ダイバーシティとは「多様性」を意味する言葉であり、ビジネスの世界では企業経営におけるキーワードのひとつです。少子高齢化による日本の人材不足解消につながる重要な取り組みです。
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ダイバーシティとは、ビジネスでは雇用人材の多様化を指します。働き方やスキル、キャリア、性別、宗教、価値観、ライフスタイル、心理面まで影響を及ぼす概念です。新たな顧客ニーズにおける対応、企業の優位性創出を目的としています。
「ダイバーシティ=女性登用」という見解がありますが、それは多様な選択肢のひとつであり、ダイバーシティの本質とは異なります。海外のグローバル企業ではダイバーシティ推進担当役員を任命し、年齢・国籍・性別・LGBTなど幅広いグループへの配慮がなされています。
近年ではダイバーシティは経済市場を有利に働かせるため、消費者・株主・社員に支援されるための経営戦略のひとつとして認識されています。
近年の急速なグローバル化により、経営方針に従来の国内事業展開からグローバル視点を組み込んだ事業展開を視野に入れた企業が増えています。ダイバーシティの本質は、多様な人材の集結により「モノの見方」が多様化し、結果として健全で強い組織が形成される点です。
女性登用に限らず多くの価値観・視点をもつ人材を集め、加速度的に企業を成長させるべく多様な人材を受け入れています。
インクルージョンとはダイバーシティとセットで使われるビジネス用語で、多様で価値観の異なる人材を受容し活用することを意味します。多種多様な人材が在籍する状態を目的とするダイバーシティに対し、インクルージョンは社内の人材が相互に機能している状態に導くことを指します。
ダイバーシティ経営とは、日本経済の持続的成長を目的とし、多様化する市場ニーズとリスクへの対応力を高めながら、企業価値の向上と競争力アップを目指す方針です。少子高齢化の中で多様な人材を確保、経営陣の視点を多様化し、経営戦略としてダイバーシティを推進します。
味の素株式会社は事業を通じて社会課題を解決するためにダイバーシティを推進しています。世界中にグループ拠点を有する同社は、ダイバーシティが定着した欧米に対し、日本は同質的に男性社員の7割が新卒入社でした。
大半の経営陣がもつ海外勤務経験を生かし、多様性に富んだ組織とイノベーションを生み出すべく、ダイバーシティ推進タスクフォースを設置、キャリアの枠に捉われず社員と会社の成長を見据えた取り組みをおこないました。結果、働き方改革を通じて生産性が向上、2019年6月には女性の社内取締役が誕生し、ダイバーシティのロールモデルとなっています。
【参考】味の素グループにおけるダイバーシティとは┃ 味の素株式会社
統合による新会社において、ダイバーシティを通じた異なる組織文化や価値観をつなぐ新たな経営理念を策定しました。合併直後にトップに就任したルーマニア人の現社長は、多様性改善への取り組みから企業価値と競争力の向上を目指しました。
当初は9割の社員が日本人男性であるところ、取締役会を6カ国のメンバーで構成、女性3名の登用の結果、多様な角度での議論と意思決定が実現しました。経営陣の率先的実践により、社員への効果的なメッセージ発信につながりました。
多様な価値観から2018年のアルコール飲料にチャレンジするなど、一連の取り組みが外部から評価を受けた結果、新卒採用において女性比率が50%超、毎年約20人の外国人採用を達成しています。
【参考】ダイバーシティ推進┃ コカ・コーラボトラーズジャパン株式会社
社員の受動的姿勢の変革とさらなる成長、自律型・参画型への変革を目的とし、ダイバーシティを推進しました。多様性受容とその活用を見据え、地方のコールセンターで契約社員として勤務していた女性を東京本社の管理職に登用しました。
障がいをもつ社員の活躍を積極的に推進し、配置転換によるキャリアアップを図るなど、人を通じた社内変革に取り組んだ結果、社員満足度(2018年33%→2019年45%)と業績(前年比2%増)が向上しました。
【参考】ダイバーシティ&インクルージョン┃ アクサ損害保険株式会社
・ダイバーシティとは雇用人材の多様化のことであり、新たな顧客ニーズにおける対応と企業の優位性創出を目的としている
・ダイバーシティは経済市場を有利に働かせるため、消費者・株主・社員に支援されるための経営戦略である
・ダイバーシティ経営とは、多様な人材の活躍と多様化する市場ニーズとリスクへの対応力を高め、企業価値の向上と競争力アップを目指す方針である
70社以上の支援実績、1,200人以上のクライアントスタッフとの面談実績から得た知見をもとに、マネジメント研修(管理職・リーダー研修)や人事制度の設計と運用を提供している。株式会社NCコンサルティングの代表取締役社長/人事コンサルタント。
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