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ニュース2025年4月1日から育児・介護休業法が改正され、「子の看護休暇」が『子の看護等休暇』へと名称を新たに、大幅に改正・拡大されます。
この改正では、対象となる子の範囲が「小学校3年生修了まで」に引き上げられ、取得事由に学級閉鎖や入学式・卒園式への参加などが追加されます。また、労使協定による一部従業員の除外規定も見直され、より多くの親が制度を利用できるようになります。
この記事では、子の看護休暇の改正内容をすべて解説するとともに、改正の背景や、子の看護等休暇の施行に向けて企業の人事・労務担当者がやるべきことを紹介します。
目次
2025年4月から育児・介護休業法が改正され、「子の看護休暇」が『子の看護等休暇』へと名称を新たに、改正・拡大されます。具体的になにが変わるのでしょうか。主な変更点は以下のとおりです。
現行法では、「小学校就学の始期に達するまで」の子が対象でしたが、改正後は「小学校3年生修了まで」の子が対象となります。
小学校に入学してからも子供は体調を崩しやすく、学校行事も多いです。子の看護等休暇で対象となる子の範囲が拡大されることにより、より多くの働く親が、この休暇制度を利用できるようになるでしょう。
これまで、子の看護休暇を取得できる事由は、子供が「病気・けが」をした場合と「予防接種・健康診断」を受ける場合に限られていました。改正後はこれらの事由に加え、以下の2つが新たに取得事由として追加されます。
学校保健安全法に基づき、学校が臨時休業となる場合や、感染症により出席停止となる場合も休暇取得の対象となります。たとえば、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症が流行し、学級閉鎖になった際などが該当します。
幼稚園や保育園、小学校などの入園・入学式や卒園式への参加が、休暇取得の対象となります。これまで、これらの行事への参加のために有給休暇を取得していた方も、子の看護等休暇を利用して休めるようになります。
現行法では、労使協定を締結することで継続雇用期間が6カ月未満の従業員を、子の看護休暇の対象から除外することができました。しかし改正後は、この「継続雇用期間が6カ月未満の従業員を除外できる」という規定が撤廃されます。
これにより、入社間もない従業員も子の看護等休暇を取得できるようになります。ただし「週の所定労働日数が2日以下」の従業員については、引き続き労使協定により除外することが可能です。
上記のような改正内容に伴い、制度の名称が「子の看護休暇」から『子の看護等休暇』に変更されます。以上が今回の改正内容です。下記に、子の看護休暇と子の看護等休暇の違いについてまとめてみました。
なお、休暇の取得可能日数、取得単位、賃金に関してはこれまでと変わりありません。
条件 | |
---|---|
取得可能日数 | 1年間に5日、子供が2人以上の場合は10日 |
取得単位 | 1日単位または1時間単位での取得が可能 |
賃金 | 有給とするか無給とするかは企業の判断に委ねられる |
取得単位に関して、1時間単位で取得する場合は、始業時刻から連続してまたは終業時刻まで連続して取得する必要があります(中抜けは原則不可)。子の看護等休暇中の賃金については、法律で支給が義務づけられているわけではありません。そのため、有給とするか無給とするかは企業の判断に委ねられます。
今回の子の看護休暇の改正は、社会全体で子育てを支援し、仕事と育児の両立をより一層推進していくという大きな流れのなかでおこなわれました。その背景には、以下のような社会的な課題や変化があります。
近年、共働き世帯が増加し、夫婦それぞれが働くのが当たり前の時代となっています。しかし、子育てと仕事を両立することは容易ではなく、特に子供の急な病気や学校行事への対応は、多くの親にとって大きな負担となっています。
少子化は深刻な社会問題となっており、子育てしやすい社会環境の整備は喫緊の課題です。子の看護休暇の改正は、子育て世代が安心して子供を育て、仕事にも意欲的に取り組めるよう、社会全体で支援していくというメッセージとも言えるでしょう。
政府は、育児と仕事の両立を支援するための政策を積極的に推進しており、今回の改正もその一環です。改正によって、育児休業制度や時短勤務制度など、他の育児支援制度との連携が強化され、より柔軟な働き方の実現を目指しています。
子の看護休暇の改正に伴う対応は、すべての企業において必要です。ここからは、子の看護休暇の改正に向けて企業の人事・労務担当者がやるべきことを紹介します。
まずは、子の看護休暇の改正内容を正確に理解することが重要です。厚生労働省が公開している資料などを参考に、制度の詳細を把握しましょう。
次に、今回の改正内容に合わせて、就業規則や育児・介護休業規程などの関連規程を見直す必要があります。
主にやること | 具体的な対応 |
---|---|
条文の修正 | 「子の看護休暇」を「子の看護等休暇」に修正し、対象となる子の範囲や取得事由を改正内容に合わせて修正する |
労使協定の見直し | 労使協定を締結している場合は、勤続6カ月未満の従業員を除外する規定を削除する必要がある |
申請手続きの見直し | 子の看護等休暇の申請書や手続きを改正内容に合わせて修正し、従業員がスムーズに利用できるように整備する |
子の看護等休暇を積極的に利用してもらえるよう、子の看護等休暇を有給にすることを検討するなど、制度の利用を促進する施策を検討してもいいでしょう。
改正内容を従業員に正しく理解してもらうために、説明会や社内報、メールなどで周知を徹底します。制度に関する質問や相談に対応できる窓口を設置すると、より従業員が安心して利用できる体制を整えられるでしょう。
2025年4月1日から、「子の看護休暇」が『子の看護等休暇』になります。名称の変更だけでなく、対象となる子の範囲の拡大・取得事由の追加など、改正点は複数あります。
すべての企業は、今回の子の看護休暇の改正に伴い、就業規則や関連規程の見直し、従業員への周知などの対応が必要です。企業の人事・労務担当者は事前に改正内容をよく把握し、施行開始前から準備を進めておきましょう。
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