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収入印紙が必要となるケース

新規事業の開始に必要な契約書とは?契約書のタイプやリスクを低減させる方法をわかりやすく解説

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ポストコロナにおける対応として、事業再構築補助金を活用した新たな事業分野への進出などが増えています。
新規事業を開始するときの契約内容によっては、自社にとって不利になる、トラブルの解決に時間や費用がかかるなどの問題が発生することもあります。
本記事では、新規事業を開始するときに必要な契約書について、契約内容のポイントやリスクを低減する方法などをわかりやすく解説します。

監修者
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新規事業に必要な契約書はさまざま

新規事業に必要な契約書はさまざま

新規事業を開始するときには、取引内容や相手先に応じたさまざまな契約が必要です。
不慣れな新規事業を開始するときは、必要な契約が漏れていないか、新規事業の開始までに契約締結できるかを十分に確認します。

他社のビジネスモデルを自社で新規に始める場合

他社が既におこなっている事業を自社でも新たに始めるときは、主な例として、次の契約が必要です。

契約について

  • 新たに従業員を採用する           → 雇用契約
  • 自社のノウハウの流出を防ぐ         → 秘密保持契約
  • 店舗を借りる                → 賃貸借契約
  • 投資のための資金を借入する         → 金銭消費貸借契約
  • 他社と業務提携する             → 業務提携契約
  • 他社の事業を買収する            → 事業譲渡契約
  • 他社から業務を請け負う           → 請負契約
  • フランチャイズ(FC)で新規事業を開始する  → フランチャイズ契約
  • 他社との取引内容を決める          → 取引基本契約
  • 作業内容を外部に委託する(外注する)    → 業務委託契約

自社が新たに立ち上げるビジネスモデルの場合

自社でまったく新しいビジネスを立ち上げるときは、特殊な契約も必要です。

契約書にかかわるトラブルリスク

契約書にかかわるトラブルリスク

法律上は、契約書を作成しなくとも、当事者同士で合意した事項は有効です。
ただし、契約書を作成していない場合は、トラブルが発生したときに「どちらに責任があるのか」、「どちらが責任を果たすのか」が不明確となり、交渉に時間がかかります。

また、契約書を作成しても、契約内容に抜け漏れがある、契約内容が自社にとって不利な内容になっている場合は、改善に労力が必要です。

トラブルの発生を防止するための契約書のはずが、契約書の内容が思わぬトラブルを引き起こすリスクがあります。
たとえば、

※一部抜粋

新規事業契約書の作成ポイント

新規事業契約書の作成ポイント

新規事業の契約書を作成するためには、必ずおさえるポイントがあります。

契約書の作成時のポイント

  • 自社の社内ルールに合っているか
  • 誰が、なにを、いつまでに、どうするかが明確か
  • 契約内容に法的な問題点がないか
  • 自社に不利な項目が含まれていないか
  • トラブル時の責任の範囲が明確であるか

契約内容を丁寧にチェックすると気づく点も多いようですが、契約内容の問題点は、トラブル発生後に判明することも多くあります。
契約内容の確認は、契約前、相手方との関係が良好なうちにおこなうことが大切です。

契約内容の確認において、法令に違反していないかの確認は負担が重くなります。
また、一般的な契約様式を利用した結果、当事者の意思にそぐわない契約内容になることもあります。
法令との関係の検討や漏れ抜けの確認が負担となる場合は、法律などに詳しい専門家の検証であるリーガルチェックをおこなうことも検討します。

リーガルチェックのタイプ

契約内容を法的な側面から検証するリーガルチェックには、検証する専門家の関与度合いに応じて、次のようなタイプがあります。

専門家のリーガルチェックの度合いによって費用も変わるため、契約の内容や自社での知識、担当者の事務負担を考慮して、どこまで依頼するかを検討します。

リーガルチェックの有効性

契約内容や契約書の文言が、法律的に問題はないかを検証するためには、膨大な時間と専門的な知識が必要です。
契約書を法的にチェックするためには、外部の専門家の活用が有効です。
専門家が法的な観点で契約内容や文言をチェックするリーガルチェックには、多くのメリットがあります。

弁護士を上手に活用しましょう

リーガルチェックを依頼する専門家としては、弁護士と行政書士が該当します。

膨大な法令と契約内容を照らして、法令違反がないかを確認するためには、法律の専門家である弁護士の活用が効率的です。
また、弁護士は依頼人の立場で助言するため、自社に不利な事項の確認にも有効です。
ただし、弁護士にもそれぞれ得意分野があるため、自社で契約予定の分野に詳しい弁護士を選ぶ、または、部分的にほかの専門家への依頼も検討します。
たとえば、知的財産権に関する部分は弁理士に相談するなどです。

弁護士だけではなく、行政書士もリーガルチェックが可能です。
特に官公署への提出書類に詳しい行政書士は、許認可が必要な事業における契約時の活用が有効です。

リーガルチェックを依頼する相手を選ぶときは、弁護士法に違反する非弁行為に該当しないよう、法的な資格をもつ弁護士や行政書士の活用が必要です。

電子契約の導入で契約事務を効率化

電子契約の導入で契約事務を効率化

従来は、紙に契約内容を記載した書面へ押印する書面契約が主流でしたが、政府のデジタル化推進にあわせて、電子契約が急速に普及しています。
書面契約には、契約書の作成や保管に伴う事務コスト、汚損・散逸のリスク、契約更新忘れ、印紙税の課税などのデメリットがあります。
これら書面契約のデメリットを解消できる、電子契約が普及しています。

電子契約とは

電子契約とは、書面への押印による契約の成立と保管に代えて、電子データを当事者間でやり取りし、電子署名によって契約の成立とする契約のことです。
必要な要件を満たしている電子契約の効果は、書面契約と同じです。

<書面契約と電子契約の違い>

書面契約 電子契約
契約書のやり取り 郵送 インターネット
契約書の媒体 書面(紙) 電子データ
当事者の合意の表示 印影 電子署名
当事者本人の証拠 印鑑証明書 電子証明書
改ざん防止 契印・割印 タイムスタンプ
契約書の保管 電子データ

(電子契約の契約書面を紙に印刷した場合は、契約書の写しとして取り扱います)

電子契約はさまざまな契約に使われ、今後も普及していくと見込まれますが、法的に書面契約が必要な契約もあります。
たとえば、以下の契約は書面契約が必要であるため、電子契約はできません。

なお、従来は書面交付が必要であった不動産取引についての契約書や重要事項説明書は、2022年5月18日施行の宅地建物取引業法、借地借家法の改正により、電子契約が可能となりました。

などです。

あわせて、2022年6月1日施行の特定商取引法の改正により、電子化が可能となった書面があります。

電子契約を導入するメリット

電子契約を導入するメリットは次のとおりです。

印紙税の削減

電子契約を導入すると、印紙税法による課税文書ではなくなるため、印紙税が不要となります。特に取引金額が高額となる不動産取引(売買契約、請負契約など)においてのメリットは大きいです。

紙の印刷や準備など事務コストの削減

紙の印刷や製本などの作業が不要となります。また、契約に伴う社内手続きの管理もクラウド上などで確認できるため、契約までの工程管理も容易となります。

契約書をやり取りする時間の削減

当事者間での契約書のやり取りが電子化でき、郵送に要する日数の短縮、郵便費用の削減ができます。

リモートワークや担当者の出張などに対応可能

契約書への押印が不要となり、担当者の出張中やリモートワーク中においても契約が可能となります。

契約後の保管コストを削減

契約書を物理的に保管するコストが削減できます。文書の保管スペースやファイリングの手間、確認するときに探す時間などが短縮できます。

契約更新時の更新忘れを防止

契約更新前にアラートを設定すれば、契約の更新忘れを防止できます。

類似の契約書作成時の効率化

類似の書面契約を探し、参照しながら類似の契約書を作成するなど、類似の契約書作成事務が効率化できます。

まとめ

新規事業を開始するためにはさまざまな契約が必要です。
また、契約内容に漏れや不利な事項があると、修正するための労力が負担となります。
さまざまな契約事務をより正確かつ効率的におこなうためには、専門家のチェックや電子契約の導入などが有効です。
自社の業務の流れや契約の重要さにあわせた契約事務をおこなうことで、円滑な新規事業のスタートを切れます。

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