労務SEARCH(サーチ)

労務の課題を解決するメディア
powerde by オフィスステーション

Facebook twitter

メールマガジン無料登録

 

おすすめ記事やお役立ち資料をお届けします。

サービス残業による残業代請求から会社を守るには

人事労務管理

サービス残業による残業代請求から会社を守るには

サービス残業は賃金不払残業ともいい、労働基準法違反です。
発生する要因には、経営者の指示、不適切な労働時間管理、残業申請しづらい職場の雰囲気などがあります。サービス残業は、法律違反であると同時に働いている社員からやりがいや職場への愛着を奪います。

また、大勢の社員から過去の未払残業代を一括して請求された場合などは、経営にも深刻な影響を与えかねません。
担当者として注意していくポイントを挙げます。

実際どのようなサービス残業があったのか

まず、どのようなサービス残業があったのかの実態をご紹介します。
労働基準監督署の「賃金不払残業の解消のための取組事例」から、いくつかの事例を見てみましょう。

例1)タイムカードの打刻後に仕事をしていた例

この例では、「タイムカード打刻後も仕事を指示される」という労働者の報告から、タイムカードの打刻時間とメールの送信時間を照合しました。するとタイムカードとメールのやり取りからサービス残業の疑いが浮上した例です。

例2)パソコンのログや入退室記録と申告残業時間がかい離していた例

平成27年より、厚生労働省は、外部委託でインターネットのSNSなどからサービス残業に関する情報を監視・収集しています。監視情報を元に実態を調査した結果、パソコンのログや入退室記録では職場で活動している記録が明らかに残っているのに残業代を申告していないケースが発覚しました。

例3)パソコンのログやメール送信記録などと残業申告書がかい離していた例

ある企業では、残業は上司に対して残業申告書を提出しなければ残業ができない仕組みでした。しかし、労働者からの情報で調査を開始したところ、パソコンのログやメールの送信記録から、残業申告書がないまま働いている状況が認められました。

労働基準監督署の指導事項と解消策

これらの事例に対して、実際に労働基準監督署と企業がどのように動いたのかも確認しておきたいところです。サービス残業が発覚した場合、労働基準監督署は労働時間の実態調査をするよう監督指導を行います。

企業側は未払いの残業代を支払ったうえで、今の状態を解消する対策を実施します。企業が行う解消策の取り組み事例を、先に挙げたサービス残業の例の続きで見ていきましょう。

例1)

  • 企業の代表者がサービス残業撲滅宣言を出して全店舗の店長に今後の取り組みについて説明
  • タイムカードの正しい使い方とサービス残業をなくす取り組みについて店長から全従業員に説明
  • タイムカード打刻後に仕事をしていないか、店長が店舗を定期的に見回り

例2)

  • 入退室記録と労働者へのヒアリングをもとにサービス残業代支払い
  • 全従業員に対して適正な自己申告制の運用についての研修を実施
  • 入退室記録と自己申告書のかい離は上司がチェックして本人に理由を確認
  • 労務管理に関するパンフレットを再編集して全従業員に周知

例3)

  • 企業幹部も出席する会議で、実際に労働時間の管理を担当する管理者に対し自己申告制の適正な運用を説明
  • 労働時間の管理を担当する管理者は、自組織内の全従業員に自己申告制の適性運用について説明
  • 勤怠管理システムを導入し、自己申告とパソコンのログのかい離を確認できるようにし、月2回必要な補正を行う
  • 労務管理について労使間での話し合いを年2回実施

賃金不払残業の解消を図るための対策に関する指針とは

サービス残業の支払い請求という大きな問題になる前に、企業としてどうしていけばよいかは、厚生労働省が提示している指針を参考にしましょう。その指針とは以下のとおりです。

<サービス残業解消策に関する指針>

  • 労働時間適正把握基準の遵守
  • 職場風土の改革
  • 適正に労働時間の管理を行うためのシステムの整備
  • 労働時間を適正に把握するための責任体制の明確化とチェック体制の整備

引用元:賃金不払残業(サービス残業)の解消のための取組事例集|厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002lrsc-att/2r9852000002lsc5.pdf)のP4より抜粋

これらの指針をうまく取り入れ、できるところからサービス残業をなくす取り組みを始めましょう。

経営・管理者側は、労働時間を適正に把握しなければなりません。「なかなか帰りづらい」という職場の雰囲気も変えていく必要があります。また、労働時間の適正管理に、勤怠管理システムなどを導入する、という判断も必要でしょう。

また、労働時間を管理するためのマニュアルや、サービス残業をなくす方向へ貢献した従業員に対する人事面での評価も積極的に取り入れることが重要です。

また、労務管理の責任体制およびチェック体制の整備、従業員が労務管理について相談できる窓口の設置も考えたいところです。

直近の監督指導による賃金不払残業の是正結果について

労働基準監督署が平成23年度にサービス残業の是正指導をした結果、是正指導した企業数は1,312社でした。是正指導の結果、労働者に支払われた残業代は総額145億9,957万円にも上りました。1企業当たりもっとも多額の残業代を支払ったのは建設業の企業で、26億8,844万円です。

しかし、平成29年度には是正企業数1,870社、労働者に支払われた残業代は総額446億4,195万円で、前年比319億1,868万円も増加しており、急激に悪化しています。未払い額の多い産業は運輸交通業で、50.2%と全体の半数以上を占めました。

サービス残業代が急激に大きくなった原因について厚生労働省は、未払い額が大きい企業が増えたことが原因であると語っています。

未払い額が大きくなると、会社の存続にも大きな影響を与える可能性があります。会社を守るためにも、労働基準監督署からの監督指導やサービス残業代の請求訴訟などのリスクを軽減する対策は今後とも不可欠です。

まとめ

サービス残業の支払い請求から会社を守るための施策について解説しました。これまで監督指導を受けてきた企業の取り組みから、自社へも取り入れられる対応策があれば、ぜひ取り入れる方向で検討してみてください。

サービス残業をなくし、全従業員が健康に仕事を続けられる環境を整えることで、サービス残業の支払い請求を受ける危険性もなくなります。地道な取り組みを続けましょう。

岡 佳伸|社会保険労務士 岡 佳伸 事務所

いいね!していただくと毎日更新している最新の情報をお届けします