人員配置基準という用語をご存じでしょうか? 医療や介護、福祉等の業界の専門用語で、利用者数に応じて何人の専門職(医師、看護師、介護福祉士等)を配置するかを国で定める制度です。
今回は、特に人手不足とされる介護現場で、人員配置基準を守りながら職場改善を図る取組みを紹介していきます。ほかの業界でも人員配置を考える参考としていただけると幸いです。
夜間の勤務に関しては、一部の従業員にシフトが偏ってしまい、身体的、精神的、業務的な負荷をかけてしまうことが介護現場においては課題となっています。この課題に対して、各施設は改善に取り組んでいく必要がありますが、その際に参考となる改善策をいくつか紹介します。
このように、施設の勤務体系を整え、また職員の希望なども考慮し、バランスのとれた人員配置をすることで、職員1人あたりの身体的、業務的、精神的負担を軽減することができます。介護施設の労務担当者としては、ぜひ、あらためて自身の施設のシフトや人員配置を見直してみてはいかがでしょうか。
介護の仕事は、現場における人員不足が問題となっていて、それに伴い職員1人あたりの負担が増加し、精神的に疲弊してしまったり、バーンアウトになってしまったりする恐れがあります。この課題に対する改善策としては、短時間労働制度の導入や変形労働時間制を導入することなどが挙げられます。
「フルタイムでは働けないけど仕事がしたい」、「子育てをしながら働きたい」といった要望を持っている人もいるので、そういった人たちが働きやすい環境をつくることで、人員を適切に配置することができ、精神的、身体的負担を軽減し、仕事に対する意欲低下を防ぐことが期待できます。
実際に労働時間の短縮を行った以下のような事例もあります。
施設によっても繁忙期や閑散期があるので、そういった時期を考慮しながら柔軟に勤務時間を調整できるようになると、現場での負担軽減につなげていくことができます。
人が相手となる介護の現場においては、一部の職員などに業務が集中してしまうケースがあります。そうなると、その職員に負荷がかかり、意欲低下や離職につながってしまう可能性が高まります。
こういった事態を避けるためにも、適切な人員を配置することが重要となります。たとえば、短時間勤務の職員や派遣職員、外部スタッフなど雇用形態や勤務形態が異なる職員を活用し、正社員と一緒のシフトに入れることで業務の負担を減らすことができます。
実際に職員の配置に関して以下のような事例も見られます。
このように、正社員以外の人材を有効活用することで、現場での負担を軽減することができます。
現場での負担を軽減し、適切なシフト管理を行っていくためには、業務の効率化に取り組むことも非常に重要です。介護にかかわる周辺業務にはどのようなものがあるのかを確認し、必要に応じて職務内容を見直すことで負担軽減につなげていくことが期待できます。
たとえば、これまで紙ベース、手作業で行っていた事務作業などに関して、コンピューターを活用してOA化することで、手間や無駄を省くことができるかもしれません。また、こういった業務を請け負う会社に外注するのも有効です。
外注は費用こそかかりますが、職員の健康や業務効率化、負担軽減を考慮すると有効な選択肢となります。また、必要に応じてボランティアなどを活用するという方法もあります。以下は、実際に業務負担軽減に取り組んだ事例です。
いずれにしても、さまざまな手段を用いて業務効率化を図ることで、より効率的な職員の配置、業務管理を実現することができます。
今回は、介護現場における人員配置に関して事例を用いながら紹介しました。高齢社会が進行している日本において、介護業に対する需要は今後ますます高まっていくことが予想されます。一方で、人員不足による職員の業務負担増加は、現場における重要な課題となっているのも事実です。
介護施設の労務担当職員のみなさんとしては、今回紹介したように、シフト管理や勤務時間、人材活用を必要に応じて柔軟に行うことで、効率的な人員配置を行えるように心がけてみてはいかがでしょうか。
社会保険労務士法人|岡佳伸事務所の代表、開業社会保険労務士として活躍。各種講演会の講師および各種WEB記事執筆。日本経済新聞、女性セブン等に取材記事掲載。2020年12月21日、2021年3月10日にあさイチ(NHK)にも出演。
詳しいプロフィールはこちら