この記事でわかること・結論
- 時短勤務者の給与計算方法は基本給×実労働時間÷所定労働時間
- 2025年開始予定の「育児時短就業給付」の対象となる場合、給与額の1割の助成金を受け取れる
この記事でわかること・結論
時短勤務者は働いている時間が短いため、それだけ給与を減額する方針をとることが一般的です。ただし、2025年開始を目指している制度を利用することで、条件を満たした場合に限り減額の影響を抑えることができます。
本記事では、時短勤務者の給与計算方法や給与が減らないケースなどについて詳しく解説します。
目次
時短勤務とは、育児・介護休業法による「育児短時間勤務制度」のことです。3歳未満を養育する従業員は、所定労働時間を6時間とする短時間勤務が可能です。
時短勤務は、事業主であれば企業規模を問わずに導入しなければなりません。条件を満たす場合、子供が3歳を迎える日の前日まで時短勤務ができます。時短勤務が可能になることで、保育園や幼稚園などの迎えが可能となり、子育てと仕事を両立しやすくなります。
また、従業員が希望した場合は、10時~5時までの深夜の業務、残業の免除を認める必要があります。なお、同制度は男女問わず利用可能です。
また、要介護状態の家族を介護する従業員においても、連続して3年以上にわたり、短時間勤務ができる制度を設けることが義務づけられています。
時短勤務ができるのは、次のすべての条件を満たした従業員です。
また、1年以上働いている有期雇用契約の人や6時間以上、週3日以上働いているアルバイトの人にも適用できます。この制度は自動で付与されるものではなく、従業員による申告が必要です。
以下に該当する人は、時短勤務ができません。
厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況」によると、時短勤務者の平均給与は、1時間あたり1,367円です。1時間あたりの賃金がもっとも高い年齢は、男性が35~39歳の2,438円、女性が30~34歳の1,457円です。
また、大企業は1,307円、中企業は1,493円、小企業は1,339円となっています。
労働時間の減少に応じて給与も減少することが原則です。時短勤務でも給与を減らさない企業が存在する可能性があるものの、他の従業員からの印象も考えると、給与は減らさざるをえないでしょう。
ただし、歩合制や裁量労働制の場合、労働時間ではなく成果物によって報酬がきまるため、時短勤務でも給与が変動しないケースがあります。
基本給×実労働時間÷所定労働時間
たとえば、基本給30万円で1日の所定労働時間が8時間の場合に、時短勤務で1日6時間働き、月20日出勤したとします。
この場合の計算式は以下のとおりです。
基本給30万円×実労働時間120時間÷所定労働時間160時間
=225,000円
なお、上記の金額は総支給額のため、社会保険料や所得税などを控除します。
2025年開始予定の「育児時短就業給付」の対象となる場合、時短勤務でも給与が大きく下がらない可能性があります。育児時短就業給付は、以下のすべての要件を満たした場合に、給与額の1割の助成金を従業員が受け取れる制度です。
給与額×10%
たとえば、基本給30万円で1日の所定労働時間が8時間の場合に、時短勤務で1日6時間働き、月20日出勤したとします。この場合、時短勤務時の収入は225,000円です。
その10%にあたる22,500円が給付されるため、実際に受け取れる給与額は247,500円です。
時短勤務者については、以下の注意点を守って対応しましょう。
時短勤務者に対して不当な扱いをしてはいけません。
ただし、従業員が望む場合には不当な扱いとはなりません。たとえば、時短勤務よりもアルバイトになった方が気持ちが楽になるからといって、従業員が希望するケースもあるでしょう。不当な扱いを受けたと感じないように、従業員と十分に話し合うことが大切です。
育児や介護などを理由に時短勤務を選択した場合、必要に応じて人員配置に配慮することが労働基準法で定められています。具体的な対応方法は以下のとおりです。
転勤を命じられないわけではないものの、従業員の意思を考慮せず、実際に転勤は困難であるのに命じることは、労働問題に発展するリスクがあります。
給与の支払いにおいては、残業代についても確認が必要です。1日の所定労働時間は1日8時間、週40時間の法定労働時間を超えることはできません。法定労働時間を超えて働いた分が残業となり、割増賃金の支払いが発生します。
時短勤務者は所定労働時間および法定労働時間を超えて働かないため、残業代の支払いは不要です。
賞与については労働基準法で金額や計算方法、条件などが定められて折らず、事業主が独自に設定する必要があります。
賞与が勤務時間に比例する場合は、時短勤務を理由に賞与の減額が必要です。
賞与の計算に勤務時間が含まれていない場合、時短勤務者とそうではない従業員で賞与に差がなかったり、時短勤務者の方が高くなったりする可能性があります。そうなれば従業員から不満の声がでる恐れがあるため、賞与計算に勤務時間を含めるとよいでしょう。裁量労働制のように成果物で報酬が決まる場合は、他の従業員に理解を求めることが大切です。
時短勤務制度を導入する場合、給与の減額率に関する取り決めが重要です。具体的な減給率を就業規則に記載することが推奨されています。現行の法令では時短勤務時の給与減額について規定は存在せず、事業主が独自のルールを設定できます。
このため、就業規則に減給率を透明かつ分かりやすく記載することは、従業員が制度を利用する際に不安を解消し、安心して活用できる環境を整備するうえで重要です。
時短勤務者の給与計算については、明確なルールがありません。一般的には、労働時間の減少に応じて給与を減額します。就業規則に減額率について明記し、従業員に周知することが大切です。また、賞与についても就業規則の記載されているルールを踏まえ、適切に調整する必要があります。今回、解説した内容を参考に、時短勤務者の給与計算を正しくおこないましょう。
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