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人材・組織2020年には国際競技大会の開催だけでなく、雇用や不動産に関する社会問題が噴出するといわれており、人事労務関連もその影響を受けると予想されています。
そのため、2020年問題がもたらす影響に適切に対応するために企業側も対策を求められています。今回は2020年問題について、人事労務管理の観点からわかりやすく解説します。
目次
2020年問題とは、2020年にさまざまな分野で表出するとされる、リスクや問題の総称です。
東京で開催される国際競技大会の特需の終了による雇用や不動産の問題のほか、企業の人件費負担増、事業継続など多くの分野に深刻な影響を与えるとされる社会問題を指します。
2017年に東京都が発表した報告によると、東京で開催される国際競技大会が全国に及ぼす経済効果は2013年から2030年まで約32兆3千億円と試算し、雇用数は約194万人増加すると見込んでいます。
【出典】東京2020大会開催に伴う経済波及効果(試算結果のまとめ) – 東京オリンピック・パラリンピック準備局
しかし、国際競技大会の閉幕以降は急速な経済の冷え込みが予測されており、いわゆる「2020年問題」が懸念されています。2020年以降に起きうるとされる代表的な「2020年問題」は、次のとおりです。
東京で開催される国際競技大会の開催に伴うインフラ整備やインバウンド需要の経済効果により、雇用数も増加し続けてきました。しかし、国際競技大会閉幕以降は需要が冷え込み、2020年以降は再度就職氷河期が到来するとされています。
また、2020年はバブル世代や団塊ジュニア世代が50代に突入するため、企業側の人件費の負担増加などの問題も危惧されています。
自然災害やテロ攻撃などの緊急事態が発生した場合、その影響は企業だけにとどまらず、各地域の雇用や経済にも大きな打撃を与えます。
政府は平成17年に、災害時の緊急事態に備えて、事業を早期に再開もしくは継続するための手法を決めておく「BCP(Business Continuity Plan)」を策定しました。政府は2020年までに企業の「BCP策定率」を大企業ではほぼ100%、中小企業では50%との目標を掲げており、BCPの策定が企業側にも求められています。
【出典】事業継続ガイドライン – 内閣府
AIやIoT、VRなどさまざまなIT分野の進化により、IT業界では今後もさらにシステムエンジニアの需要が増えると予測されています。
しかし、平成28年に経済産業省が発表した「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」によると、IT業界に属する人材数は約90万人で不足人口数は約17万人でしたが、2020年には約37万人にも拡大するとされており、IT人材不足の深刻化が問題視されています。
2020年は団塊世代が後期高齢者に突入するため、深刻な介護問題も増えるといわれています。両親の介護が必要になれば、介護休業の取得や介護離職を余儀なくされる社員も増加するため、企業側も大きなリスクに直面する可能性があります。
オリンピック需要における不動産バブルは、2020年以降、一気に弾けてしまい、不動産相場も大きく下落すると予測されています。また、地価の下落と人口減少が進むことにより、今後はさらに空き家が増加すると懸念されています。
2020年問題は経営課題となっており、人事労務管理を中心に2020年問題への対策が急務とされています。ここでは人事労務管理の2020年問題を解説します。
働き方改革関連法の施行により、2019年から時間外労働の上限規制が導入されました。原則として月45時間・年360時間を上限としており、すでに大企業では2019年4月より適用が実施されています。
2020年4月からは中小企業にも上限規制が適用されるため、社員の仕事内容の見直しや、新たな人員確保などの対策を講じなくてはなりません。
【出典】働き方改革 特設サイト 支援のご案内 – 厚生労働省
2020年に突入すると、労働者の4人に1人が45歳から54歳になると予測されており、多くの企業ではバブル期に大量入社したバブル世代社員や団塊ジュニア世代社員が、賃金カーブのピークを迎える50代にさしかかります。
【出典】2020年の産業構造と雇用環境予測 – リクルート進学総研
企業では、バブル世代や団塊ジュニア世代社員の高齢化による人件費増加という課題に直面しており、人件費抑制を目的とする非正規雇用の拡大や、若年雇用の抑制などの対策を迫られています。
また、バブル世代や団塊ジュニア世代社員は課長や部長などの管理職に相当する年代ですが、主要ポストの数は限られているため、当該世代社員の働くモチベーションを維持させることが、企業側のもうひとつの課題となっています。
2020年4月1日から「同一労働同一賃金(パートタイム・有期雇用労働法)」が施行されます。
そのため、同じ企業で働く正規雇用労働者と非正規雇用労働者間で、不合理な待遇差を設けることが禁止されます。同一労働同一賃金の導入で、企業は非正規雇用労働者の賃金アップや職務内容を明確にするなどの対策を求められます。
来たる2020年問題の中でも雇用関係や労務関連への対策は不可欠です。ここでは企業が対策すべきポイントをご説明します。
再雇用制度とは、定年退職した正社員を再雇用する制度です。バブル世代や団塊ジュニア世代が定年を迎えると、一斉に社員が退職することが考えられるため、業務に大きな支障をきたす可能性があります。これまでどおりの企業活動を行うには、早期に再雇用制度の整備が必要です。
役職定年制度とは、課長や部長などの役職についた社員が一定年齢に達すると、役職を外れて専門職などに異動する人事制度です。管理職のポストには限りがあるため、役職定年制度を導入することで人事の新陳代謝を実現し、若手社員の登用を実現できます。
若手社員が管理職候補として評価されていても、バブル世代や団塊ジュニア世代社員が重要ポストについたままだと、若手社員はいつまでたっても管理職につくことができません。
早い段階で管理職についた若手社員は、それだけ成長の機会を得ることができます。
次世代の管理職を育成したい場合、バブル世代や団塊ジュニア世代社員の人員配置を考えることも必要です。
2020年問題以降も人事労務関連では、企業にとって、見過ごせない課題が存在します。ここでは2020年以降に想定される人事労務関連の課題をご紹介します。
IT業界では今後もさらなる開発の需要が高まると予測されていますが、一方で専門的な知識をもつエンジニアが不足しており、企業ではIT人材を確保することが困難になると予想されます。エンジニアは業務負荷も高く離職率が高い傾向にあり、若手社員のエンジニア離れも進んでいます。
また、近年ではAIやビッグデータ解析など高度なプログラミングを必要とするエンジニアの需要が高まり、すでに企業間では熾烈な人材の獲得競争が始まっています。
こうした背景から2020年以降はますますIT人材が確保しづらくなるため、企業には外国人労働者の積極的な登用やテレワークなどの多様な働き方の導入など、IT人材確保に向けてさまざまな工夫が必要とされています。
野村総合研究所と英オックスフォード大学が2015年に発表した共同研究報告によると、10年後から20年後には日本の労働人口の約49%が、ロボットやAI(人工知能)によって代替可能になると予測されています。
【出典】日本の労働人口の 49%が人工知能やロボット等で代替可能に – 株式会社野村総合研究所
これまで人間が行っていた接客や通訳、プログラミングや士業といったさまざまな仕事をAIが代替できるようになるため、2020年以降は失業者が増加するのではと懸念されています。AIの導入で人件費が抑えられる一方、仕事を失った人材をどのように活用していくか、企業でも対策が求められています。
2020年問題に対応するためには、企業側では定型業務を削減し、採用業務や人材育成などのコアな業務に集中できる環境を作ることが必要です。また、今後増え続ける人件費を削減するために、キャリアアップや昇進制度を重視する人事制度を構築するという考え方に転換することも有効な対策となります。
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