への届出なども電子申請で手続きが可能になっています。
以上の詳細については、日本年金機構およびe-Govのサイトに掲載されていますのでご覧ください。
現在、社会保険、雇用保険や労働基準監督署への届出などは郵送や窓口受付なども行われていますが、将来的には電子申請のみとなる日が来るかもしれません。そのため、事業主や担当者は今から電子申請についての理解を深めておきましょう。
最後に、電子申請で労務システムを利用するメリットや、選ぶときのポイントについて説明します。
労務システムのメリットは、入社時に入力した社員情報をデータ化し、登録データから届出に必要な情報を自動で入力してくれる点です。それにより、届出書類の作成や申請を簡略化することができます。
そのことをふまえたうえで、労務システムを選ぶポイントを挙げます。
なかでも担当者が代わってもすぐ簡単に使えることや、マイナンバー制度でますます重要となっているセキュリティ面、そして既存のシステムとの連携ができることは、重要なポイントとなります。
今回は、従業員に扶養家族がいる場合に必要不可欠な届出や扶養の対象となる人の要件に加え、手続きに必要な書類について解説しました。また、近年普及が広がっている電子申請に役立つ労務システムのメリットや選び方についてもご紹介しました。
今は社会保険上の手続きも電子化が進んでいます。専門知識がなくても簡単かつ正確に適切な事務処理ができる労務システムを上手に使い、煩雑な扶養関係の手続きを効率よく行いましょう。
大学卒業後、地方銀行に勤務。融資及び営業の責任者として不動産融資から住宅ローンの審査、資産運用や年金相談まで幅広く相談業務の経験あり。在籍中に1級ファイナンシャル・プランニング技能士及び特定社会保険労務士を取得し、退職後にかじ社会保険労務士事務所として独立。
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