代休と振替休日の違いを正しく把握されていますでしょうか?所定休日に出勤した際に振替休日として処理するのか、代休として処理するのかでは賃金の計算方法が大きく変わってきます。
また、振替休日を同じ週に与えるのか、あるいは別の週に与えるのかによっても、計算方法が変わります。労働基準法の観点から正しく把握することによって、ミスのない給与計算ができるように解説していきます。
労働者に休日出勤をしてもらうと、その代わりにまた別の日を休みにするのが一般的かと思います。しかし、実はこの休みの日を決めるタイミング次第で、代休となるか振替休日となるかが変わって来ることはご存じでしょうか?
労働基準法では、
としています。ちなみに、必ずしも代休や振替休日が必要というわけではありません。休日には、
の2種類あるのですが、労働基準法で定められている最低限の法定休日「最低週1日、あるいは4週で4日以上」が確保されていれば、別の日を休みにする必要はないのです。
ただし、もともと週休1日制を取っており、法定休日をつぶして休日出勤をしてもらった場合は、必ず別の日に休日を振り替えなければなりません。
どちらのケースでも休日出勤には変わらないため、労働者にとってはどちらでも同じという感覚でしょう。
しかし代休の場合は割増賃金が発生し、振替休日の場合は休日出勤分の割増賃金が発生しないという特徴があり、使用者側からすればかなり大きな違いがあるのです。
この振替休日で割増賃金が発生しない条件として同一週に振替日を定めることが前提としてあります。そして、振替休日でも
のいずれかに該当すると、割増賃金が発生してしまいます。
休日出勤手当を発生させないようにするためのポイントは、法定休日の基準をしっかりと守っているかということになります。
前項で述べたように代休は、法定休日に出勤してもらった日の割増賃金を支払う必要があります。
月給制の場合の割増賃金は1時間あたり通常の賃金(月給額÷1ヶ月の所定労働時間)から、さらに3割5分以上増しの賃金で計算されることとなり、さらにこの日の業務が22時を越えてしまうと深夜労働分の賃金割増(2割5分以上)も加えて発生してしまいます。
一方で振替休日も前項で述べたとおり、同一週に振替日を定めることができれば、休日出勤扱いにはならないため割増賃金を支払う必要はなく通常通りの賃金を支払うとしています。
そして、同一週外の振替日を定めた、または週の所定労働時間を越えてしまった場合は時間外労働分の割増賃金(2割5分以上)を支払うこととなり、労働時間が深夜に及んでしまった場合でも同率の割増賃金を支払います。
とはいえ、振替休日の2つは休日出勤でなくとも普段から計上すべき割増分であるため、それほど特別な経理は必要ないといえるでしょう。
代休と振替休日の大きな違いは、
の2つですが、それ以外にもさまざまな違いがあります。特に36協定の締結、および届出の提出はポイントとなってきます。
代休の場合で特に法定休日に出勤してもらうケースでは『労働者との間に36協定を締結し、「時間外労働・休日労働に関する協定届」を労働基準監督署長へ提出しなければならない』とされているのです。
一方で振替休日に関しては『36協定の締結は必要なく、届出も提出の必要はない』とされていますがその代わりに、
これら4つの要件を満たしていなければなりません。
つまり、振替休日の場合は代わりの休みの日を使用者側があらかじめ決めておく必要があるということになります。反対に代休の場合は使用者が決めても労働者が決めても構わないということになり、こういった点にも違いがあります。
繁忙期を迎えると、どうしても労働者に休日出勤してもらわなければならないというケースが増えるかと思います。
しかし、そういった時期になってから「休日出勤の給料ってどう計算するのか?」、「必要書類および提出はあるのか?」とならないよう、あらかじめ繁忙期だと予想される時期が来る前にしっかりと代休、振替休日について確認しておきましょう。
社会保険労務士法人|岡佳伸事務所の代表、開業社会保険労務士として活躍。各種講演会の講師および各種WEB記事執筆。日本経済新聞、女性セブン等に取材記事掲載。2020年12月21日、2021年3月10日にあさイチ(NHK)にも出演。
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