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インターンシップにおける社会保険などの労務管理の注意事項!

「学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと」と、とらえられているインターンシップ。

文部科学省が実施した調査によると、平成8年の実施校率では17.7%でしたが、平成27年には約4倍の74.3%となり、参加学生率も平成10年の0.6%から平成27年には約5倍の3.1%と、整備と利用が進み、国・企業・大学・学生から注目されています。今回はそんなインターンシップにおける労務管理の注意事項について解説します。

企業におけるインターンシップの基本認識とメリット

まず、企業にとってインターシップとは、どのようなものなのか確認してみましょう。

インターンシップは社会や地域、産業界を支えていく人材を産学連携のもとで育てていく、といった観点のもとで行われています。 インターンシップというと、どうしてもその企業で働いてみたいと思う学生が集まり、企業にとっては人材確保の意味合いが強いイメージがあります。しかし、実際にはその企業だけではなく、社会全体のためという広い見地から取り組まれるべきものなのです。

では、上記のような見地から取り組むべき、インターンシップを企業が行うメリットは何なのでしょうか?メリットとしては次のようなことが挙げられます。

  • 自社社員の成長・自社を見直す機会になる
  • 結果として採用につながる、採用時のミスマッチが減少する

インターンシップで学生の指導に当たる社員は、学生と接することでモチベーションの上昇につながるだけでなく、仕事を教えることで自分の仕事を見直すことができ、成長へのきっかけとなる可能性も考えられます。

これは社員個人だけではなく、企業全体にとっても同じで、インターンシップに向けた準備を通して自社の良いところや特徴などを見直すことができます。

また、インターンシップは社会全体のために行うものですが、やはり採用につながる場合も少なくなく、学生と企業とのミスマッチ防止にもつながります。

採用選考活動などにおける学生情報の取り扱いにご注意ください

企業にとってもメリットがあるインターンシップですが、実施にあたっては注意しなければいけない点もあります。

インターンシップを就職活動が解禁されるより前に行う場合は、インターンシップを通して学生の採用選考活動(採用のため実質的な選考を行うこと、参加が必須となること)を行ってはいけません。

たとえば、インターシップで取り組んだ課題の成績の良し悪しで、採用試験の合否を決めてはいけないということが挙げられます。また、インターンシップで得た電話番号やメールアドレスなど、学生の情報を利用して解禁日前に学生に連絡し、採用試験を行うこともできません。

インターンシップを通しては採用選考活動だけではなく、広報活動(採用を目的として学生に情報を発信することや説明会など)も解禁日前に行ってはいけません。企業がインターンシップを実施するうえでは、すべての学生に平等に機会を与えること、就職活動の解禁スケジュールを守ることが大切です。

学生=労働者になっていませんか?

インターンシップは企業によってその内容は異なりますが、なかには実際の仕事を行う場合もあります。しかし、ここで注意していただきたいのは、インターンシップに参加する学生は社員ではないということです。

人材を補うこと、お金を稼ぐことを目的とするアルバイトとは異なり、企業にとっては人材育成や社会貢献で、学生にとっては企業や社会を知る機会です。就職活動のために行われるインターンシップにおいて、学生は基本的に労働者ではありません。

もし、企業と学生の間に使用従属関係がある場合には、労働基準法によって労働者とみなされるため、労働基準関係法規の遵守が必要となります。

インターンシップの実施にあたっては、労働者とみなされる場合でもそうでない場合でも、企業は学生に対し安全配慮の措置を取らなければいけません。インターンシップを対象とした保険などもあるので、労務担当者はインターンシップの実施にあたって、これらを確認しておくと良いでしょう。

事故や怪我、企業への損害対策は大丈夫ですか?

インターンシップにはさまざまなリスクも常について回るため、それらに対する対策もしっかりと行わなければいけません。このようなリスクとして、次のようなことが挙げられます。

  • 学生が被る事故(作業中の怪我やインターンシップ先への通勤中の事故など)
  • 学生が起こす損害(会社の機器の破損、商取引の妨害など)
  • 学生による情報漏洩(製品や人事など社外秘の情報を漏洩する)

これらによる損害は学生、企業の双方にとって大きなものとなります。リスクを回避するためにも事前の予防策をしっかりと立てておくことが大切です。 いずれにしても事前研修などで注意を促すことは必要となりますし、企業・学生の双方が保険に加入しておくことも重要です。

さらに、守秘義務に関する誓約書を学生と交わすことや、インターンシップに実施に関する契約書を大学と交わすことで、万が一のことが起こったときの責任の所在を明らかにすることができます。労務担当者はインターンシップの実施内容だけでなく、リスク管理にも気をつけるようにしましょう。

まとめ

今回は、インターンシップ実施にあたって労務担当者が注意すべき事項について解説してきました。インターンシップは、うまく活用すれば学生の人材確保につながるなどメリットがありますが、一方でトラブルが発生する可能性もゼロではありません。

万が一重大なトラブルが発生してしまうと、企業にとっては大きな損害となるため、労務担当者はインターンシップの意義や禁止事項、リスク管理などしっかりと準備をしておくようにしましょう。

監修者萩原 修

萩原労務管理事務所

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