パートタイム労働法は、正式名称を「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」といい、平成5年に制定されました。パートタイマーの雇用環境の改善を目的として、改正が頻繁に行われています。
直近では、平成27年4月に改正されました。今回はパートタイム労働法の法律の目的と、最近の法改正の内容を見ていきます。また、パートタイム労働法に規定される運用上の留意点についても確認してみましょう。
近年パートタイム労働者の増加や、なかには役職を持つパートタイマーもいるなど、その働き方が多様化しています。一方で、パートタイム労働者の仕事への意欲を削いでしまいかねない問題も数多く存在しています。
パートタイム労働法は、このようなパートタイムに関する問題の解消、さらにはパートタイム労働者それぞれが自分の持つ能力を有効に発揮できる環境、及び能力に応じた「公正な待遇」を受けることができる環境の整備を目指して制定されました。
法律の主な内容として、パートタイム労働者と正社員など(以下:通常の労働者)の均等、均衡な待遇の確保をするための措置や、パートタイム労働者から通常の労働者への転換を推進するための措置を行うべき、とされています。
パートタイム労働法がパートタイム労働者の公正な待遇を目指して制定されたものである、ということはわかってもらえたかと思います。では、そもそもパートタイム労働者とはどのような人のことを指すのでしょうか。どのような人が法律の対象となるのか確認したいと思います。
1週間の所定労働時間が、同じ事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定の労働時間に比べて短い人とされています。
(例)通常の労働者が1日8時間×週5日=40時間働いている場合、この40時間を下回る所定労働時間で働いている人がパートタイム労働法におけるパートタイム労働者となります。
記事内では「パートタイム」という言葉を使用していますが、「アルバイト」「嘱託」「契約社員」「準社員」などの名称に関係なく、上記の条件に当てはまる労働者は全員パートタイム労働者となります。
冒頭で述べたように、パートタイムの働き方も多様化してきているため、パートタイム労働法もその時代に適した形になるように法改正が行われています。ここでは、平成27年4月1日に行われた改正の内容を紹介します。
主な改正のポイントは以下の3点となります。
(1)パートタイム労働者の公正な待遇の確保
通常の労働者とパートタイム労働者の間における差別を禁止し、双方の待遇を相違させる場合は事情を考慮して不合理なものであってはいけません。また、業務内容に関連して支払われる「通勤手当」は均衡確保の努力義務の対象とします。
(2)パートタイム労働者の納得性を高めるための措置
パートタイム労働者を雇い入れた際の事業主による説明義務や、パートタイム労働者からの相談に対応する体制を整備する義務が定められています。
(3)パートタイム労働法の実効性を高めるための規定の新設
雇用管理において、改善措置の規定違反に対する勧告が行われているにもかかわらず従わない場合は事業主名を公表し、パートタイム労働法の規定に基づく報告を拒否または虚偽の報告などをした場合は事業主に対して20万円以下の過料が処されます。
パートタイム労働法を適切に運用していくためにはどのようなことに気をつけた方がいいのでしょうか。
労働基準法では、「契約期間」「契約更新の場合の基準」「始業・終業」「休憩・休日・休暇」「賃金」などの労働条件を文書で明示することが義務付けられていますが、パートタイム労働法ではこれらに加えて、トラブルになりやすい次の4つの事項についても明示することが義務付けられています。
昇給とはひとつの契約期間のなかでの賃金の増額をいい、労働条件の文書では賃金の増額があるかないかをはっきりと明示する必要があります。
相談窓口とはパートタイム労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係るものであり、前項(2)より相談に対応するための体制を整備する義務にあたります。
就業規則の作成また変更にあたっては、労働基準法により労働者の過半数で組織する労働組合などの意見を聴かなければいけないとされていますが、パートタイム労働法では、パートタイムの過半数を代表すると認められるものの意見を聴くことを努力義務として定めています。
これらはパートタイム労働者が「公正な待遇」を受けられるようにするためのものであり、違反すると罰金を支払うことになる可能性もあるので、留意しておきたいポイントとして紹介しました。
詳細は厚生労働省のホームページより「パートタイム労働者の雇用管理の改善のために」内の関連資料をご参考ください。
今回は、パートタイム労働者のための法律である「パートタイム労働法」について紹介しました。今や企業においてパートタイム労働者も重要な存在となっています。また、少子高齢化が進むにつれて、パートタイム労働者の重要性はさらに高まる可能性もあります。
そうしたなかで、労務担当者はパートタイム労働者が公正な待遇を受けながら働くことができるように環境を整備していく必要があります。そのためにもパートタイム労働法への理解を深めることが大切です。
大学卒業後、日本通運株式会社にて30年間勤続後、社会保険労務士として独立。えがお社労士オフィスおよび合同会社油原コンサルティングの代表。
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