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派遣社員の労務管理のポイント!給与計算や勤怠管理は誰が行う?

監修者:岡 佳伸 社会保険労務士法人|岡佳伸事務所
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派遣スタッフの労務管理は、自社の従業員よりも難しいと言われます。それは、派遣元企業・派遣スタッフ・派遣先企業という三者の利害や立場が関係するためです。派遣スタッフを使用するには、派遣ならではの労務管理のポイントを把握しておく必要があります。

この記事では、派遣スタッフに関する給与計算から労働法、時間外勤務の三六協定まで、労務管理や労務問題の解決に役立つ基礎知識をまとめてご紹介します。

派遣社員・派遣元企業と揉めないための労務管理のポイント

派遣スタッフを、自社のパートタイムやアルバイト従業員と同じように考えてはいませんか。同じ職場で働いているように見えても、派遣スタッフは従業員とは異なります。

まず派遣スタッフは、派遣会社などの派遣元から自社まで仕事をしに来ているという図式を念頭に置かなければなりません。派遣スタッフとは派遣会社の社員であり、契約も派遣会社と自社の契約となるためです。そのため派遣スタッフに関しては、以下のような注意点があります。

POINT

派遣スタッフと派遣先企業の間には雇用関係はない

派遣スタッフは、派遣元企業と雇用関係を結んでいるからです。派遣元企業と派遣先企業が労働者派遣契約を結ぶことで、派遣スタッフが派遣先企業で働くことが可能となります。

派遣先企業は指揮命令権しか持たない

派遣先企業は、労働者派遣契約に基づいて派遣スタッフに指揮命令をし、業務を遂行させる必要があります。よく請負契約と混同されますが、請負業者と派遣スタッフの間には雇用契約と指揮命令関係の両方があるのに対し、派遣先企業はあくまで指揮命令権しか持たないのが特徴です。

派遣社員の労務管理方法

派遣スタッフも労働者である以上、さまざまな労働法に守られています。労務管理にあたって、派遣先企業は労働基準法や労働安全衛生法など労働者に対して管理責任を負います。ただし前述したとおり、派遣スタッフが雇用関係にあるのはあくまで「派遣元企業」です。

したがって、労務管理は派遣元と派遣先が責任を分担しておこないます。たとえば、労働基準法に基づいて派遣元は労働契約や賃金の支払い、有給休暇などを取り扱います。給与計算もあくまで労働時間を報告するだけで、基本的に派遣元企業が行います。

一方、派遣先は労働時間や休憩、休日に関して配慮する義務を負います。また、労働安全衛生法に基づいた一般健康診断は派遣元に責任がありますが、現場での安全衛生教育や特殊健康診断など業務にあたって必要な安全処置は派遣先が担います。

ちなみに衛生管理者等の選任は、自社の従業員数だけでなく派遣スタッフもカウントしなければなりません。

担当者 主な労務管理
派遣元企業 ・労働契約
・給与計算
・賃金の支払い
・有給休暇の管理
派遣先企業 ・勤怠管理
・現場での安全衛生教育や特殊健康診断など

派遣社員の雇用契約に関する注意点

派遣期間の終了とともに雇用契約も終了する

派遣先企業は、派遣スタッフと雇用契約ではなく「労働者派遣契約」で結ばれています。したがって雇用主としての責任は、派遣元企業にあります。

派遣で雇用契約が問題となるのは、派遣期間の終了や再雇用のケースです。派遣契約と雇用契約はあくまで法律的には別個のものですが、一般的に派遣契約が終わると雇用契約が終わります。

離職して一年以内の派遣スタッフの再雇用は禁止

また、離職して1年以内の派遣スタッフを同じ職場に再び派遣することが禁止されています。もし優秀な派遣スタッフをそのまま使用したい場合は、紹介予定派遣のような正社員や契約社員での雇用を前提とした労務管理が必要となります。

36協定の締結は派遣元企業と派遣社員間で結ぶ

派遣元企業と雇用関係にある派遣スタッフを、時間外労働させる場合はどのようにすればいいのでしょうか。いわゆる月45時間以上の時間外労働を可能にする36協定を、派遣スタッフと結ぶことは可能です。

ただし36協定の締結は、派遣先企業とではなくあくまで派遣元企業と結ぶことになります。派遣先企業は、36協定の特別条項を理由に派遣スタッフに残業を求めることはできません。36協定を巡っては派遣元企業とトラブルになりやすいポイントなので、十分注意してください。

派遣元企業・派遣スタッフとトラブルになったときの対処法

契約にない仕事をさせてしまったり、当初の勤務条件と実体が大きく離れていたりすると派遣元企業や派遣スタッフとの労務問題に発展することがあります。こうした派遣を巡るトラブルは、他の従業員や派遣スタッフにも動揺を与えます。処理が遅れれば、法的手段を使って解決をしなければならなくなります。

双方の主張に食い違いがある場合は、まず派遣元企業と話し合い、それでも解決ができないと判断すれば労働局やハローワーク、労働基準監督署に相談しましょう。健康保険や年金関係のトラブルは、年金事務所の窓口で相談するのがスムーズです。

まとめ

派遣スタッフも自社の大切な従業員の一員として、労働法に沿った労務管理が大切です。ただ、派遣を使う際には、独特の事務処理や遵守すべき法律など知っておくべきポイントがいくつか存在します。

派遣スタッフは派遣元企業と雇用契約を結んでいるという基本をしっかり踏まえながら、派遣元と派遣スタッフそれぞれの関係を良好に保ちましょう。そのためにも、自社で行うべき労務管理の基本を押さえて責任ある派遣利用を目指しましょう。

社会保険労務士法人|岡佳伸事務所 監修者岡 佳伸

社会保険労務士法人|岡佳伸事務所の代表、開業社会保険労務士として活躍。各種講演会の講師および各種WEB記事執筆。日本経済新聞女性セブン等に取材記事掲載。2020年12月21日、2021年3月10日にあさイチ(NHK)にも出演。
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