労務SEARCH > 人事労務管理 > 就業規則/勤怠管理 > 就業規則は閲覧できる状態にすべき?閲覧を求められたときの対応を解説
就業規則は閲覧できる状態にすべき?閲覧を求められたときの対応を解説

就業規則は閲覧できる状態にすべき?閲覧を求められたときの対応を解説

監修者:労務SEARCH 編集部
詳しいプロフィールはこちら

この記事の結論

  • 就業規則の周知方法は閲覧のほかにも配付や電子媒体の利用があげられる
  • 周知していない就業規則は無効になる
  • 退職済みの従業員でも条件を満たせば就業規則の開示請求ができる

就業規則は、作成するだけではなく従業員がいつでも閲覧できる状態にする必要があります。しかし、いつでも閲覧できる状態というのがどのような状態が理解できない方は多いでしょう。

本記事では、就業規則を閲覧できる状態にする必要性や閲覧を求められたときの対応方法などについて詳しく解説します。

就業規則はいつでも閲覧できる状態にする必要がある

就業規則は、いつでも従業員が閲覧できるようにする必要があることが労働基準法第106条1項で定められています。


労働基準法第106条1項

使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨、就業規則、第十八条第二項、第二十四条第一項ただし書、第三十二条の二第一項、第三十二条の三第一項、第三十二条の四第一項、第三十二条の五第一項、第三十四条第二項ただし書、第三十六条第一項、第三十七条第三項、第三十八条の二第二項、第三十八条の三第一項並びに第三十九条第四項、第六項及び第九項ただし書に規定する協定並びに第三十八条の四第一項及び同条第五項(第四十一条の二第三項において準用する場合を含む。)並びに第四十一条の二第一項に規定する決議を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない。


就業規則は、従業員が遵守すべき業務に関する規定や社内秩序を維持するための規則を記載したルールブックです。また、労働時間や労働内容など、労働者にとって重要な条件も記載されています。従業員は、労働条件や給与規程が不当に変更されていないかを確認するために、就業規則をいつでも閲覧できる権限をもちます。

就業規則の内容を変更した際も周知が必要

就業規則の変更は、従業員と企業の双方にとって重要です。変更があった場合、従業員は自身の権利や義務について正確に理解する必要があります。企業には、就業規則の変更内容を従業員に明確に伝えることが求められます。

就業規則を周知する方法

就業規則を周知する方法は、以下のとおりです。

就業規則を周知する方法
  • 配付する
  • 掲示する
  • 電子媒体への記録

すべての方法を実践することは法律で義務づけられていないものの、トラブルを防ぐために可能な限り併用しましょう。就業規則を周知する方法について、それぞれ詳しく解説します。

就業規則を配付する

就業規則のコピーを従業員に配付する方法があります。

就業規則の配付方法の例
  • 給与明細を各従業員に渡す際に就業規則の冊子を一緒に渡す
  • 再度周知することを目的に研修やイベントの際に就業規則を配付する
  • 入社時に全従業員に配付する

過去に配付した就業規則のコピーを破棄している場合もあるため、定期的に配付することも検討しましょう。

就業規則を掲示する

職場内の目立つ場所に就業規則を掲示します。

就業規則の掲示の例
  • 休憩室や社員食堂など、従業員が日常的に利用する場所に掲示する
  • オフィスの出入り口付近のように従業員が頻繁に通る場所に掲示する

就業規則は社外秘の文書のため、応接室のように取引先が出入りする場所に掲示しないよう注意が必要です。

就業規則を電子媒体に記録する

就業規則を電子媒体に記録し、従業員がいつでもアクセスできる場所に配置する方法があります。

就業規則を電子媒体に記録する例
  • 社内ポータルサイトから閲覧できるようにする
  • 重要文書のクラウドサービスに就業規則をアップロードする

電子媒体で記録することで、従業員は検索機能を使用して必要な情報を速やかに閲覧できるようになります。また、就業規則を変更した際に変更箇所をマーカーで目立たせたり、抜粋して周知したりすることも可能です。

内定者が就業規則を閲覧できるようにする必要はある?

入社前の従業員に就業規則を適用するには、労働契約の締結までに周知しておく必要があります。周知の方法は閲覧だけではなく、掲示と電子媒体の利用も有効です。


労働契約法第7条

第七条 労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。


内定辞退の可能性を踏まえると、就業規則のような社外秘の文書を共有するのは避けるべきとの考えもありますが、就業規則を適用したい場合は必須です。内定辞退の際に就業規則のもち出しのリスクを抑えるために、取り扱いについて十分に注意するよう通達しましょう。

退職した従業員が就業規則を閲覧できるケースとは

就業規則の周知が必要なのは、在職中の従業員と内定者に限ります。退職済みの従業員が就業規則の閲覧を求めても応じる必要はありません。

ただし、以下2つの要件を満たしている場合は元従業員が労働基準監督署を通じて、就業規則の開示を企業に求めることができます。

元従業員が就業規則の開示請求をおこなう条件
  • 就業規則の周知義務が果たされていなかった
  • 企業へ就業規則の周知を求めても対応されない状況と判断された

退職済みの従業員が閲覧できるのは、企業との間で生じている権利義務に関わる項目に限ります。

就業規則を周知しなかった場合の罰則

企業が就業規則を閲覧できるようにしない、掲示しないなど周知しなかった場合は、以下2つの罰則を受ける可能性があります。

就業規則を周知しなかった場合の罰則
  • 行政指導
  • 刑事罰

行政指導

就業規則を周知しなかった場合は、労働基準監督官による行政指導がおこなわれます。就業規則の周知について改善が望ましいケースでは、「指導票」が交付され、企業はその内容に従って改善措置を講じる必要があります。

労働基準法違反にあたると判断された場合は、労働基準監督署から「是正勧告」がおこなわれ、企業は早急に改善するよう対応しなければなりません。

刑事罰

労働基準監督署から是正勧告を受けたにもかかわらず対応しなかった場合には、刑事罰が科せられる可能性があります。就業規則の周知義務違反の刑事罰は、30万円以下の罰金です。

就業規則の閲覧に関するよくある質問

就業規則は定期的に周知する必要はありますか?
就業規則を閲覧できるようにしておいたり掲示したりしておけば、定期的に周知する必要はありません。従業員に「就業規則を閲覧したい」と言われたときは、方法を丁寧に指導することが大切です。
就業規則を変更したら毎回周知する必要がありますか?
就業規則は変更する度に周知する必要があります。1年間で複数回の変更があった際に、1年分をまとめて周知するような方法は認められません。
就業規則を周知しない旨を就業規則に記載することは有効ですか?
就業規則の周知は労働基準法で定められている事項のため、就業規則にそのような記載をしても有効ではありません。

まとめ

就業規則は、閲覧や配付、電子媒体の利用などによって全従業員へ周知する必要があります。周知されていない就業規則は無効となります。たとえ、就業規則に懲戒解雇について定めていても、周知していなければ該当する従業員を懲戒解雇できません。

就業規則は周知して初めて効果を発揮するものであることを理解し、適切な方法で周知することを徹底しましょう。

監修者労務SEARCH 編集部

労務・人事・総務管理者の課題を解決するメディア「労務SEARCH(サーチ)」の編集部です。労働保険(労災保険/雇用保険)、社会保険、人事労務管理、マイナンバーなど皆様へ価値ある情報を発信続けてまいります。
詳しいプロフィールはこちら

本コンテンツは労務SEARCHが独自に制作しており、公正・正確・有益な情報発信の提供に努めています。 詳しくはコンテンツ制作ポリシーをご覧ください。 もし誤った情報が掲載されている場合は報告フォームよりご連絡ください。

この記事をシェアする

労務SEARCH > 人事労務管理 > 就業規則/勤怠管理 > 就業規則は閲覧できる状態にすべき?閲覧を求められたときの対応を解説