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いま企業に必要なLGBTへの取り組み~多様性への配慮を解説

監修者: 社会保険労務士事務所 そやま保育経営パートナー
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昨今、国内外のメディアが報じる“LGBT”すなわち「性の多様性」への配慮が注目を集めています。

平成27年度の電通ダイバーシティラボの調査によると、日本国内におけるLGBT自認率は7.6%と、身近に感じられる数値です(左利きまたはAB型の平均的な邦人人口の割合と同程度といわれています)。

それでは実際に、職場においてどのようにしてその多様性に配慮すべきなのでしょうか?ポイントとなる視点をまとめました。

体の性・心の性・好きになる性とは?~LGBTの類型

近頃、ニュース等で「LGBT」の言葉を目にすることも多いかと思います。一口に「LGBT」といいますが、みなさま、どのような類型に分かれているかご存知でしょうか?

LGBTとは、英語の「レズビアン(女性同性愛者)」、「ゲイ(男性同性愛者)」、「バイセクシュアル(両性愛者)」、「トランスジェンダー(性別越境者、性同一性障害者等)」の頭文字を並べた言葉ですが、実際は、男性や女性の両方が好きになるバイセクシュアル、恋愛や性愛の対象を持たないAセクシュアル、全ての人が恋愛や性愛の対象となるパンセクシュアルと分かれています。多様な類型であることを理解しましょう。

カミングアウトを「アウティング」にしないためには

みなさまは「アウティング」という言葉をご存知でしょうか?「アウティング」とは他人の秘密を暴露することや、他人のセクシュアリティーを暴露する場合に多く用いられます。トランスジェンダーの従業員が「トイレ使用について配慮をして欲しい」と申し出た際には、その行為自体が、自分が当事者であるというカミングアウトになっています。

「LGBT」への理解が進んでいない職場では、従業員の申し出が「アウティング」に繋がってしまい、当事者が嘲笑やからかいの対象になってしまう可能性があります。では、それを避けるために、どの様に配慮して行けばよいのでしょう。

配慮すべき制度・設備とは?~手当・制服・更衣室など

設備に関して、トイレは表示を工夫して男女共用のトイレ(例えば、身障者用のトイレを誰でも使用できるトイレとするなど)を各フロアに一箇所設ける、制服は男女の差をなくしたデザインにする、更衣室は各自個室にするなどの対応が可能でしょう。

社内制度に関して、手当や休暇は事実婚の方と同じ扱いにした方が良いと考えられます。どうやって同性パートナーであることを証明するのか?という問題も出てきますが、LGBT当事者としてはカミングアウトするリスクを冒してまで、手当や休暇が欲しいと考える人は少ないと思われるため、不正のリスクはあまり多くないと考えられます。

控えるべき言動とは?~より広範なハラスメント対策を

気軽に性的指向を伴った発言をしていませんでしょうか?例えば女性的な言葉遣いや物腰の柔らかい男性従業員について「ホモだ」と嘲笑するようなことです。当該言動の対象となる従業員が実際に同性愛者であるかは問題では無く、同性愛という性的指向が侮辱されることが問題なのです。

「男らしさ」「女らしさ」の規範から外れていることを侮辱することが結果として、LGBT当事者を傷つけていることがあります。個人の尊厳を考えた言動を心がけることが広範なハラスメント対策に繋がると言えます。

法整備の現状は?~性同一性障害・セクハラ防止では

LGBT当事者の性的指向を理由とするハラスメントについては、セクシャルハラスメントに関する法的な枠組みが参考になります。職場におけるセクシャルハラスメントに、同性に対するものも含まれるということは「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針(平成18年厚生労働省告示第615号参照)」に記載されており、性的少数者に関する言動もその対象になると考えて良いでしょう。

よって、事業主が性的言動によって職場環境を害されないように講ずべき措置(男女雇用機会均等法11条)には、性的少数者に対するものも含まれると考えられます。性的言動に限らず、職場において差別的発言によって精神的苦痛を受けた場合には、当該発言者が人格権侵害として損害賠償義務を負うだけなく、事業主も使用者責任(民法715条)に問われる可能性があります。

まず何からはじめる?~自治体・民間企業の取り組み

行政の中には、LGBT当事者の支援として同性パートナーシップ証明書の発行(東京都渋谷区)や同性パートナーシップ宣誓(東京都世田谷区、三重県伊賀市、兵庫県宝塚市、沖縄県那覇市)などの制度を取り入れた自治体もあります。企業では、社内体制の整備や社員の意識改革、社内研修の実施等によりLGBT施策を他のダイバーシティ施策と一緒に行うところも増えてきています。

海外では、LGBT対応達成度の確認についての指標が作られています(イギリス、アメリカ、オーストラリア等)。アメリカにおける、ヒューマン・ライツ・キャンペーンというNGOが実施する「CORPORATE EQUALITY INDEX」という指標では、日系企業ではトヨタ、日産、ソニー(いずれも現地法人)が満点(100点)を取得しています。

まとめ

もはやLGBT“アライ”(LGBTを理解・支援する立場を表明する言葉)であることは、CSRのひとつともいうべきでしょう。

それを反映するかのように、既に数名の国内外経営トップがLGBT自認をカミングアウトしていますし、証券市場や国際取引においては、相手先法人の選別においてひとつの指標としての機能を果たしつつあります。今後確実に労働市場における存在感を増していくLGBT―あなたの周りでも、実はもう働いているのかもしれません。

監修者 社会保険労務士事務所 そやま保育経営パートナー

社会保険労務士事務所 そやま保育経営パートナー 代表社会保険労務士:
楚山 和司(そやま かずし) 千葉県出身
株式会社日本保育サービス 入社・転籍
株式会社JPホールディングス<東証一部上場> 退職
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