社会保険の未加入に現在注目が高まっています。これは社会保険の適用事業所が法人数に比較して大幅に少ないため、「社会保険未適用事業所」が多くあると考えられています。
法人を設立し社会保険の加入条件を満たしているにもかかわらず、社会保険に加入していない場合、年金事務所の調査により強制的に加入手続きが取られるかもしれません。
今回は社会保険の強制適用の条件や、副業や非常勤役員の扱い、遡及適用から個人事業主が従業員を雇う場合も含めて解説します。
目次
強制適用事業所とは、事業主や個人の意思、企業の規模・業種に関係なく、社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入が義務付けられるすべての事業所を指します。
個人事業所の場合は、従業員を5人以上常時雇用している事業で、
などが強制適用の対象となります。美容業や飲食店等のサービス業、弁護士等の士業は従業員数に関係なく強制適用にはなりません。
強制適用でない個人事業主も、事業所を社会保険に加入させることができます。これを「任意適用事業所」といいます。加入するためには、下記の申請書類を準備して年金事務所にて手続きをします。
注意点として以下の3点が挙げられます。
フリーランスや個人事業主(自営業)をはじめ、副業の解禁に伴い、給料を複数の会社から得ている方が増えています。また、今後は本業以外の夜間や休日にアルバイトで収入を得る人や、複数の会社を経営し報酬を得る人も増えていくと考えられます。
上記のように2ヶ所以上から報酬を得ている場合では、2つの会社で社会保険加入手続きを取る「二以上事業所勤務届」の対象になる場合があります。
従業員が101人以上いて、社会保険が適用されている事業所に勤めている場合、週20時間以上働いていれば社会保険の加入が義務付けられています。
社会保険の適用範囲は段階的に拡大しており、2024年10月からはパートタイム・アルバイトの方でも従業員51人以上の会社で週20時間以上働いている場合は、社会保険の加入が必要になります。
パートタイムの社会保険の加入条件について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
企業の役員も社会保険に加入できます。また非常勤役員の場合も、社会保険に加入する義務が免除されるわけではなく、一般従業員と同じように実際の勤務の状態で判断されます。
では社会保険上、どのような条件を満たせば非常勤役員になるのでしょうか?社会保険の被保険者になるためには、常時適用事業所に雇用される労働者であるか、週20時間以上の労働時間を満たしているかという基準で加入対象かを判断します。
しかし役員は従業員ではないので、基本的に労働時間という考え方がありません。そのため、
などの基準で判断されます。
遡及適用とは、社会保険の強制適用事業所であるにもかかわらず、社会保険に加入する手続きを放置した場合(社会保険に未加入だった場合)、遡及して社会保険に加入できる制度です。
社会保険の資格取得手続きや確認請求をした日から、最大で2年間遡ることができます。遡及対象期間に本来従業員が負担するはずだった社会保険料は、会社が一旦全額支払います。
従業員負担分は従業員に対して会社が請求できますが、一括で従業員の給与から天引きはできません。従業員の給与から社会保険料として控除できる金額は、前月分の保険料に限られています。また、遡及適用分の保険料を給与や賞与から控除する場合には、従業員の同意が必要です。
強制適用事業所とは、事業主や個人の意思、企業の規模・業種に関係なく、社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入が義務付けられるすべての事業所です。
非常勤役員の場合も一般従業員と同じように、実際の勤務の状態(週20時間以上勤務)で社会保険の加入義務が判断されます。
社会保険の強制適用事業所であるにもかかわらず、社会保険に加入する手続きを放置した場合、遡及して社会保険に加入することが可能です。また強制適用事業所でない個人事業主も、事業所を社会保険に加入させることができます。
社会保険労務士法人|岡佳伸事務所の代表、開業社会保険労務士として活躍。各種講演会の講師および各種WEB記事執筆。日本経済新聞、女性セブン等に取材記事掲載。2020年12月21日、2021年3月10日にあさイチ(NHK)にも出演。
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