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ニュース近年、週休3日制が注目を集めています。この制度は、従来の週休2日制に比べて、労働者のワークライフバランスを向上させることを目的としています。特に、働き方改革が進むなかで、従業員のウェルビーイングを重視し、生産性向上を図る手段としても期待されています。
この記事では、週休3日制導入の背景、具体的な内容、人事労務への影響、そして人事労務担当者として取るべき対応策について詳しく解説します。
目次
週休3日制とは、1週間のうち3日間を休日とする新しい働き方のことです。政府も働き方改革の理念として推進を奨励していますが、現時点では週休3日制の義務化は予定されていません。しかし、国家公務員の週休3日制は2025年4月から適用が検討されており、導入や試行を進めている自治体もあります(2024年10月時点)。
週休3日制には、主に以下の2つのパターンがあります。
文字通り、週に3日休みを取得する制度です。労働日数は週4日となり、1日の労働時間を増やすか、給与を調整するなどの対応が必要になります。この対応に関しては、下記の3パターンが挙げられます。
概要 | デメリット | |
---|---|---|
給与減少型 | 給与が減る代わりに、休日が増える | 週5日働きたい人が働けなくなる |
労働時間維持型 | 総労働時間は週休2日制と変わらず、1日の労働時間を増やす | 仕事がある日は、育児や家事との両立が難しくなる |
給与維持型 | 休日が増え、給与も週休2日制のときと変わらない | 特になし |
完全週休3日制のメリットとしては、従業員の自由時間が大幅に増えるため、ワークライフバランスの向上や自己啓発などに積極的に取り組むことができます。
従業員が交代で週休3日を取得する制度です。たとえば、1週間は週休2日、次の1週間は週休3日というように、ローテーションを組む方法があります。企業全体の労働力は維持しながら、従業員に週休3日のメリットを提供することができます。
週休3日制の導入は、企業と従業員の双方にとってメリットとデメリットが存在します。企業は生産性の向上や採用競争力の向上といったメリットを享受できる一方で、コストの増加や業務の遅延といった課題に直面する可能性があります。
休暇が増えることで、従業員の疲労が軽減され、集中力が高まる可能性があります。これにより、限られた時間内での生産性が向上することが期待されます。
少子高齢化による労働力不足が深刻化するなか、優秀な人材を確保するための競争が激化しています。週休3日制を導入することで、他社との差別化が図れ、優秀な人材を確保できる可能性があります。特に若い世代やワークライフバランスを重視する求職者にとっては、魅力的に感じるでしょう。
長時間労働の是正、ワークライフバランスの実現など、働き方改革が社会的に求められています。週休3日制は従業員に休息時間を増やし、心身の健康を維持することで、働きがいのある職場環境づくりに貢献します。また休暇が増えることで、従業員の満足度が向上し、結果として離職率の低下につながる可能性があります。
一方で、週休3日制にはいくつかのデメリットも存在します。
週休3日制を導入するためには、シフトの調整や人員の増加が必要になる場合があり、これがコスト増加につながる可能性があります。
顧客対応が必要な業種では、休暇が増えることで業務の遅延が発生するリスクがあります。これにより、顧客満足度が低下する可能性があります。
シフトや業務の調整が複雑化し、管理が難しくなることがあります。特に中小企業では、この負担が大きくなるでしょう。
従業員にとっては、ワークライフバランスの改善やストレスの軽減といったメリットがある一方で、収入の減少やキャリアの停滞といったデメリットも考えられます。これらの要素を総合的に考慮し、企業は自社の状況に応じた最適な働き方を模索することが重要です。
休暇や自由な時間が増えることで、趣味や旅行、家族との時間など、プライベートを充実させることができ、ワークライフバランスが改善されます。心身のリフレッシュが可能になり、ストレスが軽減されるでしょう。従業員の満足度向上は、企業へのエンゲージメント向上、離職率低下にもつながります。
週休3日制は、短時間で効率的に働くことが求められるため、生産性が向上する可能性があります。また、従業員が自由な時間を活用してスキルアップや自己啓発に取り組むことができ、キャリアの幅を広げることができます。
給与減少型の週休3日制の場合、労働時間が減少することで収入も減少します。これは特に時給制の労働者にとっては大きな影響となるでしょう。
休暇が増えることで、キャリアの進展が遅れると感じる従業員もいるかもしれません。特に昇進を目指す人にとっては、懸念材料となる可能性があります。
休暇が増えることで、職場でのコミュニケーションが減少し、一体感が低下する可能性があります。これにより、チームワークが損なわれるリスクがあります。
では実際に、週休3日制は従業員のワークライフバランスを改善し、生産性を向上させるのでしょうか。ここからは、週休3日制を導入している企業の事例をいくつか紹介します。
日本マイクロソフトは、2019年夏に「週勤4日&週休3日」を軸とした「ワークライフチョイス チャレンジ 2019 夏」を実施しました。これは、社員が仕事と生活の状況に応じて柔軟な働き方を選択できる環境を目指した取り組みです。
効果測定の結果、労働時間や印刷枚数、電力消費量の削減、短い会議やリモート会議の実施比率の増加、社員間のネットワーク数の増加といった成果が見られたと報告しています。また社員アンケートでも、施策全体や週休3日制に対する高い評価や、9割以上の社員が意識や行動の変化を感じていたという結果が出ています。
株式会社リクルートは、2021年4月から年間休日を145日に増やし、週休約3日制を導入しました。これは、社員一人ひとりが仕事とプライベートを両立し、より柔軟に働ける環境を作るためです。
またこの制度では、会社が休日を指定するのではなく、従業員が年間14日の「フレキシブル休日」を自由に設定できます。休暇制度も刷新され、家族の定義を拡大した「ケア休暇」などが導入されました。
週休約3日制導入後、従業員からは家族のイベントに参加できるようになった、平日の用事が済ませやすくなったなどの声が上がっています。一方で、平日の労働時間増加や、チームでの役割分担など、新たな課題も浮上しているようです。
ZOZOTOWNを運営する株式会社ZOZOは、2021年4月からホスピタリティ本部を対象に選択的週休3日制を導入しました。その結果、残業時間が63%減少し、生産性が向上したそうです。これは、社員が出勤日の仕事に集中するようになったためといわれています。
週休3日制を導入する場合、人事・労務担当者は従業員と企業の双方にとってより良い働き方を実現できるよう、多岐にわたる対応と検討をおこなう必要があります。ここからは導入する場合のおおまかな流れを解説します。
まず導入前に、人事・労務担当者は、週休3日制に関する情報収集をおこない、メリット・デメリットや導入事例を把握しましょう。そのうえで関係部署と連携し、導入の可否や課題、具体的な導入方法などを検討します。
この段階では、週休3日制における労働時間の設定や、労働時間の短縮に伴う給与の調整方法などを具体的に検討する必要があります。従業員の生活水準を維持できるよう、適切な給与体系を設計することが重要です。
また、労働基準法などの関連法令を遵守しているかどうかの確認も重要な業務となります。特に、労働時間の上限規制や残業代の支払いなどには注意が必要です。
週休3日制の導入に伴い、業務の効率化は不可欠です。人事労務担当者は、業務プロセスを見直し、無駄な作業を削減する必要があります。
具体的には、ITツール導入による業務の自動化や効率化、業務分担の見直しや適切な人員配置、業務の標準化による作業効率の向上などを検討する必要があります。また、一部業務の外部委託も有効な手段となりえます。
人事・労務担当者は、従業員に対して、週休3日制の目的や内容、メリット・デメリットをわかりやすく説明しましょう。また、制度導入によって発生する可能性のある疑問や不安に対して、個別相談の機会を設けるなど、きめ細やかな対応が求められます。
制度に関する資料を作成し、従業員がいつでも確認できるよう配布することも重要です。さらに、制度導入後も従業員からの質問や問題に迅速に対応できるよう、サポート体制を構築しておく必要があり、継続的なサポートを通じて、従業員の不安や疑問を解消していくことが重要となります。
実際に導入を開始したら、導入後の運用状況をモニタリングし、効果を測定しましょう。また、従業員アンケートなどを実施し、制度に対する意見や要望を収集することも重要です。その理由は、従業員の満足度や制度の課題を把握し、必要に応じて制度を改善していく必要があるためです。
評価制度については、労働時間ではなく、成果に基づいた評価制度を導入します。短時間勤務であっても公平に評価されるように、評価基準を明確にしましょう。
給与体系については、従業員の理解と納得を得ながら、新しい給与体系に移行できるよう、丁寧な説明やコミュニケーションが必要です。成果に基づいた給与体系や、インセンティブ制度の導入なども検討してみてください。
週休3日制の導入は、従業員の満足度向上や生産性の向上につながる可能性があります。また、企業にとっては働き方改革の先進的な企業として、社会的な評価が高まるでしょう。企業イメージの向上は、顧客からの信頼獲得、ブランド力向上、優秀な人材の確保など、さまざまな面でメリットをもたらします。
その一方で、管理の複雑化や業務の遅延などが発生する可能性もあります。そのためまずは試験的に導入し、必要に応じて制度を改善していくのがおすすめです。従業員の満足度や生産性の向上に課題を抱えている企業は、ぜひ検討してみてください。
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