この記事でわかること・結論
- 1on1の目的は部下の成長と心理的安全性の向上|評価面談とは明確に区別して運用する
- 成功の鍵は「30分の黄金フロー」|アイスブレイクからアクション設定まで型を守る
- 上司は「傾聴8割」を徹底する|解決策を急がず継続的な対話で信頼関係を築く

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人材・組織この記事でわかること・結論
「1on1を始めたものの、雑談で終わってしまう」「部下が本音を話してくれない」「そもそも何を話せばいいのか分からない」
そんな悩みを現場でよく耳にします。離職防止やエンゲージメント向上のカギだと言われる1on1ですが、なんとなく始めた結果「時間だけ確保されている形骸的なミーティング」になっているケースも少なくありません。
本記事では、人事制度設計やマネジメント支援に携わる立場から、1on1の基本的な考え方と、現場で再現しやすい進め方、そしてよくあるお悩みへの対処法までを実務目線で解説します。
目次

1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で行う定期的な対話の場のことです。
その目的は、部下の成長支援、業務改善、心理的安全性の向上など、組織運営において極めて重要な役割を果たします。
1on1は「報告・指示」を行う場ではありません。部下の声に耳を傾け、課題や感情の変化を捉えながら、未来に向けた行動を共に考える時間である点に特徴があります。
評価面談は「過去の成果」を振り返り、報酬や役割に反映する場です。一方、1on1は「現在と未来」を扱います。
特に重要なのは、“主役は部下である”という点です。上司が一方的に話すのではなく、部下が抱える不安や期待、成長意欲を言葉として引き出し、自己理解や納得感を高められるように支援していきます。
1on1で扱うテーマは業務だけにとどまりません。
仕事のパフォーマンスは、生活環境やメンタル状態に大きく影響を受けます。
だからこそ、部下が普段なかなか言語化できない内面を、安心して話せる“心理的安全性の高い場”をつくることが求められます。
現代の組織、特に若手社員はキャリア観や働く意義に強い意識を持っています。上司が「何を考えているか分からない」状態が続くと、不満や不安が蓄積し、突然の離職につながるリスクがあります。1on1はこうした早期離脱リスクの予防策として有効です。
また、リモートワークやハイブリッド勤務により、部下の小さな変化(モチベーション低下や業務過多)が見えにくくなっています。定期的な1on1は、こうした変化を早期にキャッチし、トラブルを未然に防ぐ役割を果たします。
1on1は即効性のある施策ではありませんが、「自分のことを気にかけてくれている」という小さな実感が信頼関係を深め、部下の主体的な行動を生み出します。1on1は単なるコミュニケーション施策ではなく、人が自ら育つ組織をつくるための最重要マネジメントなのです。
1on1を成功させるには、「環境の整備」「当日の進め方」「コミュニケーション」の3点を正しく押さえることが重要です。
共通して大切なのは「定期的な継続性」です。
忙しくなったときに優先度を下げて予定変更を続けると、部下は「自分は重要視されていない」と感じてしまいます。1on1は組織を強くするための投資と考え、スケジュールを最優先で確保しましょう。
周囲の視線や会話を気にせず、落ち着いて対話に集中できる場(会議室、別フロア、オンラインなど)を用意します。オンラインの場合は、通知オフや顔が見える画角調整など、集中しやすい環境を整えてください。

1on1で最も重要なのは「当日の進め方」です。効果的な時間配分として推奨しているのが「30分の黄金フロー」です。
① 5分:アイスブレイク(感情の確認)
心理的安全性のスイッチを入れる時間です。「調子どう?」という一般論ではなく、感情にアクセスしやすい問いを投げかけます。
例:「今週、ちょっとだけ嬉しかったことは?」「最近、気になっていることはある?」
② 15分:本題(傾聴と深掘り)
部下が主役の時間です。上司は傾聴に徹し、「事実→感情→背景」の順で質問して気づきを引き出します。
すぐに解決策を示す必要はありません。「理解された」という感覚が部下の思考を前進させます。
③ 10分:アクション設定(行動の言語化)
次回までの具体的なアクションを一つ決めます。「来週までに〇〇を1回試す」など小さくても構いません。
「行動→振り返り→改善」のループを作ることで、自走する力を育てます。
1on1が形骸化したり、逆効果になったりしないよう、支援現場でも効果の高い5つのコツを紹介します。

上司が話しすぎてはいけません。部下が自分の考えを言語化する場です。
NG例
上司が自身の経験談やアドバイスを長時間話してしまう。
OK例
「そのとき、どんな気持ちになった?」「もう少し詳しく教えて」と問いかけ、部下が話す時間を確保する。
答えを与えすぎると、部下は受け身になります。「あなたなら、どの方法を試したい?」と問いかけ、部下自身の中から気づきを引き出しましょう。自分で見つけた答えこそが定着します。
1回の内容の濃さよりも、継続すること自体に価値があります。「忙しくても時間を取ってくれる」という事実は、「いつでも話を聞いてもらえる」という安心感を生み、信頼関係の土台となります。
詳細な議事録は不要ですが、以下の4点は必ず記録しましょう。
感情の変化を追うことで、コンディション低下や離職リスクを早期に察知できます。

1on1は「相談して終わり」ではありません。行動につなげ、次回振り返ることが前提です。
「次回確認される」ことが行動継続の動機づけになります。このサイクルを回すことで、部下は少しずつ自走できるようになります。
現場から寄せられる代表的なお悩みと解決策をまとめました。
よくある1on1の悩みの多くは、特別なスキル不足ではなく、「運用の型」ができていないことが原因です。
・感情ベースの質問で対話を深める
・必要であれば、上司も弱みを見せる
・短時間でも継続して実施する
・前回の行動を振り返り、次の行動を決める
これらの基本を丁寧に積み重ねることで、1on1は単なる相談の場から、「部下が自走し、成長する場」へと変わっていきます。ぜひ次回の1on1から実践してみてください。

慶應義塾大学経済学部経済学科卒業後、シティバンク銀行(現SMBC信託銀行)入行。
2007年、株式会社エッジコネクション創業。営業支援業を軸に、人事・財務課題にも対応するコンサルティング企業として展開。
経営危機を乗り越えた経験を生かし、コンサルティング業や、ラジオ・YouTube・コラムなど、各種メディアで発信中。
これまでに1700社以上を支援し、継続顧客割合は75%台。
地元宮崎でも地域振興に尽力し、延岡市立地促進コーディネーターや延岡デジタルクロス協議会人材支援委員長を務める。
2024年7月には「24歳での創業から19期 8期連続増収 13期連続黒字を達成した黒字持続化経営の仕組み」を出版。