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仕事と介護の両立に関するアンケート調査

仕事と介護の両立、85%が負担と回答!企業支援の実態と従業員が求める支援策

監修者:労務SEARCH 編集部
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少子高齢化が急速に進む現代において「仕事と介護の両立」は、多くの働く人々にとって喫緊の課題となっています。親や配偶者の介護に直面し、働きながら介護を続けることに困難を感じている人は少なくありません。

介護を理由とした離職(介護離職)は、個人のキャリアや経済状況に深刻な影響を与えるだけでなく、企業にとっても貴重な人材の損失となり、社会全体としても大きな課題です。

このような背景を踏まえ、労務SEARCH編集部では、仕事と介護の両立に関する実態と意識を把握するため、介護をしながら働いている人を対象にアンケート調査を実施しました。

本記事では、その調査結果を詳細に分析し、仕事と介護の両立における具体的な悩みや課題、企業に求められる支援策、そして介護離職を防ぐために社会全体で取り組むべきことについて深く考察していきます。

目次

仕事と介護の両立における負担感を調査

初めに、介護をしながら働くことに関しての負担感について聞いてみました。

85%以上が仕事と介護の両立に「負担を感じる」

まず、仕事と介護の両立についてどの程度負担を感じているかを聞いてみたところ「やや負担を感じる」が53.6%、「非常に負担を感じる」が31.9%と、あわせて85.5%もの人が何らかの負担を感じていることが明らかになりました。

現在、仕事と介護の両立はどの程度負担に感じますか?

「あまり負担を感じない」(13.0%)、「全く負担を感じない」(1.5%)という回答は少数にとどまり、仕事と介護の両立がいかに多くの人にとって大きなプレッシャーとなっているかがうかがえます。

この高い負担感は、単に時間的な制約だけでなく、精神的、肉体的、そして経済的な側面にも及んでいると考えられます。介護は予測不能な事態が発生しやすく、日々のケアに加え、通院の付き添いや手続き、家族間の調整など、多岐にわたる対応が求められます。これらを仕事と並行しておこなうことは、想像以上に過酷な状況と言えるでしょう。

最も深刻な悩みは「介護による心身の負担が大きい」

次に、仕事と介護を両立するうえでの具体的な悩みについて、最も負担に感じることを一つ選んでもらったところ、第1位は「介護による心身の負担が大きい」で43.5%、第2位は「仕事と介護の時間配分が難しい」で30.4%となりました。

介護と仕事を両立するうえで、どのような悩みがありますか?最も負担に感じることを一つお選びください。

介護は、身体的な介助だけでなく、認知症の方への対応や精神的なサポートなど、精神的な負担も非常に大きいものです。終わりが見えない介護生活のなかで、疲労やストレスが蓄積し、介護者自身の心身の健康が損なわれるケースも少なくありません。また、仕事の時間を確保しながら、介護に必要な時間を捻出することの難しさも、多くの人が抱える共通の悩みであることが示されました。

さらに「介護による経済的な負担が大きい」という回答も一定数あり(10.1%)、介護サービス費用や医療費などが家計を圧迫している状況もうかがえます。

第4位の「代替要員がおらず、介護のために仕事を休めない」、第5位の「介護のためにキャリアを諦める可能性がある」といった結果からは、介護が仕事の継続やキャリア形成に直接的な影響を与えている実態も見えてきます。

介護離職や仕事・働き方への影響を調査

次に、介護が仕事・働き方にどのような影響を与えたのかを調査してみました。

85%以上が介護のために仕事をセーブする必要性を実感

介護のために仕事をセーブする必要を感じたことがありますか?という問いには、介護と仕事の両立の困難さを示すように、85.5%もの人が「ある」と回答しました。

介護のために仕事をセーブする必要を感じたことがありますか?

残業を減らす、責任の重い仕事を避ける、出張を断るなど、何らかの形で仕事に制限を設けざるを得ない状況に置かれている人が大多数であることがわかります。

半数以上が介護離職を考えたことがある

さらに深刻なのは、介護を理由に仕事を辞めることを考えたことはありますか?という質問に対し、56.5%と半数以上の人が「ある」と回答している点です。

介護を理由に仕事を辞めることを考えたことはありますか?

これは、介護離職が決して他人事ではなく、多くの当事者が直面する現実的な選択肢となっていることを示唆しています。仕事を続ける意思があっても、両立の負担や困難さから、離職という選択肢が頭をよぎる状況がいかに多いかがうかがえます。

仕事と介護の両立が困難になったら「介護サービスを増やす」または「時短勤務に変更する」が最多

では、現在働きながら介護をする人が、これ以上仕事と介護の両立を続けるのは難しいと判断した場合、どのような選択をするのでしょうか。

そこで今回のアンケート調査対象者に、仕事と介護の両立がこれ以上困難になった場合、どのような選択をする可能性が高いですか?と聞いてみたところ、回答は分散する結果となりました。

仕事と介護の両立が困難になった場合、どのような選択をする可能性が高いですか?

第1位は「介護サービスを増やす」と「時短勤務に変更する」でそれぞれ23.2%、第3位は僅差で「仕事を辞める」と「転職を考える」がそれぞれ21.7%となっています。労働者が、要介護状態にある対象家族を介護する際には、介護休業を取得できますが「介護休業を利用する」と回答した方は8.7%にとどまりました。

この結果からは、多くの人が休業を最終手段と考えつつも、まずは介護サービスの利用拡大や働き方の調整(時短勤務、転職)によって両立を続けようと模索している様子がうかがえます。

一方で、介護休業の利用意向が低い背景には、休業中の収入減への不安や、復職後のキャリアへの影響、制度自体の利用しにくさなどが考えられます。企業は、介護休業を取得しやすい環境整備や、休業中の経済的支援、スムーズな復職支援などを検討する必要があるでしょう。

約6割が介護が原因で働き方を変えている

次に、介護が原因で働き方を変えたことはありますか?と質問してみました。その結果「特に変更していない」が37.7%と最も多かったものの、約6割の人が何らかの形で働き方を変更した、または「変更したかったができなかった」と回答しています。

介護が原因で働き方を変えたことはありますか?

具体的な変更内容としては「働く時間帯を変えた」が11.6%で最も多く、次いで「雇用形態を変えた(パート・アルバイトなど)」が8.7%、「転職した」および「時短勤務にした」が7.3%、「業務量を減らした」が7.2%となりました。

また「変更したかったができなかった」と回答した人も13.0%おり、希望する働き方の変更が実現できないケースも少なくないことがわかります。

これらの結果は、介護が従業員の働き方に大きな影響を与えていることを明確に示していると言えるでしょう。企業は、従業員が介護状況にあわせて柔軟に働き方を選択できるよう、多様な選択肢を用意し、それを実際に利用しやすい環境を整えることが求められます。

企業のサポートの実態と従業員が求める支援を調査

ここからは、企業がおこなう仕事と介護の両立支援の実態、そして介護をしながら働く従業員が本当に求めている支援について調査してみました。

介護に関する社内制度が「ある」職場は半数以下

最初に、現在の職場には介護に関する社内制度がありますか?と聞いてみたところ「ある」と回答したのは47.8%と半数以下にとどまりました。

現在の職場には、介護に関する社内制度がありますか?

「ない」は34.8%、「わからない」は17.4%と、制度自体が存在しない、または従業員に認知されていない企業も多いことが明らかになりました。

介護に関する社内制度は「やや利用しやすい」が最多

次に、前問で介護に関する社内制度が「ある」と回答した人だけに、その制度を利用しやすいと感じるか聞いてみたところ「ややそう思う」が36.4%、「あまりそう思わない」が33.3%、「とてもそう思う」が21.2%、「全くそう思わない」が9.1%となりました。

前問で「ある」と回答した方にお聞きします。介護に関する社内制度を利用しやすいと感じますか?

程度に差はあるものの、あわせて57.6%の人が介護に関する社内制度を「利用しやすい」と感じている一方、4割以上の人が「利用しにくい」と感じているようです。

社内制度を利用しにくい理由の第1位は「周囲に迷惑をかけると感じるから」

では、職場に介護に関する社内制度があるにもかかわらず、従業員が「利用しにくい」と感じる理由は何なのでしょうか。

そこで前問で「あまりそう思わない」または「全くそう思わない」と回答した人に対し、介護に関する社内制度を利用しにくいと感じる理由について聞いてみたところ、最も多かった回答は「周囲に迷惑をかけると感じるから」(42.9%)でした。

前問で「あまりそう思わない」または「全くそう思わない」と回答した方にお聞きします。介護支援制度を利用しにくいと感じる理由として、あなたの考えに最も近いものを一つお

第2位は「周囲の理解が得られにくいから」で35.7%、第3位は「制度を利用するとキャリアに影響がありそうだから」で14.3%、第4位は「制度の内容がわかりにくいから」で7.1%と続いています。

これらの結果は、企業が仕事と介護の両立支援制度を設けているだけでは不十分であり、従業員が心理的な負担を感じずに制度を利用できるような、職場の雰囲気づくりや意識改革が必要であることを示しています。特に「周囲への迷惑」を気にする意識は根強く『制度利用が特別なことではなく、当たり前の権利である』という認識を広める必要があります。

最も企業に求める仕事と介護の両立支援策は「テレワーク」と「介護休暇の充実」

次に、仕事と介護の両立を支援するために、企業にどのような支援策を求めるか、最もあってほしいと思うものを一つ選んでもらったところ「テレワーク(在宅勤務)制度」と「介護休暇の充実」がそれぞれ24.6%で同率1位となりました。

第3位は「時短勤務制度」で17.4%、第4位は「時間単位の有給休暇取得」で10.1%と続いています。

仕事と介護の両立を支援するために、企業にどのような支援策を求めますか?最もあってほしいと思うものを一つお選びください。

この結果から、場所を選ばずに働けるテレワークや、柔軟な休暇制度(介護休暇、時間単位の有給休暇など)に対するニーズが高いことがわかります。

介護は突発的な対応が必要になることも多いため、時間や場所に縛られない働き方や、必要なときに必要なだけ休みを取れる制度が、仕事と介護の両立の負担軽減に直結するでしょう。

4割以上が上司や同僚の「理解がない」と感じている

職場の上司や同僚の、仕事と介護の両立に関する理解度については「やや理解がある」が40.6%、「あまり理解がない」が36.2%、「とても理解がある」が18.8%、「全く理解がない」が4.4%という結果になりました。

職場の上司や同僚の、仕事と介護の両立に関する理解度についてどのように感じますか?

肯定的な回答も約6割ありますが、「あまり理解がない」と「全く理解がない」の回答をあわせると4割以上の人が職場の理解不足を感じている結果となり、理解促進も課題であることがわかります。

職場への相談のしやすさも課題あり

また、介護が必要になったときに職場にその状況を相談しやすかったかという質問に対しても、「あまりそう思わない」(31.9%)と「全くそう思わない」(13.0%)の回答数をあわせると約45%の人が「相談しにくい」と感じていたことがわかりました。

介護が必要になったとき、職場にその状況を相談しやすかったですか?

職場での理解不足や相談しにくさは、従業員が一人で悩みを抱え込み、孤立感を深める原因となります。これが、介護に関する制度の利用しにくさを高め、最終的に介護離職に繋がる可能性も否定できません。

仕事と介護の両立支援は今後どうすべき?従業員の本音を調査

最後に、今後、企業は仕事と介護の両立支援をどのように充実させるべきかを調査してみました。

2025年4月から育児・介護休業法が改正され、企業には仕事と介護の両立支援の強化が求められています。具体的には、雇用環境の整備、介護に直面した従業員に対する個人周知・意向確認、早い段階での情報提供などが義務づけられましたが、実際にこれらの支援策は介護をしながら働く人に求められているものなのでしょうか。

仕事と介護の両立に関する情報収集は「インターネット」頼り

初めに、介護が必要になったとき、仕事と介護の両立に関する情報をどこから得ましたか?と質問してみました。その結果「インターネット」が34.8%と最も多く、次いで「職場」が23.2%、「家族・知人」が21.7%、「自治体の窓口」が18.8%と続きました。

介護が必要になったとき、仕事と介護の両立に関する情報をどこから得ましたか?

インターネットは手軽に情報を得られる一方で、情報の信頼性を見極める必要もあります。職場からの情報提供も一定の役割を果たしていますが、まだ十分とは言えない状況なようです。

会社からの支援や支援に関する情報提供は「やや不足している」

介護をしながら働くうえで、会社からの支援や支援に関する情報提供は十分だと感じますか?という質問には「やや不足している」が39.1%、「まぁまぁ十分だと思う」が30.4%、「不足している」が20.3%、「十分だと思う」が10.2%という結果になりました。

介護をしながら働くうえで、会社からの支援や支援に関する情報提供は十分だと感じますか?

「やや不足している」と「不足している」をあわせると約6割の人が会社からの情報提供に不満を感じているため、多くの企業はより積極的な情報発信をおこなう必要がありそうです。

従業員が求める介護支援に関する情報提供方法は「上司や人事担当者からの直接の説明」

会社からどのような方法で介護支援に関する情報を受け取りたいかについては、「上司や人事担当者からの直接の説明」が34.8%と最も多く、次に「社内ポータルサイトや社内報」(23.2%)、「メールや社内チャットツール」(20.3%)となりました。

会社が提供する介護支援に関する情報をどのような方法で受け取りたいですか?最もわかりやすいと思うものを一つお選びください。

2025年4月から、介護に直面した旨を申し出た従業員に対して、企業は以下の事項を個別に周知し、制度利用の意向を確認することが義務づけられています。個別周知・意向確認の方法は、面談 (オンライン面談も可能)、書面交付、FAX、電子メールなどが挙げられていますが、今回のアンケート調査結果を参考にすると、面談が望ましいでしょう。
FAX、電子メールは労働者が希望する場合

画一的な情報提供だけでなく、状況に応じた丁寧な説明や相談対応が従業員には求められているようです。

9割以上が40歳前後で仕事と介護の両立に関する情報を「知っていたらよかった」

次に、介護を経験する前の早い段階(40歳前後など)で、仕事と介護の両立に関する情報を知っていたらよかったと感じるか聞いてみたところ「とてもそう思う」が53.6%、「ややそう思う」が37.7%と、実に91.3%もの人が、早期の情報提供の必要性を感じていることがわかりました。

介護を経験する前の早い段階(40歳前後など)で、仕事と介護の両立に関する情報を知っていたらよかったと感じますか?

介護は突然始まることも多く、いざ直面してから情報収集を始めるのでは、精神的にも時間的にも余裕がない場合があります。

早い段階での情報提供が義務化に

そこで2025年4月から、介護に直面する前の従業員(40歳頃)に対し、介護休業や介護両立支援制度などに関する情報提供をおこなうことが義務づけられました。具体的には、従業員が40歳になる日の属する年か、従業員が40歳になった日の翌日から1年間のいずれかに情報提供しなければなりません。

早い段階で介護保険制度や会社の支援制度、相談窓口などについて知っておくことで、いざというときに冷静に対応でき、両立に向けた準備を進めやすくなるでしょう。

介護離職防止策として最も効果的なのは「柔軟な勤務制度」

介護離職を防ぐために企業ができることとして、最も効果的だと思うものを一つ選んでもらったところ「柔軟な勤務制度の推進(時短/フレックス/テレワークなど)」が46.4%と、半数近くの支持を集め圧倒的な結果となりました。

第2位は「介護休業制度や介護休暇制度の充実」で21.7%、第3位は「介護に関する相談窓口の設置・拡充」と「介護のための経済的支援」がそれぞれ7.3%となっています。

介護離職を防ぐために企業ができることとして、最も効果的だと思うものを一つお選びください。

この結果は、仕事と介護を両立するためには、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方が最も重要であると従業員が考えていることを明確に示しています。制度の充実や相談体制の強化も重要ですが、まずは日々の働き方そのものに選択肢をもたせることが、介護離職を防ぐための最も効果的な一手であると従業員は認識しているようです。

まとめ

今回のアンケート調査結果から、仕事と介護の両立はほとんどの人が負担に感じていることが明らかになりました。また、現状、企業の両立支援体制も十分であるとは言えず、介護関連の社内制度がある職場は半数以下にとどまっています。多くの企業では直近の法改正に伴い、雇用環境の整備などを迅速におこなう必要があるでしょう。

仕事と介護の両立支援として、従業員が最も求めているのは「テレワーク」「介護休暇の充実」といった柔軟な勤務制度なようです。さらに、利用しやすい介護に関する相談窓口、制度を利用しやすい職場づくりなども求められています。

仕事と介護の両立は個人の問題ではなく、企業と社会全体で取り組むべき喫緊の課題です。企業は今回のアンケート調査結果を踏まえ、必要な措置を講じ、従業員の仕事と介護の両立をサポートしましょう。

アンケート調査概要

調査名 仕事と介護の両立に関するアンケート
調査対象 介護をしながら働く男女69名
調査期間 2025年2月27日~2025年3月11日
調査方法 インターネット調査
監修者労務SEARCH 編集部

労務・人事・総務管理者の課題を解決するメディア「労務SEARCH(サーチ)」の編集部です。労働保険(労災保険/雇用保険)、社会保険、人事労務管理、マイナンバーなど皆様へ価値ある情報を発信続けてまいります。
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