関東ITソフトウェア健康保険組合(IT健保)とは、「社団法人日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会」を母体とする、昭和61年4月に設立された健康保険組合で、協会けんぽに代わって、健康保険に関わる全ての事業を手掛けています。IT業界の会社が多数加入しており、全国有数の規模を誇る健康組合でもあります。
今回は、IT健保の概要や加入メリット、加入条件・手続きを中心に解説します。
目次
関東ITソフトウェア健康組合(以下:IT健保)は、「社団法人日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会」を母体とした総合型健康保険組合です。ソフトウェア産業の飛躍的な発展にともない、加入事業所・被保険者を伸ばしてきました(平成31年1月現在、加入事業所7,000以上、被保険者48万7千人が加入)。
設立以来、協会けんぽ(※1)のかわりに、組合管掌健康保険(※2)として健康保険関連業務全般を行っています。また、保険料の掛け金負担の軽減や付加金給付、契約健診機関・通年保養施設・宿泊施設などの福利厚生も充実しています。
※注1 全国健康保険協会(中小企業の従業員が加入)
※注2 大企業や、同業者による組合が運営する健康保険組合
【参考】関東ITソフトウェア健康保険組合
IT健保への加入メリットには「保険料率」、「手厚い付加金」、「充実した保険事業」の3つが挙げられます。
IT健保は協会けんぽ(全国平均)やTJK(東京都情報サービス産業健康保険組合)よりも低い保険料率で運用されており、毎月の負担(事業主・被保険者)を軽減できます。協会けんぽは都道府県毎に一律で保険料率が設定されていますが、健康保険組合であるITSは、独自で保険料率を低く設定できます。
各保険組合との保険料率の比較 | |||
---|---|---|---|
IT健保 | 協会けんぽ | TJK | |
一般保険料率 | 8.50% | 10.0% | 8.90% |
介護保険料率 | 1.6% | 1.57% | 1.55% |
合計 | 10.1% | 11.57% | 10.45% |
※保険料率は事業主負担・被保険者負担の合算
IT健保 | 協会けんぽ(全国平均) | TJK | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
事業主負担 | 被保険者 負担 |
事業主負担 | 被保険者 負担 |
事業主負担 | 被保険者 負担 |
|
一般保険料率 | 42.5/1000 | 42.5/1000 | 50.0/1000 | 50.0/1000 | 45.5/1000 | 45.5/1000 |
介護保険料率 | 8/1000 | 8/1000 | 7.85/1000 | 7.85/1000 | 77.5/1000 | 77.5/1000 |
【参考】関東ITソフトウェア健康保険組合
【参考】東京都情報サービス産業健康保険組合
IT健保とその他の健康保険と比べても総合的に低い保険料率で運用できることがわかります。
また、上記の保険料率をもとに、平均の標準報酬金額38万円、賞与等が年間72万円の被保険者20人分の年額保険料の総額を算出した場合、
となります。
各保険組合では一般保険料と介護保険料の負担率に差があるため、従業員の年齢構成に応じて、利用する保険組合を検討しましょう。
病気やケガ、出産、死亡に際した場合、「健康保険」では一定の給付が行われます。給付内容には、法律で定められている給付(法定給付)と各健康保険組合が独自で行う給付(付加給付)の2種類があり、各健康保険組合が行う付加給付が付加金にあたります。
付加金は以下の条件で給付されます。
※(カッコ内は付加金の名称)
健康保険組合であるIT健保では、上記の付加金が給付され、給付金額も法定で定められている金額よりも手厚くしています。一方、協会けんぽは健康保険組合ではないため、付加金給付はありません。
IT健保では、被保険者が利用できる契約健診機関と保養・宿泊施設の運営を担う保険事業を手掛けています。
IT健保に加入するためには、加入条件全てを満たさなければいけません。IT健保の加入条件は以下となります。
以上の加入条件を満たしている場合に加入の届出が可能です。
IT健保への加入には、申請に必要な添付書類(以下を参照)を準備しなければいけません。
【参考】ITS 申請に必要な添付書類
【参考】ITS 加入申請書
上記の書類に加え、加入申請書に必要事項を記入のうえ、提出します。
届出後、ITSが被扶養者資格や財務状況などの審査を行います。その後、関東信越厚生局の許可が出れば、IT健保への加入が認められます。届出から加入までの待機期間は約6カ月です。
IT健保は多くの加入メリットがあり、その他の健康組合と比べても保険料率が低く、中小企業やベンチャー企業とって、利用しやすい健康保険でもあります。今後もITソフトウェア関連企業が増え、IT健保の加入メリットも増えると考えられます。
関東甲信地方でIT健保の加入条件をクリアしている事業者は、ぜひ加入を検討してみてください。
社会保険労務士法人|岡佳伸事務所の代表、開業社会保険労務士として活躍。各種講演会の講師および各種WEB記事執筆。日本経済新聞、女性セブン等に取材記事掲載。2020年12月21日、2021年3月10日にあさイチ(NHK)にも出演。
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