「社会保険」の定義は、広義には労災保険や雇用保険をも含む、社会保障の一類型として記述されますが、狭義にはいわゆる健康保険と厚生年金保険を指す実務用語として記述されます。
ここでは後者に加え、相互に関連の深い介護保険、国民健康保険、後期高齢者医療制度、国民年金、船員保険を取り上げ、主に加入要件と(保険)給付の異同を中心にまとめました。
※平成27年10月1日より共済年金は厚生年金保険に一元化されました。
健康保険は主に事業所に常時雇用されている人が対象の保険です。簡単に言えば、企業に勤めている労働者が加入してもらう保険となります。事業所単位での加入となるので、個人で行ってもらう手続きはありません。また保険料も会社と折半となっています。給付内容として「療養費」や「傷病手当金」「出産手当金」「出産育児一時金」などがあります。
一方の船員保険は、その名の通り船員として働く方が加入する保険です。船長をはじめとして航海士や機関士、通信士など、船舶の職員として働いている方は強制加入となっています。また船の規模や漁業の種類によっては、漁師の方も加入の対象となる場合があります。船員保険の給付内容は「療養費」や「傷病手当金」など、基本的に健康保険と同じです。しかしそれに加えて「行方不明手当金」など、船員が故の職務上で起こり得るリスクに対しての給付もあります。
国民健康保険は、健康保険の加入要件に当てはまらない人が入る保険です。自営業者や個人事業主のような会社に所属していない人が加入する保険となります。各市町村が運営しているため、保険料や給付の種類はその地域によってまちまちです。健康保険と同じく「療養費」や「出産育児一時金」などが給付されますが、「傷病手当金」など、給付の対象にならないものもあります。
一方の後期高齢者医療制度も、国民健康保険と同じく各市町村が運営している医療制度となります。いわゆる後期高齢者(75歳以上の高齢者)が対象となり、「療養費」や「高額医療費」、「高額医療・高額介護合算療養費」などが給付されます。こちらも会社に勤めている労働者のための制度というよりは、すでに退職された方のための制度といった感じです。
そして厚生年金保険と国民年金ですが、これらの年金給付はいずれも、被保険者の老齢・障害・死亡を支給事由としています。なお、厚生年金保険は、健康保険と同じく事業所単位で加入となる年金制度です。そのため、手続きも事業所が行うことになります。
一方の国民年金は、国内在住の20歳以上60歳未満の方で、厚生年金保険に未加入の人が主な対象となった年金制度です。自営業など個人事業主の方はこれに当てはまります。手続きも個人で行わなければなりません。20歳になると年金機構から「国民年金被保険者資格取得届書」が送られてくるので、それに必要事項を記入し、提出します。
給付額は、厚生年金の場合は「加入期間」と「報酬比例の保険料納付額」によって決まり、一方の国民年金では「加入期間」と「定額の保険料納付額」によって給付額が決まります。給付時期にそれほど大きな差はありません。
そして最後に紹介する「公的介護保険」ですが、こちらは会社に勤めているか、個人事業主かを問わず、40歳以上の国民は自動加入となる保険制度です。保険料は健康保険料と併せて、または年金からの控除によって徴収されます。ちなみに、「民間介護保険」というものもあり、こちらは自身で申し込みを行えば、20代からでも加入することが可能です。
公的介護保険では、自身の体の状態によって要支援1・要支援2、要介護1~5の7段階に分けられ、それぞれに合わせた介護サービス等を原則1割の自己負担額で受けることができます。
例えば、要介護状態となることを予防するための日常生活動作の介助を要する程度の軽度の状態なら要支援1に当てはまり、最大約5万円相当までの介護予防サービスが受けられます。また、介護なしには日常生活を営むことがほぼ不可能な状態なら要介護5にあたり、最大約36万円相当までの介護サービスを受けることができます。
社会保険制度の中核を成すのは健康保険と厚生年金保険です。ただしこれは被用者保険と呼ばれる「労働者のための保険」であり、これらを補完するセーフティネットとして(真の意味では生活保護がありますが)、それぞれ国民健康保険と国民年金が対応しています。
さらに超高齢社会を迎えた日本においては、要介護者と後期高齢者への保障を切り離し、別個の仕組みとして独立させることにより、制度間の財政均衡を保っています。
社会保険労務士事務所 そやま保育経営パートナー 代表社会保険労務士:
楚山 和司(そやま かずし) 千葉県出身
株式会社日本保育サービス 入社・転籍
株式会社JPホールディングス<東証一部上場> 退職
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