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企業内の人員活性化として早期退職制度を有効に活用する方法

早期退職制度とは?企業側のメリットデメリットについて

監修者:加藤 一徹 加藤社会保険労務士事務所
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企業の人員整理の手段としてよく知られている方法に、リストラがあります。
リストラは強硬な方法であるため、整理解雇の4条件をしっかりとクリアしておかないと、当人との労使紛争はもちろん、他の従業員の労働意欲を低下させる可能性があるので注意が必要です。リストラに比べ、柔軟で社員の意思も取り入れた人員整理の手段として、早期退職制度があります。

今回はこの早期退職制度について具体的にどのようなものなのか説明します。

早期退職制度で会社の活性化を目指す

まずは早期退職制度がどういったものなのか、その概要を確認していきましょう。
早期退職制度とは、簡単に言ってしまうと、定年前に従業員に退職・転職を自ら選択してもらう制度です。読んで字のごとく、退職を早めてもらうわけです。

通常、企業に勤めている人は年齢を重ね、その企業の定年に達すると退職することになります。また、定年に達していない人であっても、転職に伴いその企業を退職する人も出てきます。つまり、毎年自然と数人は会社を去る社員が出るのです。

しかし、会社の経営状況によっては、毎年数人しか出てこない自然な退職者を待っていられない場合もあります。たとえば、不景気の影響で経営が悪化し、人件費を削減しなければいけなくなったときや、ベテラン社員が多く若手が少ないため世代間の人数のバランスを取る必要があるといったときなどです。

つまり、早期退職制度は会社の人員整理や活性化を促すという目的があるのです。また、早期退職をする人のなかには転職を考えている人もいるため、そういった人たちを後押しするという意味合いもあります。

ちなみに、早期退職者に対しては通常よりも退職金を多く支払ったり、退職準備のための特別な有給休暇を付与したり、再就職先を紹介したりと、何かしらの優遇措置が付与されるのが一般的です。

早期退職制度のメリットとデメリットとは

続いては早期退職制度のメリットとデメリットについて解説します。
まずメリットとしては以下のようなものが挙げられます。

早期退職制度のメリット

  • トラブルが少なく人員整理ができる
  • 企業内の活性化・若返りが見込める
  • 期間限定の早期退職制度の場合、基本手当の受給制限が有利になりやすい場合も

一方のデメリットとしては以下のようなものが挙げられます。

早期退職制度のデメリット

  • 企業の経営危機と誤解される
  • 退職者が増えると人件費を圧迫する
  • 優秀な人材が流出する
  • 高齢化の可能性
  • 通年募集の早期退職制度の場合、退職理由が自己都合とされる場合がある

会社としてうまく早期退職者を募ることができれば、社内の若返りや人員整理ができ、退職する社員も退職金を多めにもらえ、基本手当が受給できるなど、両者が多くのメリットを享受することができます。

しかし、早期退職への理解が不十分だと、残された社員は「会社が危ないのでは?」と不安に感じるほか、優秀な人材や若手など予想外の退職者が出てしまう可能性もゼロではありません。すると、結果的に会社としては人件費が跳ね上がるだけで、社員はより高齢化してしまうといった事態に陥りかねません。

メリットを増やし、デメリットを減らすためには

早期退職を募る企業側としては、先ほど紹介したようなデメリットを可能な限り少なくし、メリットをしっかりと享受できるようにしなければいけません。では、デメリットを減らすためにはどうすればいいのでしょうか。
主な方法としては以下のようなものが考えられます。

早期退職制度のデメリットを減らす方法

  • 退職を承諾しない社員に対しては事前に根回し
  • 早期退職の条件を定めておく
  • 守秘義務

退職を承諾しない社員に対しての事前の根回しについては、早期退職制度は退職を希望する人が応募しただけでは退職は成立しません。退職するには会社側の承諾も必要となります。つまり、会社側は退職してほしくない人の応募に対しては承諾をしなくても問題ないのです。そこで、事前に退職してほしくない社員に対しては応募しても承諾しない旨を伝えておくことで、スムーズに退職者を募ることができます。

早期退職の条件を定めておくことについては、たとえば、若返りを図りたいのに若手社員ばかりが退職すると会社は困ってしまいます。そこで、制度に応募できる人の年齢を決めておくことで想定外の退職を防ぐことが可能です。
また、同様に部署や勤続年数、職種などを決めておくのも有効です。

守秘義務については、早期退職をした社員のなかには、強制的に退職させられたと感じる人がいるかもしれません。そういった社員が退職後競合他社に入社し、前職の秘密などをバラすリスクを回避するためにも退職時に誓約書などで守秘義務を負わせるようにしなければいけません。

早期退職制度利用者の退職後について

最後に早期退職をした社員の退職後の選択肢についても簡単に触れておきます。
早期退職と一言で言っても、退職する年齢も異なれば、退職の目的も異なります。退職した企業から紹介してもらった他の企業に就職するケースもあれば、全く別の企業に就職することもあります。

また、それまでの社会人経験を生かして独立する人も出てくるでしょう。もちろん、仕事をリタイアし、悠々自適な生活を送る人もいます。このように、退職後の生活はまさに千差万別です。

会社としても、早期退職希望者の要望ともすり合わせができる柔軟性を持たせることが重要ではないでしょうか。

まとめ

今回は、早期退職制度に関してその概要や注意点について紹介してきました。会社の人員整理を行い、心機一転するという意味では早期退職制度は有効な選択肢の1つとなります。

一方で、メリットやデメリットを理解せずに制度を運用すると、思わぬトラブルにつながりかねません。今回紹介した内容を参考に早期退職を募集する際は細心の注意を払いながら、行うようにしてください。

加藤社会保険労務士事務所 監修者加藤 一徹

日本大学卒業後、医療用医薬品メーカーにて営業(MR)を担当。その後人事・労務コンサルタント会社を経て、食品メーカーにて労務担当者として勤務。詳しいプロフィールはこちら

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