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人材・組織リスキリングが急速に広まっています。岸田総理による所信表明においても、リスキリング支援へ5年間で1兆円を投入する計画が発表されました。DX時代に企業活動が変わるなか、リスキリングは、企業において付加価値を向上させる人材育成戦略のカギともなります。
本記事では、リスキリングとはなにか、どのように実施するのかを解説します。
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目次
DX時代においては、IT化による業務効率化ではなく、全社的なDXへの取り組みと新たな発想が求められるため、すべての社員のデジタルリテラシーを向上することが必要となります。
リスキリングとは、英語の「reskilling」の読みで、DX時代に対応した、自社の人材育成戦略です。経済産業省では、『すべてのビジネスパーソンに求められるデジタルリテラシーと専門的なデジタル知識の学習機会の提供と共に、組織においてDXの活動を牽引し、新たな付加価値の創造/業務効率化を実現できる実践的なDX推進人材の育成』とされています。
リカレント教育とは、『学校教育からいったん離れたあとも、それぞれのタイミングで学び直し、仕事で求められる能力を磨き続けていく(略)ための社会人の学び』を指します。
リスキリングとリカレント教育の主な違いは次のとおりです。
リスキリング | リカレント教育 | |
誰が | 企業が | 社会人が |
誰に | 従業員に | 自分で |
なにを | 新しいスキルを身に付けてもらう | 新しいスキルなどを学習する |
リスキリングは、企業の事業内容や経営行動が変わっていくなかで、従業員に新たなスキルを身に着けてもらう、企業側の人材戦略です。
リカレント教育は、従業員が自らすすんで、新たな職場・職業に対応するためのスキルなどを学習する、という学び直しのサイクルです。
リスキリングは、DX時代においては、すべての従業員に求められています。
DXにより、社内の業務が効率化されただけでなく、従来にはなかった新たな取り組みが必要であり、従業員全員が対応していく必要があります。
DX時代においてリスキリングが求められる理由は、経済産業省がとりまとめた『第3回 デジタル時代の人材政策に関する検討会 今後に向けた取り組み(案)について 2021年3月11日』で、わかりやすく説明されています。
わかりやすくまとめると、次のとおりです。
日本企業では従来、OJTによる社内人材の育成が活発でした。
OJT(On-The-Job Training)とは、配属された部署の業務のノウハウを、実際に業務に従事しながら身に付ける手法です。そのため、DX時代に求められている創造や革新とは異なります。
リスキリングは、従業員がDX時代になじみ、新たな創造や革新を発揮するための人材育成を指します。
リスキリングは欧米企業が先行して導入しましたが、国内企業でも導入が進んでいます。
欧米企業では、国内企業よりもやや先行して、リスキリングが導入されています。
情報通信会社だけではなく、物流や小売に強みをもつ会社も先行しています。
国内企業でもリスキリングが導入されています。大手企業中心ですが、各社のDXへの取り組みやリスキリング導入例が公開されています。
リスキリングを自社に導入するための主な手順は、次のとおりです。
リスキリングを導入する手順は、次のとおりです。
自社のどの部署、どのキャリアコースでは、どのようなスキルが求められるのかを明確化することで、従業員からの納得感を得ることができます。
また、スキルを評価できるよう、従業員のスキルやスキルのレベルを可視化する仕組みづくりも大切です。会社と従業員の双方からの見える化や従業員のスキルアップのマイルストーンとして、DX関連の資格の有無なども利用できます。
リスキリングは全社員がデジタルになじみ、新たな事業分野を創出していくことが目標です。DX時代に活躍が期待されている人材を育成するためには、全体的な底上げとDXの加速化を担う人材の育成が必要です。
リスキリングは、企業内でのDXの推進と歩調をあわせます。人気のテーマは、主に以下のスキルといわれています。
50代の従業員であっても、DXにおける対応は変わりません。とはいえ、デジタルになじみが薄い従業員もいらっしゃいます。まずは、既存の業務効率化ツールを扱えることが、取り組みやすい体制づくりといえます。主なスキルの名称は次のとおりです。
リスキリングの手法として、すでにある資格試験へ取り組んでもらうことも有効です。
資格試験は、学ぶテーマや範囲が明確で、取得によるスキルレベルの可視化も容易となります。人気の資格の主な例です。
社内外でおこなうリスキリングには、メリットと課題の両方が存在します。
リスキリングの主なメリットは次のとおりです。
自社でリスキリングをすすめるための課題もあります。
IT化による業務効率化の時代から、DXによる新たなビジネス創出が必要なDX時代へと移り変わっています。
DX化は全社的な取り組みであり、すべての社員がDXになじむことが必要です。また、DXを推進していく人材が不足しているため、すでに自社の業務に精通している社内から人材育成をすすめることが重要となります。
DX人材の育成を全社に浸透させるためにも、求められるスキルの明確化、従業員が学ぶ機会の提供などのリスキリングに取り組みましょう。