この記事でわかること
- 派遣法改正は派遣労働者の保護・雇用安定を目的に実施
- 改正内容には雇入れ時説明義務や契約書電子化が含まれる
- 派遣元・派遣先双方に新たな義務が課せられ、適切な対応が求められる
この記事でわかること
1999年の労働者派遣法の大規模な規制緩和からはじまり、2012年から労働者保護の観点から規制が強化されています。今後も必要に応じて、派遣法は改正され続けます。
今回は2021年に改正された派遣法のポイントを中心に、人事・労務担当者が気をつけるべき派遣法の内容を解説します。
目次
労働者派遣法(以下、派遣法)とは、「労働市場のマッチングを適正におこなうこと」と「派遣社員の保護と雇用の安定を図ること」を目的にした法律です。
港湾運送業務や建設業、士業など派遣が禁止されている業務の制定、派遣先事業・人単位などの期間制限、日雇い派遣の原則禁止、派遣事業をおこなえる会社の条件、雇用安定措置、キャリア形成支援、労働契約みなし制度、同一労働同一賃金などさまざまな規定を定めています。
また、労働基準法や労働契約法、職業安定法、男女雇用機会均等法、パートタイム・有期雇用労働法、社会保険・税制関連法などさまざまな法改正によって、影響を受ける法律でもあります。
2021年から新たに派遣法が改正されており、人事・労務担当者は以下の6つのポイントを遵守しなければなりません。
2021年の派遣法改正では、主に派遣元事業主に義務を課す項目が多いですが、派遣先企業も主体的に対応することを義務化する内容も含まれています。
基本的に、派遣労働者の権利および雇用確保を目的に改正されています。
派遣元事業主は、派遣労働者の雇入れ時に、提供する教育訓練やキャリアコンサルティング(希望者に対して実施)の内容を説明することが義務付けられています。
派遣事業を提供する事業主は教育訓練の見直しをおこない、人事・労務担当者は説明義務が発生する内容を確認しておきましょう。
派遣元事業主と派遣先企業で締結する労働者派遣契約の内容を電子化(電磁的記録)することが可能です。
電子メールによる企業間のやりとりが可能となります。
派遣労働者から労働基準法や育児・介護休業、労働安全法に関連する苦情があった場合、派遣先企業も誠実かつ主体的に対応することが義務となっています。
派遣労働者を受け入れる派遣先企業も派遣労働者が相談しやすい窓口の設定や対応方法の事前準備をおこないましょう。
派遣労働者の責に帰すべき事由以外で、労働者派遣契約の解除がおこなわれた際、たとえ新たな就業機会の確保ができない場合であっても、派遣元事業主は必要な雇用管理をおこなわなければなりません。
派遣元事業主は、雇用安定措置の強化の一環で派遣労働者が希望する措置の内容を聴取しなければなりません。
また、聴取結果を派遣元管理台帳への記載が義務付けられています。
派遣元事業主は情報提供の義務がある、すべての情報をインターネットなど適切な方法で情報提供することが義務となっています。
1 マージン率=「派遣料金(派遣先企業が派遣会社に支払う料金)」から「賃金(派遣事業主が労働者に支払う賃金)」を差し引いた割合
2 教育訓練に関する事項など予め関係者に知らせることが適切であるもの
人事・労務担当者は法改正のたびに適切な対応をおこなわなければなりません。
1986年に施行された派遣法は、1999年を境に大幅な規制緩和と規制強化が繰り返されています。
人事・労務担当者が気をつけるべき、これまでの派遣法の規制強化を中心に解説します。
人事・労務担当者が知っておくべき派遣法
同一労働同一賃金の施行や労働みなし制度の創設など、労働者保護の観点から派遣労働者における規制は強化されています。
2021年の派遣法改正は、主に派遣元事業主が義務を負う変更が多いですが、派遣先企業も派遣労働者の苦情に対して、主体的に対応する義務が発生します。
相談窓口の強化や対応マニュアルの整備に加え、人事・労務担当者として、法律で保障されている労働者の権利(育児・介護休業など)を再度確認し、適切な対応をおこないましょう。
社会保険労務士の中でも、10%に満たないと言われる助成金を専門に手掛ける特定社会保険労務士/ワークスタイルコーディネーター。なんば社会保険労務士事務所の所長。
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