この記事でわかること・結論
- 月額変更届とは、毎月の給与や社会保険料を算出するための「標準報酬月額」に変更があった際に提出する書類
- 年一回の見直しは算定基礎届、固定給の変更時は月額変更届を提出する
- 月額変更届の提出先は事務センターか管轄の年金事務所
この記事でわかること・結論
月額変更届とは、毎月の給与や社会保険料を算出するための「標準報酬月額」に変更があった際に提出する書類です。事務センターや年金事務所へ企業の担当者が提出をする必要があります。
また、標準報酬月額は毎年1回のタイミングで必ず「定時決定」という見直しがあります。提出する書類も算定基礎届というものになります。担当者であれば月額変更届との違いなどおさえておきたいポイントです。
そこで本記事では月額変更届について、基本的な目的や意味から書き方・提出方法などを解説します。標準報酬月額を変更する際の随時改定や定時決定についても詳しく説明しています。
目次
月額変更届とは、社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)の算出に利用する標準報酬月額を変更する際に作成する書類のことを指します。
社会保険の加入条件を満たしている従業員の給与などに変更がある場合は、社会保険料等も変わるため月額変更届を管轄の年金事務所に提出することが必要です。
標準報酬月額とは、主に直近3カ月の給与平均を1等級から50等級にそれぞれ区分したものであり加入している保険者の公式Webサイトなどで確認ができます。公表されている保険表には標準報酬月額をはじめとして各保険料が一覧で見ることができます。
たとえば、健康保険協会(協会けんぽ)における東京都の標準報酬月額を見てみます。
等級については、年金保険は1等級〜32等級・健康保険は1等級〜50等級で区分されています。
社会保険料は会社と労働者が折半で支払うものもあり、標準月額報酬ではそれぞれが負担する金額が確認できます。
労務担当者などは、給与計算や社会保険料計算などをする際にこの標準月額報酬を使って各金額を算出します。詳しくは月額標準報酬の記事をご覧ください。
月額変更届は、各従業員の社会保険料を正確に算出するためにも必要な書類です。昇給や降給などがあれば標準報酬月額を見直します。
冒頭でも触れましたが、上記のように特に年度の途中で給与や賞与が変更になった従業員がいる場合は必ずこの月額変更届を年金事務所に提出しなければなりません。
企業の労務担当者などは、各従業員分の給与や社会保険料を給与明細などに記載しなければなりません。その際に活用する「標準報酬月額」について、実際の振込金額などと照らし合わせて正確な数値である必要があります。月額変更届がちゃんと提出されていないと実際の金額とのズレが生じます。
年度のなかでも各ボーナスシーズンや年末調整時などの時期ごとに、月額変更届の有無を確認することになるでしょう。企業の担当者にとっては、月額変更届は業務のためにも大切な指針となるのです。
従業員の保険料にも関係するため、トラブルにならないためにも各時期に確認しましょう。標準報酬月額の変更には月額変更届とほかにも算定基礎届の提出などがあります。2つの違いについて次で解説します。
社会保険料などを給与ベースから算出できる「標準報酬月額」はいくつかの方法で変更が可能です。
ここでは、労務担当者にとって大切な月額変更届と算定基礎届の違いについて解説します。それぞれ変更する時期などが異なるためしっかり確認しておきましょう。
標準報酬月額は、毎年7月1日時点における直近3カ月間(4月、5月、6月)の給与などから算定基礎届を作成して見直しをする必要があります。これを「定時決定」と言い、この際に提出するのは「算定基礎届」です。
算定基礎届を提出し、厚生労働大臣によって対象従業員における標準報酬月額が毎年1回見直されます。実際に見直しされた標準報酬月額および各種保険料が適用されるのはその年の9月から翌年の8月までです。
定時改定が毎年1回あることに対して、固定給料などが昇給・降給などによって変動がある場合には標準報酬月額の「随時改定」をおこなうことも可能です。この際に提出するのが「月額変更届」です。
随時改定は以下3つの条件をすべて満たす場合に必要になります。
上記のように固定給などの変動が発生するかつ、標準報酬月額の変動幅や労働日数などを考慮して随時改定がおこなわれます。作成した月額変更届は事務センターや管轄の年金事務所へ提出します。
書類の正式名称は「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額変更届/厚生年金保険 70歳以上被用者月額変更届」などであり日本年金機構の公式Webサイトからダウンロードできます。
随時改定の条件には「固定的賃金に変動」とは以下のようなケースが該当します。
単純に固定給だけではないため、担当者はよく確認しておきましょう。
月額変更届で随時改定する際の流れを確認しておきましょう。
基本給や通勤手当などの固定賃金が変更になる従業員がいるかどうかをチェックします。また、前項で確認した随時改定の条件に当てはまるかどうかの確認も必要です。
特に、変更前と変更予定後の標準月額報酬に2等級以上差があるかどうかはよく確認しておきましょう。
随時改定の対象となる従業員がいることが確認できたら、実際に月額変更届を作成します。
詳しい作成方法や書き方、提出方法などは後述しているため必ず確認しておきましょう。
変更になった固定賃金(給与や通勤手当など)および、厚生年金保険料や健康保険料、介護保険料などを従業員ごとに反映させましょう。
適用については、6月までに随時改定された場合は再び随時改定がない限り、当年の8月までの各月に適用されます。(定時決定があるため)そして、7月以降に改定された場合は翌年の8月までの各月に適用されます。
実際に月額変更届の書き方・作り方を解説します。今回は日本年金機構の公式Webサイトよりダウンロードできる「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額変更届/厚生年金保険 70歳以上被用者月額変更届」の記入例で解説します。
主に記載すべき項目は以下となります。上の記入例と照らし合わせて解説します。
ここで大切なのは、変動がある月より3カ月分の給与や支払い基礎日数を記入するところです。記入時点では過去3カ月の内容になるため賃金台帳などを頼りに正確に記入しましょう。
固定的賃金の変動が発覚した時点で、3カ月後に向けて月額変更届をコツコツ書き進めていても問題ありません。
月額変更届の提出方法には以下があります。提出先は事務センターか管轄の年金事務所です。
電子申請の場合は「労務管理システム」などを導入して、数値を正確に自動計算することで、月額変更届の作成から提出するまでの手間が省けます。
月額変更届は従業員の社会保険料や毎月の固定給与などを変更する際に必要となる書類のことを指します。ベースとなる標準報酬月額を、毎年一度に見直すタイミングや随時変更がある場合などに月額変更届を提出します。
企業の労務担当者は、月額変更届を作成し年金事務所へ提出しなければなりません。見直しのタイミングによっては算定基礎届を提出する場合もあるため本記事を参考によく確認しておきましょう。
また、月額変更届を作成して随時改訂する流れや書き方・提出方法なども大切です。年末や給与改訂時などにバタバタしないように、月額変更届や算定基礎届についてはよく理解しておきましょう。
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