職場の労働衛生管理を進めるための3管理の1つである「作業管理」の目的は作業に伴う有害要因を除去することです。人事管理として作業管理を行うことで労働者の負担の削減やムリ・ムダ・ムラを省き生産性の向上につながります。
今回は作業管理を行ううえで、労働者が働きやすい環境を整えるためのポイントをご紹介します。
労働衛生の3管理は以下のとおりです。
作業環境管理とは、作業する環境で発生するガスや粉じんといった有害要因を取り除いて労働者にとって適正な作業環境を用意するためにおこなう管理のことです。有害な物質を扱う作業場などにおいては作業環境測定をおこない、測定結果に基づいた改善措置を講じる必要があります。
また、作業環境測定によって労働者の健康の保持増進に向けた改善や整備を行うことでもあります。
作業管理とは、労働者の身体に負荷を与える有害要因(有害エネルギーや物質、作業による身体的な負荷など)を取り除くことです。環境を汚さないような作業方法や労働者の作業負担が軽減されるような作業方法を取り決め、適切に実施するように管理していきます。
健康管理とは労働者の健康状態を健康診断によって確認し、病気や身体の異常の早期発見、症状の進行や悪化の防止、さらには元の元気な状態に戻すための医学的および、労務的措置を行うことです。健康障害を未然に防ぐことや健康指導なども含まれます。
以上が、労働衛生の3管理となります。労務担当者として、しっかりと覚えておくようにしましょう。
当然ではありますが、企業は普段から労働者を危険や健康阻害から守るための安全衛生管理に取り組んでいく必要があります。その取り組みの1つとなるのが「4Sの徹底」です。
整理・整頓・清掃・清潔の頭文字から付けられたものです。
ものが散乱している、必要なものがどこにあるかわからない、ゴミが溜まっている、保護服が汚れているといった状態は事故につながりかねないので注意が必要です。また、「KY活動」を行うことも大切です。
KYとは「危険予知」のことで、職場に潜んでいる危険要因をあらかじめ予測、把握したうえで、その要因に関係してくる作業を行う前に必要な措置や対策を確認しておくというものです。普段から行うことが大切ですが、作業内容が変わったときなどは特に重要です。
このほかにも「ヒヤリハット事例の報告と活用」を通して職場内で情報を共有することも必要となります。これは自身が経験した危険な出来事(ヒヤリとしたこと、ハットしたこと)や目撃した出来事を報告することで、情報を共有、問題の解決に向けた取り組みを行うというものです。
ヒヤリハット事例を共有することで、未然に事故の要因となるような危険因子を取り除くことが期待されます。このように、企業は普段から職場に危険がないか確認し、改善していく必要があります。
機械や各種設備、さらにはさまざまな原材料を使用する職場においては、これらを適切に取り扱う必要があります。このとき役に立つのが作業手順書です。作業手順書は、仕事における「ムリ」「ムダ」「ムラ」を省くことを目的に作成されるものです。
作成にあたっては、安全衛生に関する知識を持っている人(安全管理者や安全衛生推進者)が中心となって、職場で行われる作業を分類したうえで、作業ごとに作成するようにしましょう。作業手順書は作るだけでは効果を発揮することはできません。
手順書の内容を労働者に教育し、手順の周知徹底をおこなう必要があります。また、教育後には労働者が決められた手順通りに作業することができているか確認することも忘れないようにしましょう。作業内容が変更されたり、手順として不十分な点があったり、さらには事故が発生した場合には随時修正を行うようにしてください。
おこなうべき作業に対する手順がはっきりとしているだけで、事故を未然に防げる可能性がグッと高まります。安全のためにも手順書の作成および定期的な見直しを行うようにしましょう。
企業の安全衛生に対する取り組みは「安全衛生優良企業」という形で評価されます。これは、労働者の安全衛生管理に積極的に取り組んだ企業に対して厚生労働省が与える認定のことです。
認定にあたっては過去3年間安全衛生に関する重大な法律違反がない、健康保持増進対策、メンタルヘルス対策、過重労働対策などの対策を行っている、などの条件を満たすことが必要です。
企業としては認定を受けることで、社会的なイメージの向上につなげることができますし、その企業で働いている労働者も安心して働くことができ、意欲の向上が期待できます。また、安全衛生環境を整備することで、企業の生産性を高めることができるほか、求職者に対するアピールにもなるなど、多くのメリットがあります。
今回は、企業が行うべき安全衛生管理について紹介しました。労働者が安心して働けるようにするためにも、企業として生産性を高めていくためにも、安全衛生に関する各種取り組みを行うことは非常に重要となります。
今回紹介した安全衛生管理のなかにはすぐにでも始めることができるものもあります。労務担当者であるみなさんは、自社の取り組みを改めて見直し、安全衛生優良企業認定を目指すなど、積極的な取り組みを展開してみてはいかがでしょうか。