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会社の事務所移転には登記簿謄本が必要?労働基準法・社会保険に関する手続きは?

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事務所や店舗の移転の手続きはやるべきことがたくさんあります。日常の業務をこなしながら、あまり経験しない移転に関する手続きをおこなうため、届出や必要な工程が漏れるリスクもあるでしょう。

本記事では、事務所や店舗の移転に関する数多くの手続きのうち、労務管理や総務の担当者が忘れてはいけない、労働基準監督署への「適用事業報告」と年金事務所への「適用事業所所在地・名称変更届」について解説します。

監修者
佐藤 安弘

ワイエス社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士
https://www.ys-sr-office.com/

1982年生まれ東京都豊島区出身
2010年行政書士試験合格
2010年社会保険労務士試験合格
2010年宅地建物取引主任者(現・宅建士)試験合格
2016年社会保険労務士開業登録
2018年特定社会保険労務士付記
2019年行政書士登録

移転先を管轄する労基署への「適用事業報告」の届出

移転先を管轄する労基署への「適用事業報告」の届出

労働基準法が適用される(従業員が1名以上である)事業所を移転する場合は、移転後の住所を管轄する労働基準監督署へ「適用事業報告」の届出が必要です。

適用事業報告

適用事業報告は、従業員を雇用したときや従業員がいる事業所を新たに開設したときに届け出る必要があります。事業所の移転に伴って、管轄する労働基準監督署が変わることとなった場合にも、適用事業報告の届出が必要です。

提出先は、事業所の移転先の住所を管轄する労働基準監督署です。本社所在地ではなく、移転する事務所・店舗の所在地を管轄する労働基準監督署に提出します。

提出期限は、『事業開始後、遅滞なく』とされています。

適用事業報告書

自社で届出するときのポイント

適用事業報告を自社届出するときのポイントは次のとおりです。

適用事業報告を届出するときに、添付書類として法務局発行の法人の登記事項証明書が必要とされる通例があります。管轄する労働基準監督署によって添付書類が異なることもあります。
届出前に、事務所の移転先の住所を管轄する労働基準監督署へ添付書類を確認しましょう。

適用事業報告以外にも、労働基準監督署への届出が必要な場合があります。たとえば、「名称・所在地等変更届」などです。
同時に提出が必要な書類を事前に確認しておき、漏れのないようにしましょう。

適用事業報告を届出するときは、コピーまたは控えをとっておいてください。
適用事業報告は、労働基準法の適用をうける事業所となったことを労働基準局に報告するための書面です。建設業において元請先から確認を求められたときなどに、迅速に対応できます。

社会保険の「適用事業所名称・所在地変更届」を届出

事務所や店舗の移転においては、年金事務所への「健康保険 厚生年金保険 適用事業所名称・所在地変更(訂正)届」による届出が必要です。
移転によって管轄する年金事務所が変わるかどうかによって、届出内容が変わります。

管轄となる年金事務所が変わらない住所へ移転する場合

「適用事業所名称・所在地変更(訂正)届」(管轄内)で届出ます。

「適用事業所名称・所在地変更(訂正)届」(管轄内)

届出期限は、移転などの事実が発生してから5日以内です。
届出先は、移転後の住所を管轄する年金事務所となります。
届出するときの添付書類は次のとおりです。

管轄となる年金事務所が変わらない住所へ移転する場合の添付書類一覧

  • 法人の事業所の場合は、法人の登記事項証明書のコピー
    (提出日からさかのぼって90日以内に発行されたもの)

  • 個人事業主の事業所の場合は、事業主の住民票のコピー
    (提出日からさかのぼって90日以内に発行されたもの)

  • 個人事業主の事業所で、屋号や店舗名などの名称も変更する場合は、公共料金の領収書などのコピー



移転先の住所を管轄する年金事務所が変わる場合

管轄となる年金事務所が変わる住所への移転の場合は、「適用事業所名称・所在地変更(訂正)届」(管轄外)によって届出します。

「適用事業所名称・所在地変更(訂正)届」(管轄外)

届出期限は、移転などの事実が発生してから5日以内です。
届出先は、移転前の住所を管轄する年金事務所となります。移転後の住所を管轄する年金事務所ではない点に注意してください。
届出するときの添付書類は次のとおりです。

管轄となる年金事務所が変わる住所へ移転する場合の添付書類一覧

  • 法人の事業所の場合は、法人の登記事項証明書のコピー
    (提出日からさかのぼって90日以内に発行されたもの)

  • 個人事業主の事業所の場合は、事業主の住民票のコピー
    (提出日からさかのぼって90日以内に発行されたもの)のコピー

  • 個人事業主の事業所で、屋号や店舗名などの名称も変更する場合は、公共料金の領収書などのコピー



適用事業所名称・所在地変更(訂正)届に基づいて自社を管轄する年金事務所が変更される時期は、都道府県内での移転か、別の都道府県への移転かによって異なります。

  • 都道府県内での移転の場合   届出日の翌月1日から変更
  • 都道府県をまたぐ移転の場合  届出日の翌月1日または翌々月1日から変更

協会けんぽ掌握の健康保険を利用しており、別都道府県へ移転する場合は、健康保険料率が変わる可能性もあります。その場合の都道府県単位保険料率の変更基準日は、適用事業所名称・所在地変更(訂正)届に記載した変更年月日(移転先で事業を開始した日)です。

自社で届出するときのポイント

自社で届出するときの注意点は次のとおりです。

  • 個人事業主と法人とでは添付書類が異なる
  • 移転によって管轄する年金事務所が変わる場合は、移転“前”の年金事務所が届出先となる

健保組合への届出もお忘れなく

健保組合への届出もお忘れなく

事務所や店舗の移転に伴う社会保険の手続きにおいては、労働基準監督署、年金事務所に加えて、健康保険組合への届出も必要です。

加入している健保組合が協会けんぽではない場合は、個別の健保組合の取り扱いにあわせます。

届出に必要な書類は健保組合ごとに定められていますが、例示すると以下のとおりです。

健保組合への届出に必要な書類

  • 適用事業所名称・所在地変更(訂正)届
    (年金事務所と同じ様式が多い)

  • 法人の登記事項証明書のコピー
    (届出日からさかのぼって90日以内に発行されたもの)

  • 移転した事務所の賃貸借契約書のコピー
    (貸しビルや貸店舗など入居している不動産の建物名がわかるもの)

自社で届出するときのポイント

自社で届出するときは、加入している健保組合の事務にあわせた手続きをおこないます。添付書類や記載内容については、事前に健保組合に確認しましょう。

移転の届出や登記手続きはチェックリストで網羅

移転の届出や登記手続きはチェックリストで網羅

務所や店舗の移転はやるべきことがたくさんあり、期限もまちまちです。さらに、通常の業務に加えて移転の手続きをおこなうため、業務繁忙で漏れ抜けが起こりやすくなります。
事務処理失念を防止するためには、チェックリストの作成が有効です。

自社で届出するときのポイント

移転に関する事務のチェックリストは自社内での作成も可能ですが、必要な手続きが抜け落ちないように、専門家にチェックしてもらいましょう。

チェックリストのポイントは次の3つです。

移転に関するチェックリスト作成のポイント

  • 届出が必要な官公署ごとにまとめる
  • 必要書類の取得順序を整理する
  • 届出の期限を確認する

届出先ごとに必要となる届出をまとめておくと、効率的に届出ができます。
また、届出の際の添付書類には、別の官公署での移転手続きの書類が必要な届出もあります。

たとえば、登記簿謄本記載の本店を移転する場合は、本店移転登記申請をおこなったうえで登記事項証明書を入手し、労働基準監督署への届出の添付書類とするなどです。

必要書類にあわせて提出期限も同時に確認しておくとスケジュールがわかりやすくなり、次に事務所や店舗を移転するときの自社マニュアルにも活用できます。

事務所や店舗の移転で届出する官公署は、一般的には次のとおりです。

届出先 届出の例
法務局 本店や支店の所在地の変更登記申請
税務署 給与支払事務所の移転、開業届・廃業届など
年金事務所 適用事業所名称・所在地変更(訂正)届など
労働基準監督署 適用事業報告など
公共職業安定所 雇用保険事業主事業所各種変更届、求人票内容変更など
国、地方公共団体 許認可取得後の住所変更など
県税事務所 地方税に関する異動届など
市区町村
(事業所の所在地)
地方税に関する異動届など
市区町村
(従業員の居住地)
住民税の特別徴収に関する給与支払者の変更届など
保健所など 移転前の飲食店舗についての営業許可証の返納
移転後の飲食店舗での営業許可の申請など
公安委員会、
警察など
深夜酒類提供飲食店営業の申請、
古物商許可における住所の変更の届出など

まとめ

本記事では事業所を移転する際などに労働基準監督署へ届出する「適用事業報告」と年金事務所へ届出する「適用事業所名称・所在地変更届」について解説しました。

社会保険に関する事務所や店舗の移転の届出については、移転後の管轄年金事務所が変更となる際は提出先が異なります。また、法人と個人事業主の場合で添付書類が違うなど、自社の事業の形態や移転の内容によって手続きや添付書類が異なる点に注意しましょう。

事業を安定して継続していくためにも、「登記簿謄本を取り忘れる」などの移転のトラブルを防止し、事務手続きの事前準備をしっかりとしておきましょう。

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