この記事でわかること・結論
- 人材育成は、企業の長期的な経営計画や目標に基づき、経営上の目標を達成するために社員を育てること
- 人材育成に使えるフレームワークはSMARTの法則、HPI (Human Performance Improvement)、カッツモデルなどがある
- 人材育成の具体的な実践手法はJT(On-the-Job Training)、Off-JT(Off-the-Job Training)、eラーニングなどがある
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人材・組織この記事でわかること・結論
人材育成ができるかどうかは、企業の収益の安定性に大きく関わります。現時点で優秀な従業員が多かったとしても、数年後には主力メンバーが退職している可能性があります。持続的に成長するためには、人材育成が必要不可欠です。
本記事では、人材育成の課題や手法、担当者の選定方法などについて詳しく解説します。
目次
人材育成は、企業の長期的な経営計画や目標に基づき、経営上の目標を達成するために社員を育てることです。企業が変化する環境に適応し、競争力を維持するためには、人材を育成し続ける必要があります。
人材育成の対象は、業務に関わる知識やスキルだけではありません。柔軟性やコミュニケーション能力などの一般的なスキルも対象です。人材育成は一般的に企業が主導しますが、社員の個人的なキャリアビジョンとの調和も重要です。企業の目標と社員の個人的な成長目標を組み合わせ、バランスを取ることが成功の鍵となります。
人材育成は、目的を明確化したうえでおこなわなければ方針にずれが生じる恐れがあります。人材育成の目的は次のとおりです。
人材育成に課題を抱えている企業は少なくありません。主な課題は次のとおりです。
人材育成の課題について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
人材育成に十分な時間を割くことが難しいため、十分な教育をせずに経験のみで知識やスキルを習得させようとする企業は少なくありません。通常、人材育成には担当者を配置し、その担当者は自身の業務と並行して教育をおこないます。
たとえば、営業担当者が日々のクライアント対応やプロジェクト管理に追われている状況で、人材育成をおこなうことは容易ではありません。育成指導を後回しにすることが多く、これが新入社員の学習意欲低下につながることがあります。
十分な教育を受けられないことを理由に退職するケースは少なくありません。人材採用には多額のコストがかかっているため、退職されてしまうと企業は損失を受けます。そのため、人材採用と人材育成はセットで考えることが大切です。
育成担当者や管理職が十分な育成スキルをもっていないために、適切な人材育成ができないケースがあります。
育成スキルが不足していると、計画的で効果的な指導が難しくなり、場当たり的な指導が増えます。その結果、過去の指導内容と異なる指導を受け、育成対象者が困惑することもあるでしょう。
また、人材育成における目標や進捗が不透明になり、成果を得られにくくなります。さらに、育成対象者の実力や適性を客観的に評価できず、相性が悪い業務を割り当てることになりかねません。
現場から離れて研修に参加する場合、そのポジションは他の社員で埋める必要があります。十分な人手があればスムーズに研修に参加できますが、人手が不足していると研修の度に臨時の対応が必要になります。これが継続的に発生すると、現場の士気が定価するでしょう。
現場の従業員に人材育成に関する協力を呼びかけるだけではなく、人員の拡充も目指すことが大切です。また、現場の状況を理解し、無理のない育成計画を立てましょう。
人材育成は、次の流れで実施します。
人材育成の流れ
それぞれ詳しく見ていきましょう。
人材育成は、目的意識をもって実施することが重要です。目的がない状態では人材育成の方針がぶれてしまうでしょう。
これらの目的を個々の従業員と組織全体で共有し、具体的なゴール設定と結びつけることで、より効果的な人材育成が可能になります。
目標設定は、従業員のモチベーション維持に欠かせません。また、目指す目標を明確に示すことで、混乱せずに目標に向かって努力できるようになります。
目標はなるべく具体的で、数字を使用することが大切です。
スキルの可視化は、人材育成において従業員のスキル状況を把握し、成長に向けた具体的なアクションを計画する上で非常に重要です。各従業員の業務スキルを軸にしたスキルマップを作成しましょう。数値化されたスキルレベルに基づいて、従業員の現在のスキル状況を可視化します。
各従業員のスキルを採点やレーティングによって評価し、長所と短所を特定します。これにより、育成の優先順位や必要なトレーニングがより具体的に把握できます。
また、各従業員のスキル状況を基に、個別の育成計画を立案します。必要なトレーニングやスキル向上のための取り組みを具体的に計画しましょう。
人材育成で目標を示す際は、期日を決めることが重要です。これは、育成対象者だけではなく、育成担当者にも同じことがいえます。
人材育成の適性が高い従業員に育成担当者を任せることが重要です。
フレームワークを利用することで効率的で効果的な人材育成ができるようになります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
SMARTの法則は、目標設定において具体性や計量可能性、達成可能性、関連性、期限を考慮する考え方です。
たとえば、「2025年3月31日までに、月100万円の売上を達成できる営業パーソンへと育成する」と設定します。
HPI(Human Performance Improvement)は、組織の発展において人材の能力向上を中心に据え、人事的なアプローチだけでなく経営計画との連携を重視した考え方です。
たとえば、組織が年商100億円を達成することを目標としている場合、HPIは営業職に焦点を当てます。まず、現状の営業スキルやパフォーマンスを評価し、目標達成に必要な能力を特定します。これに基づき、営業職のトレーニングやスキル向上プログラムを実施し、個々の成長を促進します。
カッツモデルは、マネジメント層のスキルと役職の関連性に焦点を当てた理論です。それぞれ3種類に分類されており、どのようなスキルが必要か考えたうえで人材育成計画に落とし込みます。
各階層の求める能力を具体的にリストアップし、各階層に適した研修を実施します。このプロセスにより、組織に必要なスキルが明確になり、研修や人材配置の見直しによって業務の効率向上や組織目標の達成が期待されます。
たとえば、ロワーマネジメント層には業務推進スキル、ミドルマネジメント層にはリーダーシップやコミュニケーションスキル向上、トップマネジメント層には経営力や意識向上の研修が必要です。
人材育成には、次のような手法が役立ちます。
それぞれの手法について詳しく見ていきましょう。
OJT(On the Job Training)は、主に新卒社員や新入社員に対して、実務を通して必要な知識や技術を教える育成手法です。現場で活躍する上司や先輩トレーナーが一対一で指導し、実践的なスキルを習得させます。
OJTの大きなメリットは、個人の特性や学習スピードに合わせて効果的に育成できる点にあります。
たとえば、営業職の場合は商談スキルや顧客対応、製造業の場合は生産プロセスや品質管理など、業務に即したトレーニングをおこないます。
Off-JT(Off-the-Job Training)は、従業員のスキルや知識を向上させる育成手法の一つで、職場や日常業務から離れた環境でおこなうトレーニングです。
具体的なOff-JTの手法としては、オンラインスクールの受講、外部セミナーへの積極的な参加、外部講師の招聘などが挙げられます。
たとえば、オンラインスクールによって必要なスキルを効率的に向上させることが可能です。また、外部セミナーへの参加や外部講師の招待により、業界の最新動向や専門的な知識の習得を促し、組織全体の競争力を向上させることもできます。
eラーニングは、オンライン上の講義や学習コンテンツを通じて知識やスキルの向上を目指す方法です。
通勤中や休憩中などの隙間時間を有効に活用し、自分のペースで学習を進めることができます。
ビジュアルコンテンツ、対話型の課題、クイズ、フォーラムなど、多彩な学習方法を組み合わせることで、より深い理解を得ることが可能です。
人材育成は企業の成功に必要不可欠です。人材不足によって育成の時間を確保できない場合は、人材採用から着手するとよいでしょう。また、フレームワークや手法を活用し、なるべくコストを抑えて効率的に育成することが大切です。今回、解説した内容を参考に人材育成をおこないましょう。
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