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「派遣切り」は違法?労働者の使い捨ては許されません!


新聞やニュースでときどき耳にする「派遣切り」という言葉。一般的に「派遣切り」とは、派遣労働者として契約して働いているものの、契約の途中で打ち切られたり、契約期間満了を迎えるが更新されると思っていたところ、更新されずに雇止めとなったりした場合に使われます。「派遣切り」は違法になるのでしょうか?労働契約法から違法性の可否について検討していきます。

そもそも労働者派遣契約とはどのような契約か

派遣労働者の労働契約は、少し複雑になっています。労働契約というと、通常は労働者と事業所(事業主)の二者間で結ばれた直接的な契約です。しかし、派遣労働者の労働契約は、「派遣労働者」「派遣元事業主」「派遣先事業所」の三者間での契約となっています。

派遣労働者と雇用関係があるのは、派遣元事業主です。派遣先事業所とは、指揮命令の関係でしかありません。派遣元事業主と派遣先事業所の間には、労働者派遣に関しての契約が結ばれ、派遣労働者は派遣元事業主との契約によってそこに赴き、派遣先事業所の指揮命令を受けながら業務にあたります。

このように、派遣社員は正社員とはまた違った立場の労働者にはなりますが、即戦力の労働力を低コストで補充できるなど、派遣先事業所にとって派遣労働者を雇うメリットは十分にあります。

しかし、派遣元事業主、派遣先事業所ともに、決して都合よく派遣労働者を扱っていいわけではありません。一時期話題にもなった「派遣切り」、事業所の身勝手な都合で契約解除ということがあれば、違法行為として扱われるケースもあります。

派遣元事業主が常用雇用労働者を解雇する場合

ひとことで派遣労働者といっても、その雇用形態はさまざまです。たとえば、派遣元事業主に常時雇用されている労働者もいますし(常用型派遣)、また、派遣会社に名前を登録し、短期~中期の仕事があれば、その都度紹介してもらっている有期労働者(登録型派遣)もいます。

常時雇用されている派遣労働者は、派遣元事業所の正社員であることがほとんどでしょう。派遣先事業所では期間を定めて働いていたとしても、派遣元事業主とは期間の定めがない労働契約を結んでいます。

そのため、そういった従業員を解雇できるケースは、派遣元の就業規則に対して重大な違反をしている場合のみです。派遣元の就業規則に照らし合わせて、その事由が普通解雇に該当するのか、懲戒解雇に該当するのかを判断します。

もし、派遣労働者が派遣先でミスをしたことが原因で、派遣元事業主と派遣先事業所との派遣契約を解除された場合でも、派遣元事業主はその労働者をすぐさま解雇することは認められていません。派遣契約を解除された程度であれば、派遣元事業主はその労働者に対して、ほかの派遣先を探して就業の機会を確保する必要があります。

解雇が認められるのは、あくまで派遣元の就業規則に定めた懲戒解雇や普通解雇の事由に該当し、かつ、その事由が客観的に合理的な理由があって(正当な理由と根拠があり、定められた手続きをしたうえで)、社会通念上相当であると(世間一般的に解雇されても仕方がないと)認められた場合のみです。これは労働契約法第15条と第16条にも定められています。

派遣元事業主が登録型の有期雇用労働者を解雇する場合

有期雇用労働者の場合、初めから期間を定めて契約していますが、その期間内での解雇もやむを得ない事由がない限りは認められていません。こちらも、労働契約法第17条に定められています。

また、有期雇用労働者の場合、問題になりやすいのが雇止め、つまり「派遣切り」です。契約期間が満了し、契約を更新しないことをいうのですが、これ自体は違法行為ではありません。しかし、これまで何度も契約を更新していたのに事業所の都合でいきなり契約を終了してしまうと、それが違法行為と判断されてしまうことがあります。

もともと、短期雇用労働者は、業務の増加による一時的な人手不足解消など、明確な目的のもとで雇われるものです。業務が落ち着き、人手不足が解消されれば、それで終わりというケースもあります。これまで何度も契約を更新し、派遣先の正社員と同等の業務をこなしている有期派遣労働者の方も少なくはありません。

労働契約法19条では、反復更新の実態などから実質的に期間の定めのない契約と変わらないといえる場合や、雇用の継続を期待することが合理的と考えられる場合、雇止めをすることに客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当であると認められないときは、雇止めは認められないとしています。

その場合、今までと同じ条件で有期労働契約が更新されることになります。場合によっては、不当解雇と同等の扱いとみなされてしまうこともあるでしょう。

「派遣切り」による労働者の使い捨ては許されません

もし派遣先の都合によって、期間の途中で派遣契約を解除することになった場合、その労働者が一時的に無収入になるような事態は避けなければなりません。派遣元事業主として、その派遣労働者の新たな就業先(派遣先)の確保、あるいは期間満了までの休業手当等の支払いなどの措置を取る必要があります。

そして、このケースではもちろん派遣先事業所へも責任は及びます。派遣先事業所からも、関連会社を派遣先として斡旋するなどして、派遣労働者の新たな就業先を確保しなければなりませんし、派遣労働者が休業せざるを得なくなった場合には損害賠償が発生します。

また、派遣元事業主がやむを得ず、予告なし(あるいは予告から解雇まで30日未満)で派遣労働者を解雇してしまった場合でも、派遣先事業所がその損害を賠償することになります。

つまり、「派遣切り」は、派遣元事業所のみならず、派遣先の事業所にも大きなリスクが生じることになります。期間中の契約解除は、本来「やむを得ない事由」がある場合にのみ認められる行為です。もしその事由に客観的合理性や相当性がないと判断された場合は、その契約解除が違法なものとみなされる可能性があります。

労働契約法には罰則はありませんが、民法の特別法として位置づけられており、訴訟による損害賠償等大きなリスクを抱えることになりますので、絶対に避けるようにしましょう。

まとめ

派遣労働者は、決して事業所が都合よく扱っていい存在ではありません。労働者一人ひとりに権利があり、法律で守られています。

雇用形態も多様化する昨今、正社員として雇用する常用雇用者はもちろんですが、期間を定めて雇用する労働者にもきちんと目を向け、彼らの権利を守ることは事業主としての責務です。

すべての労働者が、安心して働くことができる環境を作っていきましょう。

加治 直樹 |  かじ社会保険労務士事務所

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