この記事でわかること・結論
- 社労士とは労働社会保険の申請代理や労務管理コンサルティングを行う
- 特定社労士は裁判外紛争解決手続(ADR)代理業務が可能
- 社労士選びは企業特性や成長段階に合ったコンサルティング能力が重要
この記事でわかること・結論
社会保険労務士(社労士)ができる業務をご存知でしょうか。
「社労士に頼むような規模ではない」「顧問料を払ってまで依頼するのはちょっと」と考える経営者の方もいるかもしれません。社労士は、労務のトラブルを未然に防ぎ、働きやすい職場環境づくりの力になるなど経営労務のプロフェッショナルです。
社労士ができることを知り、企業の成長やトラブル解決に役立つことを覚えておきましょう。
目次
社労士ができる業務には大きく分けると、「1号業務」「2号業務」「3号業務」の3種類があります。
それぞれの業務内容は以下のとおりです。
以上の3つが社労士の業務となりますが、このうち1号業務と2号業務に関しては独占業務となっていて、業として報酬を得て行うことは社労士にしかできません。
一方で、3号業務に関しては独占業務ではないため社労士以外の人でも行うことはできますが、3つの業務のなかでも最も経験と知識が必要となる難しい業務だといえます。
社労士のなかには「特定社会保険労務士(特定社労士)」と呼ばれる人がいます。本来社労士は労務に関するトラブルを未然に防止するのが主な役割となりますが、特定社会保険労務士はどういった役割を持っているのでしょうか。
特定社会保険労務士は、個別労働関係紛争の相談を受け、解決に向けたサポートをする裁判外紛争解決手続(ADR)代理業務をすることができます。ADRとは裁判を行わずに問題を抱える当事者間で話し合いを行い、紛争の解決を目指すものです。
企業と従業員との間で労働に関するトラブルが起こったとき、通常であれば裁判を行うことで解決に向けて進んで行くことになります。しかし、裁判は、場合によっては訴えてから判決が下るまでの時間が長期間にわたり、弁護士に依頼するための費用も決して安くはありません。また、裁判になると、その情報が一般に公開されることになるため、その後の風評から会社経営に影響が出る可能性もあります。
そこで、特定社労士の出番です。特定社労士は先述のとおりADR代理業務を担当することができ、当事者の意見を聴取し、社労士としての知識を生かしながら労使間の紛争を解決へと導きます。その特徴としては、裁判を行ったときよりも解決までの時間が迅速で、費用も安く、簡易的な形であることが挙げられます。
なお、個別労働関係紛争の相談や解決に向けたあっせんの手続きは、通常の社労士はできず、「紛争解決手続代理業務試験」に合格して特定の付記がされた社労士にしかできません。
企業によっては、社労士を自社の顧問にしようと考えている場合もあるでしょう。社労士を顧問にするタイミングとしては、大きく分けると以下の4つになります。
創業時から企業として従業員を雇う場合、さまざまな手続きをすることになります。このタイミングで社労士を利用すると、行政機関での手続きや法定帳簿の作成などに時間を割く必要がない分だけ、事業に専念することができます。
次に成長時の場合です。企業によっては、最初は家族や身内で事業を行っていても、企業を成長させるにはどこかで家族以外の従業員を雇う必要が生じます。従業員が少しでもいればトラブルが発生する可能性はあり、法令に則った対応が企業に求められます。そのときに、労働社会保険法令を理解している社労士の力を借りることで、トラブル防止につなげることができます。
従業員が増加し事業を拡大しているときは、労働保険や社会保険の手続きも増加していきます。人事部など専門部署を設置できないときは、専門家である社外の第三者の社労士のアドバイスを得られることは大きなメリットがあります。
会社が安定してきたとしても、安心はできません。人件費の予測や事業計画の作成、生産性の向上など、企業の業績向上と職場環境は切っても切れない関係にあります。専門家の意見を聞き、人材育成や定年制度、育児・介護休業やパート職員の活用などを労務管理に取り入れることは重要となります。
近年、「働き方改革」において生産性の向上が重要視されています。そういった意味では企業の改革にも取り組めるコンサルティングができるような社労士の存在は重要となります。
しかし、社労士といっても全員がコンサルティングをできるわけではなく、得意分野は異なるため、各企業に必要な労務管理の手続きに精通した社労士を選ぶことが重要です。
その社労士が自社の業種や企業特性を理解し、重視する依頼内容に適しているかどうかを見極めなければいけません。これは業種が異なると労務管理の方法が異なるためです。
また、事業規模や企業の成長段階にあわせたコンサルティングができるかどうかも重要なポイントです。その企業の事業規模や成長段階によって重視する依頼内容は異なります。たとえば、創業間もなくで従業員が少なければ、今後の企業の成長にあわせた事業計画のアドバイスが、従業員が多ければ、人事考課制度や福利厚生、リスク管理など経営労務のアドバイスが必要になります。
このように、会社によって問題点や依頼内容は異なるため、自社の問題点を改善できる社労士を選ぶ必要があります。
また、「働き方改革」においては従業員が働きやすい職場環境を作り、効率の良い事業活動が求められていますが、社労士選びは、こういった働き方改革にも寄与できるかどうかも非常に重要な点となります。
今回は、社労士の業務内容と実際に企業側から顧問をお願いする際の選び方のポイントについて紹介してきました。労務環境を改善することは、直接会社の売り上げにつながるものではありません。しかし、社員が働く環境をよくすることは、円滑な経営を行うために軽視できないものです。
社労士はその道のプロであるため、うまく活用することで生産性を大幅にアップすることが期待できます。
大学卒業後、地方銀行に勤務。融資及び営業の責任者として不動産融資から住宅ローンの審査、資産運用や年金相談まで幅広く相談業務の経験あり。在籍中に1級ファイナンシャル・プランニング技能士及び特定社会保険労務士を取得し、退職後にかじ社会保険労務士事務所として独立。
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